田中元のニュース解説

「訪問+通所」の新たな複合型、 現場の期待と解決すべき現実について(1)

2024年度の介護報酬・基準改定で、大きな論点となりそうなのが、「訪問系+通所系」の新たな複合型サービスの創設です。昨年の介護保険部会でも、創設のメリットが唱えられる一方、慎重に検討すべき課題も少なくありません。果たして実現に向かうのかどうか…

仕事と介護の両立支援などを通じ、 ケアマネの社会的価値を高めるために

ケアマネの新たな法定研修の実施要綱では、「家族支援」に関して「仕事と介護の両立支援」や「ヤングケアラー支援」などが具体ケースとして明記されました。ただし、この支援を機能させるには、ケアマネ個人のスキルアップだけでは追いつきません。必要なの…

介護保険外の職責拡大をどう評価? ケアマネの処遇改善をめぐる複雑な課題

2024年度改定に向け、社会保障審議会(介護給付費分科会)の議論が本格的にスタートしました。介護・医療・障害福祉の同時改定となる中、他分野連携を支える重要な役割を担うのが居宅介護支援です。その報酬がどうなるのかは、大きな論点の1つとなりそうで…

人生の最終段階における意思決定支援。 問われるのは専門職自身のあり方

2024年度の介護・医療・障害福祉のトリプル改定に向け、社会保障審議会で介護側と医療側の意見交換会が3回にわたって行われました。各テーマの中から、今回は「人生の最終段階における医療・介護」を取り上げます。 問われるのは、当事者と支援者の間の信頼…

介護保険法に初めて登場した 「生産性の向上」。そのインパクトは?

介護保険法を含む健康保険法等の改正案が、通常国会で可決・成立しました。改めて考えたいのが、介護保険法に「生産性」という言葉が用いられたことです。法律自体は自治体の努力義務とされた内容ですが、介護にかかる国会制定法で「生産性」の文言が登場し…

「アウトカム強化」に向けた提言、 なぜ「居宅介護支援」がクローズアップ?

2024年度改定の議論が進もうとする中、他省庁からのプレッシャーも強まり始めました。今回の注目は、財務省の財政制度等審議会(財政制度分科会)での介護分野にかかる提言です。ここでは、「アウトカム指標の強化」に着目します。介護給付費分科会等の議論…

音声入力等のICT技術は浸透するか? 注意したい「落とし穴」

介護給付費分科会で示された、「テクノロジー活用等による生産性向上の取組みにかかる効果検証」の調査結果。今回は、介護業務支援(ICT)機器の活用に注目します。たとえば音声入力の機能は、ケアマネのモニタリング業務等でも活用機会が広がりつつあります…

少子化対策への他制度支援を論じる前に やるべきことがあるのでは?

政府が強く推し進めている「少子化対策」ですが、その財源確保に向けて「医療や介護の保険料の一部をあてる」という議論が見られます。現状、政府は明言していませんが、いずれ各種検討会でも論点として浮上してくる可能性は高いといえます。 後期高齢者医療…

テクノロジーの有効活用に必要なのは、 トップが「現場の困りごと」に気づくこと

4月27日の介護給付費分科会で、厚労省が進めていた「テクノロジー活用等(介護助手の活用含む)による生産性向上の取組みにかかる効果検証」の結果が示されました。今回の結果から何を読み取り、2024年度改定でどのように活かすことが望まれるでしょうか。 …

改正法案で注目したい予防・施設プラン。 この2つが市町村の検証対象に加わった理由

介護保険法の改正を含む健康保険法等の改正案が、今通常国会で審議されています(本稿執筆の5月6日時点で、参議院厚労委員会で審議中)。ケアマネにとっての注目点は、介護予防支援の指定対象に居宅介護支援を加えるという内容でしょう。ここでは、その点…

新型コロナ「5類移行」の影響は? 介護現場では、利用者との関係性にも注意

新型コロナ感染症について、5月8日以降、従来の「新型インフルエンザ等感染症」から「5類感染症」となります。これまでの「介護報酬上の臨時的な取り扱い」も見直しの案が示されました。こうした変化は、現場実務にどのような影響を与えるでしょうか。 「…

認知症利用者の在宅生活の継続には、 「医療側」の対介護連携の意識向上も重要

2024年度の介護・診療報酬の同時改定に向け、介護側(介護給付費分科会)と診療側(中央社会保険医療協議会)の間での意見交換会が開かれています。4月19日の第2回会合では、「認知症」がテーマとなりました。ケアマネ等の対医療連携において、どのような改…

ケアマネへ「何でも依頼」が集中する現実。 課題をセットアップできる新専門職が必要

「ケアマネの業務範囲の明確化」を求めて、日本介護支援専門員協会が記者会見を開きました。ケアマネだけでなく、今後の介護保険制度のあり方を見すえるうえで重要な提起です。背景にあるのは、高齢者1人1人が置かれた状況やニーズの多様化に、国の施策が…

現場のコスト増は利用者の状態悪化にも。 今後の物価高騰対策はどうあるべき?

物価等の高騰により、国民に不可欠な介護資源の存続が危ぶまれる事態になっている──一般社団法人・全国介護事業者協議会など3団体が共同で行なった調査結果からは、危機的な状況が浮かびます。今、国としてなすべきことを整理してみましょう。 制度始まって…

多様なサービスを育てるには、 総合事業の原点に立ち返ることが必要

介護保険部会の意見を施策上で反映させるため、「介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会」がスタートしました。総合事業をめぐる最新調査(中間集計)なども示される中、今後の展開と課題について、給付現場への影響も見すえながら展望します…

保育の基準「改善」と 介護の基準「緩和」が同時進行する風景

「異次元の少子化対策」をかかげる政府が、今後の必要な政策強化の内容を検討する「こども未来戦略会議」をスタートさせました。同会議で示された試案を見ると、今後の介護施策との兼ね合いがどうなるのかについて、さまざまな課題も浮かんできます。 政府が…

外国人の技能実習生受入れが変わる? 新たなしくみに介護現場はどう向き合うか

介護現場の人材不足が深刻な中、外国人人材の雇用状況が活発化しています。独立行政法人・医療福祉機構(WAM)が貸付先法人の特養ホームを対象に行なった調査では、「雇用している」という施設が5割を超え、2020年調査から17ポイント上昇。人材確保の大きな…

基準緩和への「誘導」策に注意。 足腰定まらぬ効率化は「人離れ」を招く

依然として厳しい介護現場の人手不足。昨年後半からは、コロナ禍で休止・縮小していたサービス事業の再開等により、不足感が加速している状況が浮かびます。国は現場の生産性向上を推し進め、2024年度改定でもさまざまな施策が打ち出されることが想定されま…

総合相談支援を居宅介護支援に委託! 「受ける」事業所はどれだけあるか?

開催中の通常国会で、介護保険法の改正を含む一括法案が審議されています。同法案から、居宅介護支援事業所として気になるのは、やはり介護予防支援の指定を直接受けられることになる点でしょう。そして、もう1つ注目されるのが、包括から総合相談支援にか…

政府も追加対策。依然厳しい物価上昇。 利用者の健康リスクに重大影響も!?

依然として著しい物価上昇が続く中、政府は予備費による追加の支援策を打ち出しました。これにより、介護事業などのコスト高の解消が図られるかに注目が集まります。もう1つ、介護現場として注意したいのは、物価高による利用者への影響がどうなっているか…

従事者の賃金にかかる情報公開。 求職者に響く「プロセス」の発信を

厚労省は、介護サービス情報公表制度での従事者に関する情報に、「1人あたりの賃金等」も含めるとしています。事業者の積極的な賃金引き上げにつなげることが目的ですが、もう1つ重要なのは、利用者や求職者等の事業者選択に資するものになるかという点で…

リスクマネジメントで見過ごせない課題  「訪問系サービスの交通事故」をどうする?

2021年度改定の効果検証では、介護保険施設におけるリスクマネジメントも調査対象となっています。今後、介護給付費分科会でもリスクマネジメントにかかる対応策が議論されることでしょう。ここで論点に加えたいのが、リスクマネジメントでも労働災害にかか…

カギは「適切なケアマネジメント手法」!? 2024年度改定での対医療連携の行方

2024年の介護報酬改定は、診療や障害福祉とのトリプル改定です。この改定に向けては、毎回介護報酬側の審議会(介護給付費分科会)と診療報酬側の審議会(中央社会保険医療協議会)との間で意見交換が行われます。今回も3回にわたり開催が予定されています…

訪問系こそ導入ニーズ大のロボット。 次期改定で支援策はどこまで進む?

社会保障審議会・介護給付費分科会で、2021年度介護報酬改定の効果検証等の調査結果(2022年度調査)が示されました。その中から、介護現場でのテクノロジー活用に関する調査研究に着目してみます。たとえば、居宅における介護ロボット導入の可能性という観…

アウトカム評価の拡充を図るなら 現場従事者が報われるビジョンを

2024年度の介護報酬・基準改定に向けては、介護のデジタル化や人員基準の緩和などのテーマをめぐって、内閣府の規制改革推進会議の議論が大きく影響します。今回、介護給付費分科会の議論に、特に影響を与えるテーマが「アウトカム評価の拡充」です。 アウト…

住民主体の支援拡充に不可欠な視点── 支援者の「思い」を尊重できているか

厚労省が、「総合事業の充実に向けた検討会(仮称)」を設置します。昨年の介護保険部会の取りまとめを受け、従前相当以外の多様な主体も含めて支援体制の充実を図ることが目的です。検討会の設置にあたり、現場のケアマネ等が注目したいポイントは何でしょ…

健康保険証廃止や介護保険証との一体化。 マイナカードをめぐる現場への影響

政府は、マイナンバーカード(以下、マイナカード)と健康保険証の一体化を進め、2024年秋に現行の健康保険証を廃止する方針です。そして、介護保険証についてもマイナカードとの一体化が検討されています。現場の実務にどのような影響がおよぶのでしょうか…

居宅介護支援にもLIFE加算適用か。 国が目指すのはケアマネの実務改革⁉

2月27日に開催された介護給付費分科会の介護報酬改定検証・研究委員会で、2021年度改定にかかる2022年度調査の結果(案)が示されました。ケアマネにとって気になる調査結果の1つが、居宅介護支援や訪問系サービスでの「LIFE活用可能性の検証」です。 ケア…

2024年度ケアマネ研修が新カリキュラムに。これから求められるスキルを整理する

2024年度から、ケアマネの各種法定研修のカリキュラムが見直されます。その改正内容が告示されました。全体を通して「適切なケアマネジメント手法」の反映や「他法・他サービス理解」の拡充が目立ちます。求められるスキルがどのように変わるのかを見すえま…

ポスト2025年に待つサービスの大改編。 現場に広がりゆく不安を解消するには?

2月16日に開催された医療介護総合確保会議で、「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿(案)」が示されました。高齢者人口がピークに達する一方で、以降は生産年齢人口(15~64歳)が7000万人台を割り込むなど急減していきます。そうした時代を見すえて、…

医療介護総合確保方針の改定 実は、介護現場にも大きな影響が…

2024年度は、介護・診療報酬の同時改定(障害福祉分野を含めるとトリプル改定)となります。都道府県では、介護保険事業支援計画とともに医療計画の策定を進めなければなりません。その同時策定の指針となる、医療介護総合確保の方針の見直し案が示されまし…

出産・育児施策を高齢者も支える時代 全世代型改革の波で介護保険はどうなる?

開催中の通常国会に提出された健康保険法等の改正案では、目玉の1つに「こども・子育て支援の拡充」があります。この部分の財源に、75歳以上に適用される後期高齢者医療制度からの支援をあてるしくみが示された。「高齢者も支え手」という全世代型社会保障…

またも一括法で、介護保険法改正案が提出 現場が着目したいポイントを速報で

現在開催中の通常国会(2023年常会)に、「全世代型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」が出されました。近年慣例化している複数の法律案を束ねて一括改正を図るものですが、この中に介護保険法の改正案も含まれ…

5月実施の介護事業経営実態調査で 2024年度改定にどのような影響がおよぶ?

2024年度の介護報酬改定を左右するのが、介護事業経営にかかる調査です。2月1日の介護給付費分科会では、2022年度の概況調査の結果案に続き、2023年度の実態調査の実施に向けた基本方針や調査票の案も示されました。特に注意したい点などを取り上げます。 …

居宅介護支援の収支差率が大幅改善 本当に実態を反映しているか?

2月1日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、最新の介護事業経営概況調査の結果(案)が示されました。注目は、厳しい状況にあった居宅介護支援の収差率が、2021年度決算で4.0%(コロナ関連補助金を含まないケースでも3.7%)まで改善したことです。 20…

「保険あってサービスなし」が現実に!? 介護資源の危機的状況をどうするか

介護保険制度がスタートした当初、「保険あってサービスなし」になることの懸念がよく語られていました。独立行政法人・福祉医療機構のリサーチ結果や東京商工リサーチによる倒産・休廃業データを見ると、上記の懸念が現実となりつつあります。サービス調整…

訪問看護の資源は増えているが… 地域偏在の解決に向けた改定とは?

「2021年の介護サービス施設・事業所調査」では、サービス種別によって事業所数の増減に明らかな差が生じています。特に対前年からの伸びが目立つサービスが、訪問看護や看護小規模多機能型。事業所数の伸びが停滞している訪問・通所介護や、減少の一途をた…

こども施策の強化に向けては 介護従事者の処遇改善もカギとなる

年明けの通常国会がスタートし、政府は「こども政策の強化」を主要課題にかかげています。2023年度の予算案審議に加え、こども施策関連の法案提出・審議なども想定されます。こうした動きが、介護関連の施策などにどうかかわってくるのでしょうか。 こども施…

新薬承認後の認知症ケアはどうなる? 「医療とケア」両輪の充実が大原則

早期アルツハイマー病への適応を目指す新薬「レカネマブ」について、厚労省への新薬承認の申請が行われました。すでに米国では、迅速承認がなされています。今回の新薬が仮に日本で承認されたとして、認知症のケアのあり方にどのような影響がおよぶでしょう…

「従事者による虐待」が再び増加傾向 2021年度の基準強化に効果はあったか?

2022年12月に、厚労省が高齢者虐待の防止等に関する法律にもとづく、2021年度の調査結果を公表しました。まず目に入るのは、養介護施設従事者等による虐待が、相談・通報件数、判断件数ともに過去最多を記録したことです。虐待の判断件数に至っては739件と、…

生産性向上のためのワンストップ相談窓口 有効活用に向けて事業者が心得たいこと

将来的に労働力人口が減少していく中、国は限られた介護人材による業務効率化を図るための施策を大きな柱としています。2023年度予算案で新たに設置するとしたのが、介護生産性向上推進総合事業の一環となるワンストップ型の総合相談支援の窓口「介護生産性…

コロナ禍で多死社会の到来が急加速⁉ 介護現場の無力感を補う施策が急務

新型コロナウイルス感染症の第8波が、依然として猛威をふるっています。中でも注意したいのが、1月に入ってから最多を更新した死亡者数です。死亡者の割合で高いのが高齢者ですが、長引くコロナ禍での間接的な要因による死亡も急増する恐れが強まっています…

労働者協同組合がいよいよスタート 介護保険の未来はどう変わっていくか?

高齢者人口の増加による介護ニーズの拡大、少子化にともなう将来的な担い手の不足、社会環境の変化にともなう生活課題の多様化と複雑化──2024年度の介護保険制度見直しは、この3つのテーマが絡み合う中で進められます。困難な壁を乗り越えるカギの1つとし…

小規模事業所はすでに吸収・合併が加速⁉ 資源の地域格差を生まないためには…

2024年度の介護保険制度見直しで、地域のサービス資源のあり方が大きく変わることが予想されます。たとえば、既存サービス組み合わせによる新たな複合型サービスの設置、そして事業経営の大規模化・協働化の推進など。具体化に向けた課題はどこにあるでしょ…

社会保障の世代間対立が生じやすい時代に 問われる「異なる立場」への想像力

介護保険制度見直しに向けては、介護ニーズの増大と従事者不足の深刻化が同時に進む中で、負担増の拡大や業務の効率化という観点からの議論が主流となりがちです。そうした時代だからこそ、揺らぐ制度の理念をもう一度固め直す視点が必要ではないでしょうか…

マイナンバー制度の普及に向けて 「推進すべきこと」の順番は適切か?

マイナンバーカード(マイナカード)と健康保険証の一本化に向け、デジタル庁が具体的な課題をめぐる検討会をスタートさせました。たとえば、要介護高齢者などによる申請補助・代理受取りなどを誰が担うのか。ケアマネにも深くかかわる論点が提示されていま…

先送りされた「負担増」をめぐる結論 タイトな日程下で議論の行方はどうなる?

社会保障審議会・介護保険部会が、「給付と負担の関係」を含めた「介護保険制度の見直しに関する意見」をまとめました。「給付と負担の関係」についての主な論点は7つ。それぞれの改革スケジュールを整理しつつ、これからの議論のポイントを取り上げます。 …

ケアマネの役割はどうなる? 福祉用具貸与・販売をめぐる改革見通し

次の介護保険制度の見直しでは、「福祉用具のあり方」も重要なテーマとなっています。たとえば、2022年9月に整理された「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」の議論がどう反映されるのかにも注意が必要です。その場合、居宅のケア…

介護保険部会も重視する「かかりつけ医機能」 介護側の制度にどう組み込まれるか?

12月5日の介護保険部会で示されたとりまとめ案、「在宅医療・介護連携」の項では、愛護と医療の連携強化にかかるかかりつけ医機能のあり方にふれています。現在、同じ社会保障審議会内の医療部会で「かかりつけ医機能」の検討が行われていますが、介護保険…

負担増等は見送り確実の流れ? ただし、打たれている「布石」に注意

12月7日の全世代型社会保障構築会議で、「論点整理(全世代型社会保障の構築に向けた各分野における改革の方向性)」が示されました。それによれば、介護保険の「給付と負担の関係」にかかる負担増や給付制限は、多くが見送りになりそうな気配です。一方、…