田中元のニュース解説

生活援助の総合事業移行を議論するなら 「訪問介護」サービスの一本化も必要に?

介護保険部会における「給付と負担の関係」の論点をめぐり、さっそく議論が紛糾しています。特に「軽度者(要介護1・2)の生活援助サービス等の総合事業への移行」については、業界団体や利用者団体からの反発が強く、どうなるか予断を許しません。 身体介…

「給付と負担」の改革案は目白押しだが… 実現されるのは、意外にもごく一部!?

社会保障審議会・介護保険部会が、「給付と負担の関係」を議論する段階に入ってきました。9月26日の部会では、さまざまな論点ごとに、過去の同部会や財務省の審議会、各種閣議決定などでの指摘事項が示されています。押さえたいポイントをあげてみましょう…

コロナ禍後の重要課題の1つは 「短期入所・利用」資源の不足解消

2021年度の介護給付費実態統計が公表されました。各サービスの受給者数や1人あたり費用額の中で、今回注目したいのは短期入所・利用のサービスです。コロナ禍前の状況と比較した時、気になる変化が生じています。家族状況も視野に入れて確認してみましょう…

2040年には外国人ケアマネも急増⁉ 多様性がもたらす「介護」の未来像

2022年度の厚生労働白書が公表され、「社会保障を支える人材を取り巻く状況」が網羅されています。少子高齢化により労働力人口のさらなる減少が見込まれる中、介護ニーズの充足を図るうえでの着目点の1つが「外国人労働者のさらなる受入れ」です。ターニン…

直近の「死因順位」から見えてくる ケアマネが習熟すべき3つのポイント

厚労省から、2021年の人口動態統計の確定数が公表されました。出生数が過去最少となる一方で、死亡数は戦後最多に。ここでは「死亡数」における「死因順位」に着目します。介護現場としては、看取り対応のさらなる拡大とともに、増加する「死因」から専門職…

介護予防支援を包括から切り離す!? 保険者提案等で再び浮上しそうな論点

2024年度の介護保険制度見直しを議論する介護保険部会で、地域包括支援センター(包括)にかかる実務上の環境整備がテーマとなりました。総合相談支援の対応が増える中、介護予防支援にかかる業務が、包括の大きな負担になっていることを受けたものです。 包…

「自事業所は関係ない」は通用しない⁉ ケアプランデータ連携を重視すべき理由

厚労省が「ケアプランデータ連携システムの概要等の周知について」とする通知を発出しました(vol.1096)。これに先がけて、「データ連携のための標準仕様」にかかる通知も出されています(vol.1095)。2023年度からの本格稼働が予定される同システムですが…

急速に高まる現場の腰痛リスク より強い規定と予算措置も不可欠に

厚労省が、今年5月から「転倒防止・腰痛予防対策のあり方に関する検討会」を開催しています。その第4回会合で、検討事項の中間整理案が示されました。介護現場においては、特に腰痛予防対策が大きな課題となっています。今後、どのような施策が展開されるで…

介護費用の増大は、高齢化だけが原因? 注意したい、コロナ禍と総合事業の関係

2020年度の介護保険事業状況報告が公表されました。その年度での1号保険者数や要介護認定者数、サービス受給者数、費用・給付費額などをまとめたものです。費用額が初の11兆円に達したことが大きなトピックですが、その背景や今後の見通しを掘り下げます。 …

急速に進む?介護保険のボーダーライン化 地域事情によって役割一変の可能性も

介護保険部会において、具体的な課題提示が始まりました。今回の議論で特徴的なのは、地域包括ケアシステムの深化をテーマとし、住まい支援策などとの連携が視野に入っていることです。現場としてはピンと来ないかもしれませんが、これからの介護保険の行方…

相対的な「仕事の満足度」は高いケアマネ。 課題となるのは、「孤独」になりがちな環境

公益財団法人・介護労働安定センターが、2021年度の介護労働実態調査の結果を公表しました。訪問介護員や介護職員等の就業実態・意欲について、さまざまなデータが上がっています。ここでは、これらデータの中から「ケアマネ」にスポットを当てます。 ケアマ…

「高止まり」続く第7波の介護現場危機。 収束後も視野に入れた支援策が必要

新型コロナウイルス感染症の第7波が、依然として猛威をふるっています。高齢者施設においても、厳しい状況が続きます。クラスター件数の高止まりに加え、地域の病床ひっ迫により、施設内療養は引き続き増加傾向に。利用者のみならず職員の感染状況も目立つ…

高齢者へのオンライン診療拡大で 介護側の実務増は報酬に反映される?

高齢患者のオンライン診療を広げるために、実施の「場所」や「条件」のあり方が検討されています。8月17日に開催された社会保障審議会・医療部会でも、「遠隔医療のさらなる活用」に向けた議論が行われました。注意したいのは、2024年度の介護報酬・基準改…

ケアマネジメントへの利用者負担の導入。 現場従事者に「容認」の流れも?

次の介護保険制度見直しで、大きな論点の1つとなっているのが「ケアマネジメントへの利用者負担導入」です。では、現場の介護従事者はどう考えているのでしょうか。UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)が組合員を対象に実施した「2022年度就業意識…

やまゆり園の事件から6年の今、考える。 制度を覆う「生産性向上」への違和感

相模原市の「津久井やまゆり園」で、元職員(殺人罪で死刑が確定。再審請求中)によって入所者19人が殺害された事件から6年が経過しました。裁判を通じて明らかになった加害者の障害者への考え方は、「人の尊厳」が薄く偏った価値観によってないがしろにさ…

どうするケアマネ? 何ができる? 利用者負担増などを見すえた現場対応

内閣府や財務省が打ち出す「負担と給付の見直し」について、介護保険部会でもさまざまな意見が出ています。2割負担層の拡大やケアマネジメントへの利用者負担導入に加え、大きな柱となるのが要介護1・2の訪問・通所介護の総合事業への移行。これらの改革…

「間接業務=専門性が低い」ではない 介護助手の導入で注意したい認識

介護人材の確保に向けて、厚労省が推進する方策の1つが「業務の明確化と役割分担」を進めたうえでの「介護助手の活用」です。介護保険部会でも、その推進がテーマとなる中で、「制度上でどのように位置づけられるのか」がにわかに焦点となってきました。 介…

予算方針で明記された「利用者負担見直し」 このタイミングでなぜ? その先の狙いとは

介護保険制度の見直しに向けて、内閣府や財務省からのプレッシャーが強まっています。内閣府の経済財政諮問会議が、2023年度予算の概算要求に向けて示した「予算の全体像」では、「介護保険の利用者負担増」も明記されました。このタイミングでの「利用者負…

2022年、介護事業の倒産が最多の可能性。 膨大な「予備軍」撤退は2023年がピーク⁉

2022年に、介護事業者の倒産が過去最多となる可能性が浮上しています。東京商工リサーチが、2022年上半期の「老人福祉・介護事業」の倒産件数を示したデータからの予測です。再びのコロナ禍や物価上昇を被る中、介護業界の水面下で何が起こっているのでしょ…

国は「生産性の向上」と言うけれど… 今、現場に必要なのは「余力の創出」では

厚労省から、「介護現場における生産性向上の取組み、ICTの導入促進に向けた資料について」の通知が発出されました。開発・改訂されたツールやガイドラインのリンク先を示したものです。こうしたツール等について、現場の受け止め方・活かし方を掘り下げます…

コロナ「第7波」の特質から見えてくる? 8月上旬頃の介護サービス重大危機

BA.5系統の変異株を主流とした、新型コロナウイルス感染症の「第7波」が急速に拡大しています。病床ひっ迫による在宅あるいは施設内療養のニーズも再び高まる中、国も体制確保等にかかる通知を改めて発出しています。「第7波」の特徴なども考慮しつつ、今…

大胆予測。「適切なケアマネジメント手法」を 制度上でどのように反映させる?

厚労省が、「適切なケアマネジメント手法」の普及に向けて、手引きの作成や動画の配信などさまざまな事業を展開しています。最新の通知では、実践研修の実施に向けて実施団体等の募集が行われました。その先を見すえた場合、やはり2024年度改定など制度上で…

介護現場を浸食する深刻な物価上昇 臨時の報酬改定も必要になる可能性

今年前半からの急速な物価上昇は、介護事業経営にも深刻な影響をおよぼしています。大手事業者の記者会見では、今年4・5月時点で水道光熱費が前年同月比4割増などの厳しい状況が明かされました。コロナ禍の急拡大も加わる中、国の支援策が行き届くのかど…

日本協会が打ち出した「実践知の言語化」 国の事業との関係性と期待したい点

ケアマネの職能団体である日本介護支援専門員協会が、ケアマネジメントの質の向上を図るべく「熟練したケアマネジャーの実践知の言語化」に向けたプロジェクトをスタートさせます。各種審議会でケアマネジメントのあり方が大きな論点となる中、制度改正に向…

普及難航のキャリア段位制度 厚労省が狙うのは「LIFEとのデータ連結」?

介護プロフェッショナルキャリア段位制度(以下、段位制度)といえば、2013年度のレベル認定(アセッサー養成は2012年度)から10年が経過しようとしています。しかし、実施主体である都道府県の施策反映への意欲はなかなか高まりません。厚労省が考える「次…

ケアマネの処遇改善が必要な理由── そこには「利用者の尊厳保持」の目的も

先に内閣府が公表した「高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」の結果から、ケアマネジメントを進めるうえでも注目したい点を取り上げます(今調査は、実際は60歳以上が対象なので、「高齢者」とするには課題もありますが…)。ポイントは、介護保…

定期巡回・随時対応型の普及に向け ケアマネ啓発が進む? 懸念されるのは?

地域包括ケアシステム推進のカギと位置づけられるサービスの1つが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下、定期巡回型)です。サービスの稼働は2012年度から。今年で10年目を迎えました。しかし、2020年10月1日時点で事業所数は1,099件にとどまります(…

現場でのICT活用の制度化が加速する中 従事者の健康確保に懸念はないか?

介護現場の従事者不足や業務負担増への対応策として、ICT活用がますます大きな流れになっています。2021年度に強化された「テクノロジーの活用による基準や加算要件の緩和」なども、次期改定ではさらに進むことが想定されます。そうした中、置き去りにしては…

生活援助従事者研修の普及がいまひとつ 訴えきれない「生活援助の専門性」

厚労省が「生活援助従事者研修の普及等」について通知を発出しました。通知内では、一般向けリーフレットや実施主体向けガイドブックのほか、調査研究のリンクも貼られています。2018年度に開始された生活援助従事者研修ですが、普及がいまひとつという状況…

7月10日投票の参議院議員選挙 介護現場の視点で、投票基準としたいこと

2021年10月の衆議院議員選挙に続き、今年は参議院議員選挙が行われます(投票日7月10日)。物価対策や安全保障などが大きな議論となる一方、少子高齢化が一段と進む中での社会保障も欠かせない論点です。貴重な一票を投じる前に、介護現場の視点で「何を見…

内閣府調査から浮かぶ高齢者の社会参加の壁。解決に必要なのは、やはり「人づくり」

内閣府が、60歳以上を対象とした「高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」(調査時期2021年12月)の結果を公表しました。同データは、対象者を65歳以上に絞ったうえで、一部を2022年度の高齢者社会白書でも取り上げています。2014年調査とも比較…

LIFE関連情報なども本人がスマホで閲覧? 2024年度以降の改革が現場にもたらすもの

「骨太の方針2022」からも分かるとおり、保健医療分野で政府が力を入れているのが、データヘルス改革です。先のニュース解説で、マイナポータルを活用したPHR(個人の健康等の電子情報を本人・家族が把握するしくみ)について取り上げましたが、ここには将来…

着々と進む、ケアプランへのAI活用 2024年度改定でどこまで制度化される?

ケアマネジメントにおけるAI活用の研究がどこまで進んでいるのか、気になるケアマネは多いでしょう。5月の介護保険部会では、厚労省の「ホワイトボックス型AIによるケアプラン作成支援」に向けた工程表なども改めて示されています。2024年度の介護報酬・基…

骨太方針が高らかにうたう介護等のDX。 その先にある未来像は現場に伝わるか?

6月7日、政府が「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022」を閣議決定しました。一読して目につくのは、やはり横文字の多さです。重点分野でのGXやDX、社会保障分野ではデータヘルス改革に関するPHRなど。コロナ禍や物価高で疲弊する国民生活や介…

人員基準の緩和──利用者・家族からの 「責任追及」リスクをどこまで想定?

5月30日の社会保障審議会・介護保険部会で、内閣府の規制改革推進会議の答申(5月27日決定)の内容が示されました。その中に、「介護付き有料老人ホーム」等における人員配置基準の特例的な柔軟化があがっています。かねてから論点となっている緩和策です…

小規模事業所の経営改革が義務化される? 政府の骨太改革案でも浮上する注目課題

財務省の財政制度分科会が、介護保険制度の改革を含めた建議を取りまとめました。すでに審議会の議論で提示されたものが中心ですが、厚労省側の審議会にも大きなプレッシャーとなってくるでしょう。その「実現可能性」という点で、特に注目したいテーマの一…

2021年度報酬改定の影響調査で浮かぶ 次期改定に向けたケアマネ改革の2大焦点

2021年度の厚労省・老人保健健康増進等事業として、居宅介護支援等にかかる2021年度の「介護報酬改定の影響に関する調査研究」(実施主体:三菱総合研究所)の結果が公表されました。ケアマネ実務に関してさまざまな見直しが行われた2021年度改定ですが、1…

軽度者だからこそ必要なサービス── 居宅療養管理指導等の意義を再確認

次期介護保険制度の見直しに向けた財務省の財政制度等審議会(財政制度分科会)の提言で、「軽度者に対する居宅療養管理指導サービス等の給付の適正化」を求めています。このテーマは、先の日本介護支援専門員協会(以下、日本協会)の見解でもふれられてい…

日本介護支援専門員協会が打ち出した 「セーフティネット」という言葉の重み

介護保険制度見直しに向け、財務省などから厳しい提言が出されています。これに対し、日本介護支援専門員協会(以下、日本協会)が会長名で「財政制度等審議会・財政制度分科会の資料に対する見解」を公表しました。同見解から注目のポイントを取り上げます…

介護保険部会の議論がいよいよ稼働 実は本丸テーマはケアマネジメント改革⁉

2024年度(第9期介護保険事業計画期間)の介護保険制度見直しに向け、社会保障審議会・介護保険部会が本格的に動き始めました。制度をめぐる課題が目白押しとなる中、これからどのような議論が展開されるのでしょうか。今後の議論を見聞きするうえで、注意…

BCP策定のスピードアップに向け 自治体からのプレッシャーが強まる可能性

国の調査によれば、介護事業所・施設におけるBCP(業務継続計画)の策定状況は、昨年末時点で「2022年3月までの策定予定」とする回答が約5割にのぼっています。逆に策定のめどが立たない事業所・施設も一定程度見られます。2024年3月末の経過措置終了に向…

経済団体が打ち出したサーキットブレーカー 実現するのか? 狙いはどこにあるのか?

社会保障制度の改革に向け、経済界からの要望や提言が活発化しています。経済3団体のうち、経済同友会からは「持続可能な財政構造の実現に向けて」と題した政策提言が出されました。その中で、医療・介護給付を抑制するための「サーキットブレーカー」の導…

急な物価上昇が介護に与える影響 臨時の報酬改定も必要なレベル!?

一気に進んだ「円安」等を背景に、今年に入ってから消費者物価の指数が上がり続けています。すでに介護現場でも、少なからぬ影響がおよび始めました。今後の経済政策の動向にもよりますが、物価上昇がこのまま続いた場合、2024年度に向けた介護保険見直しの…

サ高住等におけるケアプラン作成 調査研究から浮かび上がる問題の根深さ

2021年度老人保健健康増進等事業の一環で、ケアマネにとって興味深い報告書が示されました。それが「サ高住等における適正なケアプラン作成に向けた調査研究(実施主体:日本総合研究所)」です(「サ高住等」には、住宅型有料老人ホームなども含みます)。…

ケアマネ法定研修カリキュラムの見直し 「準備材料」の提示で見えてくること

厚労省がケアマネの法定研修カリキュラムの見直しを予定しています。果たしてどのような改定が行なわれるのか──そのヒントとなる資料が公表されました。「介護支援専門員の資質向上に資する研修等のあり方に関する調査研究事業」(実施:日本総合研究所。202…

「ヤングケアラー支援マニュアル」を 情報収集が困難なケースに活かすには

ヤングケアラーについて、国は2022年度から3年間を「集中取組み期間」と位置づけています。4月22日には、厚労省が「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル」の周知を求める通知を発出しました。ケアマネおよび現場の支援職が、マニュアル…

「仕事と介護の両立支援」をめぐって ケアマネの法定研修等はどうなる?

2021年度に自治体のモデル事業として、「仕事と介護の両立に関する研修カリキュラム」にもとづくケアマネ向けの研修が行われました。この事業結果をもとに、今後は法定研修のカリキュラムへの組み込みも予定されています。今回の事業を通じ、ケアマネとして…

財務省によるケアマネ改革案は、 制度の理念や現場の実情に沿っているか?(2)

引き続き、4月13日の財政制度等審議会(財政制度分科会)で提示された、ケアマネジメントにかかる改革案を取り上げます。今回は、もう1つの案となる「福祉用具貸与のみをプランに位置づけた場合の報酬引下げ」についてです。ケアマネジメントの根本にかかわ…

財務省によるケアマネ改革案は 制度の理念や現場の実情に沿っているか?(1)

財務省の財政制度分科会が、4月13日の議論で、ケアマネジメントについての改革案を2つ打ち出しています。1つは、ケアマネジメントへの利用者負担導入。もう1つが、福祉用具貸与のみのケースについての居宅介護支援の報酬の見直しです。今回は、前者の「…

小学生ヤングケアラー実態に初のスポット ケアマネも「発見者」となる可能性が

厚労省が、2021(令和3)年度の「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」の報告書(実施主体:日本総合研究所。子ども・子育て支援推進調査研究事業として実施)を公表しました。今回の調査では、中高生に加え、これまで実態把握が行われてこなかった小学…