政府が介護職に幅広く給付金を支払う方針を決めたことを受けて、現場の関係者からは歓迎する声があがった。一方、「これで終わりにしないで」との切実な訴えも届いている。【Joint編集部】
今回の給付金は、新型コロナウイルスが流行する中でも高齢者を支えた職員への「慰労金」という位置付け。
感染者、濃厚接触者に対応した事業所の職員には20万円、感染者、濃厚接触者がいない事業所の職員には5万円が支給される。厚生労働省は全介護サービスを対象とする方針。日頃から利用者に接する仕事であれば、職種にも特に制限をかけない方向で調整を進めている。
投じられる費用は介護分だけで4132億円。27日に閣議決定された今年度の第2次補正予算案に計上された。
2次補正の編成過程で交渉にあたった園田修光参院厚生労働委員長は、「介護現場において感染の発生が少なかったことは、職員による感染防止のための懸命な努力の結晶であって、医療崩壊を防ぎ、WHOをして“成功”と言わしめた成果。これに対して報いるべきとの主張を行い、予算を積み上げることができた」と報告した。
特養の経営者らでつくる全国老人福祉施設協議会の平石朗会長は、「介護現場のことを考えて頂き非常にありがたい」と表明。日本介護福祉士会の石本淳也会長は、「介護現場の声が反映された支援策が出されたことに感謝したい。今回の後押しを受け、引き続き感染予防に努めていきたい」とのコメントを寄せた。
「本丸は来年度の報酬改定」
一方、給付金の決定を喜びつつ先行きを懸念する声も出ている。
NPO法人暮らしネット・えんの小島美里代表理事は、「ともあれ良かった」と評価したうえで、「もともと全職種平均より年間100万円低い賃金の介護業界。流行の第2波、第3波はもちろん、平時に戻ってからも介護職不足にならない対策を取って欲しい」と強調。「これで終わりにしないでください」と呼びかけている。
淑徳大学・総合福祉学部の結城康博教授は、「必死に高齢者を支えている職員の頑張りを国が認めた。介護現場の精神的な支えにもなり、今回の給付金があるのと無いのとでは全く違う。良かった」と述べた。そのうえで以下のように警鐘を鳴らしている。
「介護現場は平時から非常に厳しい状況にあった。単発の給付金だけで問題は解消しない。本丸は来年度の介護報酬改定。ここでまた報酬を上げないと、結局、人手不足がどんどん悪化して崩壊へ向かう」