社会保障審議会介護給付費分科会(第183回 8/27)《厚生労働省》
社会保障審議会・介護給付費分科会は27日、2021年度の介護報酬改定に向けて施設系サービスの方向性について議論した。そのうち、介護老人福祉施設(特養)については、ユニットケアが目指す個別性が高く手厚い介護の推進と人材不足への対応が中心的なテーマとなった。また、一部の委員は、特に地方における要介護1・2の人の受け入れや低所得者のニーズへの対応などについて検討を求めた。
・第183回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
厚生労働省は介護老人福祉施設に関する論点として、▽介護人材不足が続く中で、今後も増加する介護ニーズに対応するための介護ロボット・ICTの活用や基準の緩和▽ユニット型施設の普及方策▽看取りの促進や医療分野との連携の強化▽感染症、災害などのリスクへの対応-を示し、どのような方策が考えられるか議論を促した。
このうち、ユニット型施設の普及については厚労省が18年3月に告示を出し、25年までに「地域密着型介護老人福祉施設及び指定介護老人福祉施設の入所定員の合計数のうちのユニット型施設の入所定員の合計数が占める割合については、70%以上」(地域密着型介護老人福祉施設及び介護保険施設の入所定員の合計数のうちのユニット型施設の入所定員の合計数が占める割合については、50%以上)との目標を定めるよう都道府県に対して促している。同省の介護サービス施設・事業所調査によると、17年時点の介護老人福祉施設の個室ユニット化率(定員数)は43.6%。
厚労省はこの日、ユニット型施設の推進に向けて設置した検討会(個室ユニット型施設の推進に関する検討会)がまとめた報告書の内容についても委員に対して報告した。報告書では、人材確保や現場職員のシフトに余裕を持たせることで定着につなげるべく、1ユニットの規模について「15名程度以内であればユニットケアの理念を踏まえたユニットの運営が可能と考えられる」と見直しの検討を提案している。また、反対意見もあるものの「自治体によっては厳しく制限している2ユニット単位での運用を昼間の時間帯でも認めるようにしてはどうか」などといった意見も出ていた。
このほかに、現行では常勤配置が必須であるユニットリーダーについて「原則的には常勤を維持しつつ、出産・育児などやむを得ない場合については、必ずしも常勤を求めないこととする」という意見も盛り込まれていた。
小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会理事)はユニット型施設普及の阻害要因として「地方では、ユニットへの入居希望者が少なく、運営が困難である」などと指摘した。
武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、ユニット型施設を推進していく移行期である現在、低所得者の入所ニーズを満たすため「ユニットと多床室との2つの機能を持った100ベッド(規模)の特養」が存在することを指摘した。その上で、こうした施設では居室類型ごとに設けられた人員配置基準を満たす必要があるため「ほとんど赤字」だとして、個別報酬改定項目を検討する際に考慮するよう求めた。
また、過疎地にある特養では「要介護1・2の人は原則的には入れない、遠い町に行かざるを得ない。一方で、特養は空いている」といった事態が生じていることにも言及。新規入所者を原則要介護3以上とする要件についても緩和を求めた。
石田路子委員(高齢社会をよくする女性の会理事・名古屋学芸大学看護学部教授)は、ユニット型施設普及における人材不足への対応について指摘。介護職員全体の人数を減らすことについては懸念を示した上で、専門職の常勤要件については決まった時間帯で働く職員も認めるなど緩和の余地があるとした。