感染症や災害への対応、介護報酬上の評価など検討へ 社保審分科会

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社会保障審議会介護給付費分科会(第184回 9/4)《厚生労働省》

2021年度介護報酬改定に向け検討を進めている社会保障審議会・介護給付費分科会では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、「感染症や災害への対応力強化」が分野横断的な検討テーマに加わった。4日には、事業継続計画(BCP)の体制整備に対する評価の在り方や、臨時的な対応として各サービスに認められている緩和措置を平時においてどのように取り扱うかについて意見が交わされた。

・第184回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

新型コロナウイルスの感染が広がりを見せて以降、業界団体などは事業者が平時から感染症対策に取り組むための財政的支援などを求めてきた。同分科会においても「標準的に予防やまん延防止の対応ができるよう仕組みが必要ではないか」「BCPの作成や見直し、研修や訓練等について、利用者や家族も一緒に行うことで、地域の中の対応力を高めていくことが必要ではないか」といった意見や、そのための報酬上の手当てなどに関する要望が出ていた。

厚生労働省はこうした訴えを受け、4日の分科会で、21年度報酬改定に向けた分野横断的な検討テーマに、感染症や近年相次ぐ災害への対応力の強化を加え、年末の取りまとめに向けて議論を進めていくことを提案した。

同日、具体的な論点となったのは、▽感染症や災害の発生に対する日頃からの備えや発生時における業務継続に向けた取り組みを推進するため、現行の運営基準などを踏まえた方策の在り方▽BCPの策定を進めていくために考えられる方策▽災害発生時や新型コロナウイルス感染症対応における介護報酬の臨時的な取り扱いのうち、ICTの活用など平時からの取り扱いとすべきもの-について。

新型コロナウイルスの影響下において認められている人員基準等の臨時的な取り扱いについて、ICTの活用(訪問介護の特定事業所加算の算定要件等である定期的な会議の開催について、テレビ会議などによる実施を認めることなど)を平時にも継続して認めていくことについては、明確な反対意見は出なかった。

一方で、サービスごとに臨時的に認められている対応については、見方が分かれた。

伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)は、訪問介護員の資格がない職員に訪問介護サービスの提供を認めている緩和措置について「一般化するというのは非常に問題がある」と指摘した。

井上隆委員(経団連常務理事)は、感染症や災害への対応力強化を分野横断的なテーマに加えることについて賛意を示した上で「平時の保険制度で想定しているような保険対象を超える事象」と指摘。その財源について、保険料以外から賄うよう求めた。

また、個別のサービスに認められている臨時的な対応は「感染症が収束した段階で、いったん元に戻して検証してみるということが基本になる」と強調。その上で「一定の体制や取り組みを行う事業所を対象として、効果を検証できるエビデンスを前提に加算制度を作っていく」ことを求め、一律に基本報酬で対応することに反対した。