来年4月に控える次の介護報酬改定に向けて、厚生労働省は居宅介護支援の基本報酬の逓減制を緩和する検討に入った。【青木太志】
個々のサービスの質が低下しないよう、ICTの活用や事務職の配置などで業務の効率化を図ることを要件とする方向で詰める。事業所の収入を増やして経営を安定させること、ケアマネジャーの処遇改善に結びつけることが狙い。年内に方針を決定する。
30日の社会保障審議会・介護給付費分科会で提案した。委員からは、「本当に質を担保できるのか」「忙しいケアマネの負担が更に増える」といった慎重論も出ており、引き続き調整を進めていく。
居宅介護支援の基本報酬は現在、常勤換算でケアマネ1人あたり40件以上になると半減する仕組み。厚労省は例えば、40件を超えた後も一定数まで単位数を維持したり、傾斜をもっと緩やかにしたりする案を俎上に載せる。
この日に発表された新たな調査結果によると、居宅介護支援の昨年度の収支差率は▲1.6%。前年度(▲0.1%)から大幅に悪化し、経営環境の厳しさが増している実態が改めて浮き彫りになった。ケアマネを志望する人が急激に減っていることもあり、関係者の間では事業所への支援を求める声が強まっている。
当事者の日本介護支援専門員協会は今年9月、次期改定に向けた要望書を厚労省へ提出。対応策の1つとして逓減制の緩和を持ちかけた経緯がある。
協会の濱田和則副会長は今回の会合で、「事業所の経営は厳しく設備投資も困難な状況。もう少し、あと数件でも減算されずに担当できるようになれば、経営や処遇の改善につなげられる」と説明。「逓減制の導入は2006年。もう15年が経ち介護支援専門員の資質、技能も向上した。サービスの質を確保しつつ緩和を」と呼びかけた。
また、「公正・中立なケアマネジメントが行える環境を作るためにも、独立した事業所の経営が可能となるようにすべき」と主張。「質の高い介護支援専門員を安定的に確保する観点からも、あわせて基本報酬を引き上げる必要がある」と訴えた。