創設21年目迎える介護保険制度、「持続可能性」がキーワードに

イメージ画像

令和元年度 介護保険事業状況報告(年報)(8/31)《厚生労働省》ほか

 介護保険制度が創設されて21年目を迎えている。20年の節目だった昨年は、新興感染症という制度にとっても大きなリスクが顕在化した。高齢化がますます進むなかで、あらためて「持続可能性」という課題を突き付けられている。

介護給付費は10兆円の大台に迫る

介護保険制度は、その創設から20年が経ち、サービス利用者は創設時の3倍を超え、介護サービスの提供事業所数も着実に増加し、介護が必要な高齢者の生活の支えとして定着・発展してきている。一方、高齢化に伴い、介護給付費も年々増加しており、2018年度に創設時から約3倍増の9兆6,266億円に達し、19年度には9兆9,622億円と10兆円の大台に迫っている。自己負担を含む費用額では10兆7,812億円(対前年度3,493億円増)と、すでに10兆円を超えている。また、第8期介護保険事業計画期間(21年度-23年度)の第1号保険料の全国平均は6,014円となり、初めて6,000円を超えた。創設時には2,911円だったので、2倍を超えて増加したことになる。

そうした状況のなか、要介護状態の軽減・悪化の防止に資するよう、必要な保険給付を行うと同時に、給付と負担のバランスを図りつつ、保険料、公費および利用者負担の適切な組み合わせにより、「制度の持続可能性」を高めていくことが重要になっている。足下では、25年に向けた地域包括ケアシステムの推進や介護人材不足などの課題への対応に迫られる一方、介護サービス需要が一層増加・多様化し、現役世代(担い手)の減少が進む40年を見据えれば、各地域で高齢者の自立支援・重度化防止や日常生活支援といった役割・機能を果たし続けられるよう、制度の持続可能性を確保しながら、必要な整備や取り組み強化を図っていくことも求められている。

必要な給付は確保しつつ、その適正化を図る観点だけでなく、サービスの質の評価や科学的介護の取り組みを進めるためにも、「自立支援・重度化防止の推進」が21年度介護報酬改定の大きな柱となったのは記憶に新しいところだ。

全事業者に「BCP策定」を義務化

21年度改定には、「新型コロナウイルス感染症」という従来にはなかった大きなファクターが存在した。また、近年は地震や豪雨などの大規模災害が相次ぎ、介護事業所の被害が発生している状況も背景にあり、「感染症や災害への対応力強化」が柱の一つに据えられたことも特徴に挙げられる。介護サービスは、利用者やその家族の生活を継続するうえで欠かせないものであり、感染症や自然災害が発生した場合であっても、利用者に対して必要なサービスが安定的・継続的に提供されることが重要になるからだ。いわば、発生時における「事業・業務の持続可能性」が問われることになる。

その考えのもと、まず感染症対策の強化として、すべての介護事業者を対象に、施設系サービスでは従前の委員会の開催、指針の整備、研修の実施等に加え、訓練(シミュレーション)の実施を、その他のサービスについては上記のすべての実施を義務づけた。また、感染症や災害発生時の「業務継続計画」(BCP:Business Continuity Plan)の策定、研修や訓練(同)の実施も、すべての介護サービス事業者に新たに義務づけられている。

これらの義務化にあたっては、3年の経過措置期間が設けられた。しかし、特に自然災害は、またいつどこで発生するか分からず、被災する前に速やかに対応する必要があることはいうまでもない。今年7月には静岡県熱海市を土石流が襲い、新型コロナは第5波に及ぶ未曾有の感染拡大が続くなど、BCP策定の重要性を再認識させられる事態となっている。「『3年の間に』と考えては絶対にいけない」と有識者も指摘している。

BCPは災害や感染症流行が起こる前段階が重要

BCPの策定が急務となる一方、現場には戸惑いも少なくないことから、厚生労働省はホームページ上で「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン」や様式ツール集、ひな形のほか、策定支援の研修動画も作成・公開している。

その動画では、まずBCPが「大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い時間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画」であることを再確認。介護事業所でも(1)サービスを中断させない、(2)中断した場合は速やかに復旧させる—ことが重要であり、(1)ではサービス提供に必要な資源である職員、建物・設備、ライフライン(電気・ガス・水道)を守る、(2)ではサービス提供に必要な資源を補って速やかに復旧させ、職員が不足し、ライフラインが停止することを踏まえ、重要業務に優先して取り組む—ことを基本的対応に挙げている。

そのうえで、自然災害と感染症では対応での考え方に違いがあるとし、たとえば、災害では施設・設備など、社会インフラへの被害が大きいが、感染症では人への健康被害が大きく、業務継続は主にヒトのやりくりの問題になると指摘。災害による被害量は事後の制御が不可能であるのに対し、感染症では感染防止策により左右されるため、それが重要になると説明している。また、いずれにおいても「時間的経過」がポイントになるとし、自然災害では「優先度の高い業務から回復させる」、感染症(入所系)では「優先的に継続する業務に絞り込む」などの具体的対応を示している。

そして、BCPは災害や流行が起こる前の段階が非常に重要であり、準備は裏切らないとして、「平常時にこそ準備を進める」ことの必要性が強調されている。

>>資料PDFダウンロード

令和元年度 介護保険事業状況報告(年報)のポイント

第199回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1 令和3年度介護報酬改定の主な事項

介護事業者における業務継続計画(BCP)について(令和2年度 厚生労働省 老健局 業務継続計画(BCP)作成支援指導者養成研修資料)