介護職の賃上げ、どう評価? 現場からは不満の声も 「インパクトが乏しい」「なぜ対象外…?」

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介護職員らの賃金を月額3%(9000円)ほど引き上げる来年2月からの賃上げ − 。その新たな制度の基本デザインも明らかになったが、現場を支える介護事業者はどう捉えているのだろうか。3人の経営者に率直な受け止めや評価を語ってもらった。【Joint編集部】

 

「事業者がもっと潤うようにならないと人材は集まらない」

《 赤星良平さん 》

五麟会グループ代表取締役・赤星良平さん

政府の言う3%(9000円)の賃上げでは不十分です。インパクトも乏しく、現状と特に変わらないのではないでしょうか。介護は他産業と比較して賃金が安いですよね。今回、少なくともあと2、3万円はプラスすべきだったと考えています。

現場の事務負担も課題になるでしょう。介護・福祉への思いだけで頑張っている地域の小さな事業所も少なからずあります。補助金や加算の申請手続きをできるだけ簡素にするなど、国の今以上のサポートも非常に大事になると感じています。全ての介護職員に対し、例外なく賃上げのリソースが還元されるように工夫して頂きたい。

私は介護事業者が経営的にもっと潤うようにならないといけないと感じています。そうでないと業界としての魅力も、職員の賃金も上がらず、結果として人材が集まることもありません。「介護で儲けるなんてけしからん」という雰囲気もありますが、本当にこのままでいいのでしょうか…。もちろん程度問題はあると思いますが…。

強い違和感を覚えるのが、介護事業者の周辺の事業者がとても儲かっている現状です。例えば一部の人材紹介やICTソリューションなどが活況を呈していますが、介護サービスの対価がこうしたところに流出しています。その一方で、社会保障を担う介護事業者が政府に助けられるほど貧しくなっている現状には、やはり矛盾を感じざるを得ません。結構おかしな構図だと思うのですが、もう少し正常化を図るべきではないでしょうか。

 

「ケアマネ対象外に悲しみと怒り…。介護保険にばかり頼ってはいられない」

《 進絵美さん 》

ケアマネ業務支援センター理事・進絵美さん(ケアマネジャーを紡ぐ会大阪支部長)

居宅介護支援が賃上げの対象外となり、とにかく冷遇を受けたと感じています。我々ケアマネジャーって、いったいどんな扱いになっているんでしょうか。それが良く分からないことが辛いです。求められる役割は色々と多いわけですが、それも評価にはあたらないということですよね。周辺の雑用係とでも思われているのでしょうか。

4月の逓減性の緩和で収入は少し増えましたが、忙しさも増したので処遇改善にはつながっていません。ケアマネはどんどん"やりたくない仕事"になっていると感じます。頑張って資格をとっても報われないわけですから、担い手は更に少なくなっていくでしょう。

我々は国から認められていない…。そんな気持ちが募り、残念な感情、静かな怒りの感情が湧いてきます。だからこそ、見返してやろうという気持ちが一段と強くなりました。いつまでも介護保険にばかり頼っているわけにはいきません。ケアマネ自身が、自分たちの力でどう収入を上げていくか考えるべきでしょう。持っている知識、スキルで介護保険以外の社会資源との関わりを作り、自らの手で処遇改善を図ることが重要だと考えています。

 

「3%では足りないが重要な一歩。更なる処遇改善を目指したい」

《 吉田聡さん 》

一期一笑在宅ケアグループ専務取締役・吉田聡さん

3%(9000円)の賃上げでは全く足りません。介護は高齢者の命を預かって繊細なケアをする重要な仕事です。非常に大きな責任が伴うわけですから、もっと上げて頂かなければいけません。これだけ責任が重くて低賃金だと、「介護ではなく他の仕事の方がいい」と思われてしまいます。そこが介護業界に人が定着しない一因ではないでしょうか。

賃上げの具体的な方法も、事業所の売り上げに連動する今の仕組みをやめて頂きたい。コロナ禍の先行きも不透明で、状況が悪化すればまた"利用控え"が起きる可能性も否定できません。それで賃金水準を維持しようとすれば、事業所の経営は行き詰まってしまうでしょう。

ただ、賃上げの取り組み自体は非常にうれしいことですよね。介護職員の社会的な評価を上げることにもつながりますし、まずは"重要な1歩"というところでしょうか。これから国や事業者がともに、介護職員の処遇を更に良くする工夫をしていけたら良いのかなと思っています。