【高野龍昭】強まる利用者負担アップの可能性 次の介護保険改正、負担を医療と同列に扱っていいか

《 東洋大学・高野龍昭准教授 》

3月に再開された社会保障審議会・介護保険部会は、本稿執筆時点(5月上旬)でその後の動きがなく、2024年度介護保険制度改正の議論は進んでいないようです。おそらく、7月に控えている参議院議員選挙までは突っ込んだ議論は行われず、選挙後に急ピッチでの議論となるものと考えられます。【高野龍昭】

そのようななか、今年10月から、介護保険制度の隣接領域といえる後期高齢者医療制度において、従来の患者負担1割(一般所得者)、3割(現役並み所得者)に加え、新たに2割(一定以上所得者)の負担区分が設けられます。

このことについては、昨年の財務省の審議会でも「後期高齢者医療における患者負担の見直しを踏まえ、2024年度から介護保険制度における利用者負担を原則2割とすることや2割負担の対象範囲の拡大を検討する必要がある」という趣旨の指摘(※1)がされており、介護保険制度に直接的な影響を及ぼすと受けとめておくべきでしょう。

そこで、現行の介護保険制度の利用者負担と、今年10月からの後期高齢者医療制度の患者負担を比較してみましょう(図)。

介護保険と後期高齢者医療制度の定率負担の所得基準

単独世帯の場合、現行の介護保険制度で2割負担となるのは、前年の「年金収入+その他所得」の合計が“年額280万円以上340万円未満”の高齢者となります。一方、今年10月からの後期高齢者医療制度で2割負担となるのは、同様の世帯で前年の「年金収入+その他所得」の合計が“年額200万円以上383万円未満”の後期高齢者です。2割負担の所得の低い方の基準は、後期高齢者医療制度の方が厳しく設定されていることがわかります。

前述の財務省の審議会の指摘は、おそらく「(せめて)介護保険制度での2割負担の下限の所得水準は、後期高齢者医療制度の水準まで拡大すべき」ということを意味していると読み取れますから、2024年8月利用分からは、年額200〜280万円の所得の高齢者の介護保険自己負担を1割から2割へと増率するよう検討せよ、ということです。

私自身は、介護サービスは日常的に利用されるケースが多く、医療よりも暮らしに密着したものであるので、高齢者の医療と介護の利用者負担を同列に扱うことは適切ではないと考えています。

しかし、2015年度の介護保険制度改正で2割負担が導入される際の想定では、その対象となる高齢者は約20%と予測されていたものの、実際には2割負担者が約4.9%、3割負担者が約3.9%、合計で9%弱(※2)にとどまっているという実態もあります。

また、近年の政府の政策方針は「(高齢者であっても)能力に応じた負担を求める」という基盤に立っています。さらに、2021年度介護保険制度改正の際の高額介護サービス費の自己負担上限額の見直しのように、近年の利用者負担は医療保険・後期高齢者医療制度に倣って見直されている先例もあります。こうしたことを考えると、少なくとも2割負担の所得基準の引き下げを求める声が大きくなるのは確実ではないかと推測できます。

※1 財政制度等審議会「財政健全化に向けた建議」(2021年5月21日)P47〜48

※2 厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)令和3年4月分」をもとに筆者が算出