コロナ禍で情勢は変わった どうなる居宅介護支援の自己負担導入 賛否両論をみる【石山麗子】

《 国際医療福祉大学大学院・石山麗子教授 》

介護保険制度は3年1クールで運営されています。制度改正も平成15年以降は3年に1度、計7回行われました。【石山麗子】

次期改正に向け、今年3月24日から介護保険部会が始まりました。例年どおりに進められるなら議論の順番は、まず法改正事項(令和4年)を、それから報酬改定事項(令和5年)となります。制度の方向性や法改正事項については、今年12月には結論が出るでしょう。まさに目が離せません。

制度改正に関する議論と聞けば、目新しい議題をイメージするかもしれませんが、実は過去の積み残し事案も併せて議論されます。居宅介護支援の主な議題の1つに、「給付と負担の見直し」として利用者負担導入があります。

今年3月の部会でも委員からさっそく意見が出されました。継続審議事項の現在の議論を理解するには、前回の議論のポイントを頭に入れておくと、よりスムースです。

部会が取りまとめた令和元年12月の意見書には、賛成・反対の両方の立場の委員が存在していること、両方の意見があったことが記録されていました。

 

■ 利用者負担導入に慎重な立場の主な意見

・サービス利用を控える人が出ないよう今後も10割負担を維持していくべき。

・利用者や家族の言いなりにならないか。セルフケアプランが増加し自立につながらないといった課題がある。

・ケアマネジャーは保険者の代理人を担う立場ともいえ、利用者負担を求めることになじむのか疑問。

 

■ 利用者負担導入に積極的な立場の主な意見

・ケアマネジャーが保険者の代わりなら利用者負担は不要だが、介護サービスの一部なら負担を求めることは適当。ケアマネジャーが保険者の代理人なら市町村は、ケアマネジャーの質を評価する必要がある。

・中小企業、現役世代の負担は限界に達しているため確実に導入すべき。

・ケアマネジャーの処遇改善を図るのなら財源確保のために導入すべき。

・現役世代の理解、利用者本位、質の高いケアマネジメントの観点から導入すべき。

 

今後の議論を理解するにあたり、1つおさえておきたいことがあります。令和3年度改正に向けた部会は、新型コロナウイルスの感染拡大前に完結していました。前回の意見は参照しつつ、ガラリと変わった社会情勢を踏まえ、注意深く検討していく必要があります。