軽度者の給付費をケチるとしっぺ返しにあう 要介護1・2の生活援助の給付外しは失策!【結城康博】

《 淑徳大学・結城康博教授 》

4月13日の財務省の審議会で、第9期介護保険事業計画期間から要介護1・2の高齢者に対する訪問介護、通所介護も総合事業へ移していくべき、と提言された。【結城康博】

次の2024年度の制度改正をめぐる大きなテーマとなっている。特に、生活援助(訪問介護)は狙い撃ちと言っていいだろう。

もっとも、制度改正議論のたびにこのテーマが取り上げられるが、これまで実現には至っていないため、今回も「継続審議か…」と考えている人もいるに違いない。ただ、夏の参院選後にどんな展開になるかは誰にも分からない。念の為、ここで改めてはっきりと言っておくことにする。

仮に財務省の提案通り「生活援助」が介護給付から総合事業に移行したら、在宅介護はますます「机上の空論」への途を歩むことになるだろう。なぜなら、総合事業化によってサービスの提供時間や質の低下を招き、独居高齢者や老夫婦の在宅介護は危機的状況に陥るからだ。

素人目には、たかが「生活援助」は「買い物」「掃除」「洗濯」など家事援助と同程度のサービスで、地域住民の「有償ボランティア」で充分だと思うだろう。

しかし、認知症ケースや家族関係の不調和、セルフネグレクト的な要介護者への対応など、介護給付によって専門職が携わる重要性があるはずだ。しかも、「自立支援」に向けた軽度の要介護者の「志気」を促すのは専門職でないと難しい。まして、地域の有償ボランティア自体が総体的に不足している。

たとえ、専門職のヘルパー(訪問介護員)が携わるにしても、総合事業化してしまえば報酬、もしくは事業費単価が抑えられ、事業所の収入が目減りすることで、ヘルパー離れが加速化し、人材不足に拍車がかかる。

そうなれば、要介護1・2の在宅要介護者のサービス保障が危ぶまれ、ますます重度化してしまい、中長期的には給付費の増大を招いてしまう。短期的に軽度者への給付費を「ケチ」ることで、思わぬしっぺ返しを食らうだろう!

筆者は、2015年制度改正をめぐる議論に審議会の委員として携わった身として、そもそも総合事業の政策評価がなされていないにもかかわらず、要介護1・2を総合事業へ移行させるのは「乱暴」であると考える。

むしろ、そろそろ国も総合事業の不成功を認め、政策転換する時期が来たのではないだろうか。「従前相当」サービスの状態化、「事業費の上限超過」の自治体の多さ(その他理由で259自治体)などをみれば、うまくいっていないことは明らかと言わざるを得ない。介護関係者であれば誰もが感じているはずだ。

コロナ禍といえども、2020年度の一般会計決算概要によると、国税収入は約60.8兆円と、2018年度の60.3兆円を上回り、2年ぶりに過去最高となっている。介護保険の要介護1・2の「生活援助」ごときを「ケチ」ることもないのではないだろうか!