能力が高い介護福祉士の給与アップを提案 社保審・介護保険部会

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社会保障審議会 介護保険部会(第99回 10/17)《厚生労働省》

社会保障審議会・介護保険部会は17日、次の介護保険制度改正に向けて介護人材の確保や現場の生産性向上の推進をテーマに議論した。人材確保策の一環で、介護福祉士を介護職のグループリーダーとして育成する方向性に複数の委員が賛同した。高い能力を持った介護福祉士の給与を引き上げる仕組みづくりを提案する委員もいた。部会では、年末に取りまとめを行う。

介護人材を確保するため、今後は人材育成への支援や職場環境の改善による離職防止、外国人材の受け入れの環境整備などを総合的に実施する必要がある。厚生労働省は2021年度から、他業種からの参入に向けた就職支援を実施している。

ただ、多様な人材が参入する中、介護ニーズに対応するためには介護福祉士を介護職グループのリーダーとして育成することが求められている。こうした状況を踏まえ、厚労省は17日の部会で育成のための方策などを論点に挙げた。

議論では、介護福祉士をグループリーダーとして育成することに異論は出なかった。東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)も賛同したが、現行の認定介護福祉士や介護プロフェッショナルキャリア段位制度では給与面での対応がなされていないため、結果的に実効性が伴っていないと指摘した。

その上で、高いスキルや能力を備えた介護福祉士を評価して給与アップにつなげる仕組みの導入を要望。その評価指標は、介護士としての高い能力のほか、指導力や業務マネジメント能力、多職種協働における役割の遂行能力とし、これらを高い水準で満たした介護福祉士の賃金を引き上げるという内容で、そのための処遇改善加算の新設も提案した。

東委員は「年収700万-800万円の『トップ・オブ・ザ・介護福祉士』が生まれるかもしれないし、介護福祉士の社会的地位の向上にもつながる」と、この仕組みの意義を強調した。

日本介護福祉士会会長の及川ゆりこ委員も、マネジメント研修などで学んだ経験のある介護福祉士を評価する仕組みの導入を求めた。

17日の部会では、介護事業所などでのいわゆる「介護助手」の確保や役割を果たしてもらうための方策も論点となった。

現場のタスクシェア・シフティングの観点から、現場で介護助手を積極的に活用していく方向性に異論はなかった。ただ、介護助手についても給与の低さを問題視する意見があった。また、活用を後押しするため、介護助手を多く雇用している施設や事業所を介護報酬で評価すべきだとの指摘もあった。

介護助手は、介護職員との業務分担によって身体介護といった専門的な業務以外の周辺業務を行う人材。例えば、ベッドメイキングや食事の配膳などのほか、施設系では清掃、通所系なら送迎といった業務を担う。

現場で介護助手を活用することにより、生産性やケアの質が向上すると期待されている。また、担当の業務範囲の整理を適切に行うことで、活用の効果がさらに高まると考えられている。