同時改定で地ケア病棟の高齢者の受け入れを促進 厚労省方針

イメージ画像

令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会(第1回 3/15)《厚生労働省》

2024年度に行われる診療報酬と介護報酬の同時改定に向けて、中央社会保険医療協議会・総会と社会保障審議会・介護給付費分科会の委員による意見交換会が15日に開かれ、厚生労働省は、誤嚥性肺炎など高齢者の急変に対応するため、地域包括ケア病棟や介護施設による対応を推進する方針を示した。

急性期一般病棟の入院患者に占める高齢者の割合が年々上昇しているため、地域包括ケア病棟や介護医療院、介護老人保健施設による急変への対応を促すことで、急性期の入院医療を効果的・効率的に提供できるようにするのが狙い。

厚労省は、21年4月から22年3月にかけて介護施設・福祉施設から病院に入院した約66万症例のうち、急性期一般入院料を算定する病棟への入院が75%を占めることを示すデータを出した。看護配置が手厚い急性期一般入院料1の病棟では全体の44%を受け入れている。

また、社会医療診療行為別統計のデータでは、急性期一般入院料(17年までは7対1か10対1入院基本料)の算定患者に占める「85歳以上」の割合が12年以降上昇し続けていることが分かった。21年には、急性期一般入院料の患者の64%が「75歳以上」だった。

一般病院への入院が要介護度を悪化させる原因になっているという報告もあり、厚労省は、急性期病院が提供できる医療と高齢者に必要な医療の内容にミスマッチが生じている可能性を指摘した。

中医協の長島公之委員(日本医師会常任理事)は意見交換会で、要介護の高齢者に急性期医療を効率よく提供するため「最も重要なのは、介護が必要な患者は回復期の医療機関で受け止め、急性期の医療機関では、急性期医療を受けるべき患者のために必要な医療体制を確保することだ」と述べた。

一方、介護給付費分科会の田中志子委員(日本慢性期医療協会常任理事)は、「今後は介護を要する患者がこれまで以上に増える。看護師の補助だけでなく、入院患者の介護を担う人材を配置する方向へ大きく舵を切る時期だ」と指摘した。

松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、地域包括ケア病棟で高齢者の急変に対応するため、急性期病棟からの転院・転棟の受け入れに偏らないよう施設基準を厳しくすべきだと主張した。

意見交換会は、24年度の改定を巡る本格的な議論に先立ち、5月にかけて3回開く。高齢化と人口減少が進む「ポスト2025」に向けて、医療と介護が抱える課題や解消の方向性を関係者で共有するのが目的で、同時改定の方針は決めない。

15日の初会合は、▽要介護状態などの高齢者に提供する急性期の入院医療▽地域包括ケアシステムの整備を進めるための医療・介護・障害サービスの連携▽リハビリテーション・口腔・栄養-の3つがテーマで、中医協と介護給付費分科会から計14人が参加した。

急性期入院の課題として、厚労省は、医療のミスマッチ解消のほか、高齢者の入退院支援を円滑に行うための情報提供・連携や、医療・介護の人材確保などを挙げた。人材不足を巡っては、高齢化がピークを迎え、介護ニーズが高まる40年に介護職員約69万人の不足が見込まれ、国は処遇改善や人材育成などを進める方針。