介護報酬の訪問看護、ターミナルケアなど推進へ 厚労省方針

社会保障審議会 介護給付費分科会(第220回 7/24)《厚生労働省》

社会保障審議会・介護給付費分科会が24日に開いた会合では、厚生労働省が、医療ニーズの高い利用者が訪問看護で増えているとしてターミナルケアなど専門性の高いケアの提供を促す方針を示した。看護職員の不足が深刻化する中、分科会の委員からは、質の高いサービスを効率的に提供するため、特定行為研修の修了者の活用や、訪問看護ステーションの一層の規模拡大を進めるべきだという意見があった。分科会では、2024年度の介護報酬改定に向けて引き続き議論する。

介護給付費分科会はこの日、24年度の介護報酬改定に向け、訪問看護など訪問系のサービスの見直しを議論した。

厚労省によると、訪問看護サービスの利用は年々増加し、22年4月には約69万人が利用していた(同月審査分)。ただ、利用者全体に占める要介護度別の割合の推移を見ると、09-22年には要支援1-要介護2の占める割合が大きくなる一方、要介護5の割合は縮小している。

供給では、介護保険と医療保険双方の訪問看護ステーションが近年増えているものの、介護保険の訪問看護を行う病院・診療所は減少傾向が続いている。

また「特別管理加算」「緊急時訪問看護加算」「ターミナルケア加算」などの算定が年々増加していることも分かっていて、厚労省は、医療ニーズの高い在宅療養者の増加が背景にあるとの見方を示した。

ただ、「退院時共同指導加算」の算定は21年、22年と2年連続で大幅に減少した(いずれも4月審査分)。この加算は、医療機関や介護施設に入院(入所)している人に対し、在宅で生活するのに必要な指導を行う訪問看護ステーションへの評価。厚労省は、新型コロナウイルスの感染が拡大し、退院前カンファレンスの開催を見合わせる医療機関が増えたことが大幅な算定減につながったとみている。

それらを踏まえて厚労省は、訪問看護サービスには専門性の高いケアが必要な人の療養生活を支える機能が求められるとして、医療機関を退院した直後からの支援や緊急時の対応、ターミナルケアなどの効率的な提供を24年度の改定で促す方針を示した。

田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)は、意見交換で、認知症や摂食嚥下障害、がん、褥瘡など医療ニーズの高い高齢者を訪問看護でカバーできるようにするため、認定看護師や特定研修修了者の活用を介護報酬で後押しするよう求めた。また、新型コロナの感染対策を取りながら訪問看護ステーションが退院前後の支援を行えるように退院時共同指導加算の評価の充実も訴えた。

田中志子委員(日本慢性期医療協会常任理事)も、医療への依存度が高い利用者をフォローするため特定行為研修修了者など専門性の高い看護師の配置を評価するよう求めた。