ケアマネ実務にも大きく影響⁉ 社会福祉士受験者の減少が意味するもの

2024年度の社会福祉士国家試験では、受験者数が前年度の約34万5,000人から約27万6,000人と7万人近く急減しました。合格率は50%超えなので、合格者数は2021年度以前より伸びていますが、このまま受験者数が減少傾向となる場合、相談支援の現場への影響はどうなっていくでしょうか。

社会福祉士受験者数減少の背景にあるもの

社会福祉士の養成課程については、2021年度から教育カリキュラムが見直され、その内容の国家試験への反映は、2024年度試験からです。今回の受験者数の減少が、こうした事情によるものかどうかは定かではありません。

ただし、ソーシャルワークの実習にかかる時間が増えたり、精神保健福祉士との共通科目が拡充されるなど、さまざまな見直しが受験動向に影響を与えた可能性はあります。

カリキュラムの見直しといえば、2024年度からケアマネの実務研修や更新研修などでも行われました。ケアマネの場合は、実務研修受講試験後に新カリキュラムにのぞむこととなるので、受験動向に与える影響は社会福祉士ほど大きくないかもしれません。

ただし、いずれも実務面で「求められる知識・スキル」の範囲が見直される流れに沿っていることに違いはありません。時代や制度の変遷とともに相談支援のニーズが変わりゆく中、そこに携わる専門職育成のあり方も見直されゆくという状況があるわけです。当然、これから相談支援職を目指す人々の専門性のとらえ方も、一定の変化が見込まれます。

そうなれば、多かれ少なかれ「どのような職業人生を歩むべきか」についての戸惑いも膨らみがちとなるでしょう。社会福祉士について言えば、それが国家試験の受験者数に影響を与えたという仮説も浮かびます。

ケアマネと社会福祉士の連携基盤も揺らぐ?

ちなみに、社会福祉士もケアマネも、2024年度試験では合格率の上昇によって合格者の減少は抑えられています。ケアマネに至っては、2018年度の受験者数の急減以降でもっとも多い合格者数となりました。

問題は、参入意向を示す人材の減少は、相談支援のマンパワーのすそ野が狭くなることを意味することです。この傾向が一過性でなく今後の試験でも続き、将来的な若年人口の減少も加味すれば、国民の困りごとに応えるための制度もぜい弱になりかねません。

加えて、ケアマネと社会福祉士の両方の参入傾向がともに低下すれば、両者の連携基盤も弱くなり、わが国における相談支援の機能が相乗的に損なわれる恐れもあります。

たとえば、社会福祉士の就労先(2020年・社会福祉振興・試験センター調べ)を見ると、分野別では高齢者福祉関係が39.3%でトップですが、機関では病院・診療所が14.4%でもっとも多くなっています。

介護保険利用者の高齢化によって医療ニーズがさらに高まることを想定すれば、ケアマネとMSWとして勤務する社会福祉士の連携は、多職種連携の中でも軸の1つとなるのは間違いないでしょう。その部分が揺らぐとなれば、介護・医療含め、社会保障のしくみ全体が危機に陥ることになりかねません。

「学び」のブラッシュアップと「処遇」議論

先のカリキュラム見直しの話に戻れば、社会状況が変化する中で、ソーシャルワークにおける「学ぶべきこと」のブラッシュアップは確かに必要です。また、そのブラッシュアップが完成・浸透していけば、「受験者数は増える」という見方もあるかもしれません。

しかし、担い手の立場からすれば、「ブラッシュアップをかけるのであれば、それに見合った処遇が必要」と考えるのが自然です。そのバランスを整えないまま、カリキュラム変更だけを先行させれば、将来を担う若い人材が不安を抱えざるを得ないのは当然でしょう。

なぜなら、さらなる時代変化で「学ぶべきこと」のブラッシュアップが重ねられるとして、「やはり処遇にかかる措置は後回しになる」という疑念が付きまとうからです。

この処遇への懸念に関しては、ケアマネもさることながら、医療機関や包括、障害福祉関連機関に就労する社会福祉士も同様でしょう。特に重層的支援体制整備事業等により、ワンストップ的な相談支援機能が求められる時代では、社会福祉士の業務負担と処遇のバランスは不安定になりがちです。

2040年に向けた体制づくりに必要なこと

折しも、2027年度の介護保険制度見直しに向けた介護保険部会では、「地域包括ケアシステムにおける相談支援等のあり方」の議論が先行しています。特に今期は、「介護保険だけではカバーできない課題」にどう対処するかが大きなテーマとなっています。

その入口となる相談支援において、ケアマネと多機関勤務の社会福祉士との連携は今まで以上に重要です。この両者の成り手が加速的に縮小するとなれば、国が掲げる「2040年に向けた体制づくり」も、しくみは築いても「絵に描いた餅」になる懸念は続くでしょう。

専門職の処遇は、実務負担との関係は考慮されても「学び」の部分での負担はあまり反映されてきませんでした。仮に時代変化で「学び」が大きく変化するのなら、そのバランスも考慮されてしかるべきでしょう。ケアマネと社会福祉士の各資格をともに持つ人もいる中では、そうした立場からの問題を提起していくことがますます必要になりそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。