「あの坂道が、のぼれる」電動アシスト歩行器とは? その活用方法について解説

電動アシスト歩行器は近年注目を集めている介護ロボットです。存在を知ってはいるものの詳しくはわからない、ご家族に利用を薦めるためにも実際の導入事例や安全な活用方法を知りたいというケアマネジャーさんは多いのではないでしょうか。そんなケアマネジャーさんに向けてRT.ワークス株式会社では、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の電動アシスト歩行器事業に研究者として携わった東京大学 大学院医学系研究科 在宅医療学講座 特任准教授の山中崇先生を講師に迎えた電動アシスト歩行器活用推進セミナーを開催しました。

こちらの記事ではセミナーで解説した電動アシスト歩行器の概要や、導入事例と効果、注意事項の解説、電動アシスト歩行器「RT.2」を例とした詳しい使い方をまとめています。

記事中には導入ケアマネジメントのポイント解説や現場で活用できるケアプラン事例の掲載もありますので、ぜひ最後までご覧下さい。

電動アシスト歩行器とは

電動アシスト歩行器の例(RT.2)

電動アシスト歩行器は、歩くことを補助する機能が付いた歩行器で介護ロボットの一種です。介護ロボットは自立支援による高齢者の生活の質の維持・向上や介護者の負担軽減の実現を図るもので、電動アシスト歩行器は経済産業省・厚生労働省の示す「ロボット技術の介護利用における重点分野(移動支援分野)」としても位置づけられています。

歩行器は、杖では安定した歩行が難しいという方に利用されている福祉用具です。しかし、従来のものでは坂道を上ること・下ることが難しかったり、介護度が高くなったりすると利用できなくなるなど制限がありました。電動アシスト歩行器ではロボット技術を活用することで、こうした制限を減らし、利用の幅を広げています。

介護保険が適用されます

2016年4月の介護保険法改正により、電動アシスト歩行器も介護保険レンタルの対象となりました。具体的には、上り坂のアシスト機能、下り坂での制御ブレーキ、傾いた道での片流れ防止機能、つまずきなどによる急発進防止機能の4つの機能が付いているものが、介護保険レンタルの対象となります。

電動アシスト歩行器が必要な方は、介護保険を利用して自己負担1割(所得に応じて2割または3割)でレンタル可能です。

一般的な歩行器との違い

電動アシスト歩行器と一般的な歩行器が大きく異なるのは、モーター(駆動系)やCPU(知能、制御系)、センサー(センサー系)が搭載されている点です。

電動アシスト機能の説明

この電動部分には4つの基本機能が搭載されており、利用者の移動をより安全にしてくれます。

・アシスト機能

アシスト機能

上り道では、自動的にパワーアシストが働くので、利用者は軽い力で坂道を上ることができます。 このアシスト機能により、高齢者の方でも本体の重さを意識せずに押すことが可能です。

・ブレーキ機能

ブレーキ機能

坂道で危険が伴うのは下り道です。下り道では自動的にブレーキが働きます。自動車を運転する際に、下り道でエンジンブレーキがかかるのをイメージするとわかりやすいでしょう。下り道で勢いがついてしまうのを抑え、ゆっくり歩くことを助けるので、転倒予防になります。

・片流れ防止機能

片流れ防止機能

坂道を横断する際など、傾いた道ではどうしても重力に負けてしまい、下っている方にハンドルが取られてしまうことも。片流れ防止機能ではセンサーが路面を検知し左右のモーターを制御します。これにより、ハンドルが安定するので、まっすぐに進むことができます。

・急発進防止機能

急発進防止機能で転倒防止

道で石につまずいてしまったり、パーキンソン病の突進歩行が出てしまったりした際には、減速ブレーキで急発進を防止して転倒を防ぎます。制限速度は利用者にあわせて個別に調整可能です。

電動アシスト歩行器の利用対象者

厚労省の「介護給付等実態調査の概況(平成29年度)」によると、一般的な歩行器を使っている方は要支援1・2、要介護1、要介護2までの方が多くを占めています。一方で、要介護4は6%、要介護5の方は1.6%と介護度の高い方の利用は非常に少数です。

 

では、電動アシスト付歩行器の場合はどのような方が利用対象となるのでしょうか。

検証結果から見る対象者層

講師の山中先生が参加した、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「ロボット介護機器の科学的効果検証研究(平成30年度)」より、電動アシスト歩行器の導入運用に関する検証結果を見てみましょう。

電動アシスト歩行器の導入運用検証結果(年齢別、疾患別割合)

検証に参加したのは、57歳から101歳までの51名です。年齢階級別対象者数のグラフでは、平均年齢が80歳、全体では50代から100歳を超える方まで幅広い年齢の方が電動アシスト歩行器を使用していました。

疾患別の割合では廃用症候群、骨関節疾患、脳血管疾患、骨折、パーキンソン病、それ以外の神経疾患の方が多いという結果になっています。これらのグラフからは、年齢や疾患などにより足腰が弱くなった方に電動アシスト歩行器が選ばれているということが読み取れます。

介護度別の使用割合を福祉用具貸与種目別にみた要介護(要支援)状態区分別件数の割合 歩行器(平成30年4月審査分)との比較

さらに、この検証結果を「介護度別の使用割合を福祉用具貸与種目別にみた要介護(要支援)状態区分別件数の割合 歩行器(平成30年4月審査分)※」と比較してみると、電動アシスト歩行器では要介護4・5の方の使用率が、19.2%となっており、一般的な歩行器と比べて介護度が高い方の利用が多いことがわかります。

これらの検証結果からわかるように、これまで歩行器が利用できなかった方や要介護度が進んだ方でも、電動アシスト歩行器であれば、「自分の足で歩く」チャンスが開かれているのです。

歩行器の選定について

電動アシスト歩行器は一般的な歩行器よりも対象者の幅が広くなりますが、歩行補助具を選定するときには歩行能力、身体機能、生活上の目標、利用環境などを総合的に判断して選ぶ必要があります。

もちろん、最終的に決定するのは本人や家族ですが、介護職や医療職の助言は大変重要です。 歩行補助具を選ぶ際には、①歩行能力②身体機能③生活上の目標④利用環境の4つの観点から利用者の状態を確認すると、どんな歩行補助具が適切なのかの判断がしやすいでしょう。

歩行補助具の選び方

電動アシスト歩行器の場合は、歩行能力の低下が軽い方と進行している方の両方が対象です。

 

長い距離を歩いたりや荷物の運搬がある場合、生活環境に坂道や傾斜地などがある場合には歩行能力の低下が軽い方でも活用できますし、歩行能力がある程度低下した方でも、上肢で体重を支えることができれば、電動アシスト歩行器の利用対象になります。

自分の足での外出をあきらめる前に、電動アシスト歩行器の導入を検討してみると良いでしょう。

状態別に見る電動アシスト歩行器の利用対象者

では、実際に電動アシスト歩行器を利用しているのはどのような状態の方なのでしょうか。 理学療法士などのリハビリ専門職から指導や支援を受けている要介護度の比較的高い方と支援を受けていない要介護度の低い方の2つのケースに分けて利用者の例を見てみましょう。

理学療法士などのリハビリ専門職の支援を受けているケースの対象者

専門職の支援を受けているケースでは、以下のような方が想定されます。利用する際には、医師や理学療法士、作業療法士から適切な指導を受けながら、安全、効果的に利用しましょう。

●下肢筋力が軽度から中等度低下して移動支援機器を必要とする方

  • 骨関節疾患のために歩行補助具を必要とする方
  • 脳血管疾患のために軽度の麻痺や失調がある方
  • 疾患や外傷からの回復過程で歩行障害を有する方
  • 閉じこもりの方
  • 廃用症候群の方  など

 

●疾患があって病院や施設から在宅に復帰する方

  • パーキンソン病がある方(突進歩行症状の抑制が必要な方)
  • 様々な疾患で廃用症候群を認める方
  • 高齢や疾患、外傷などにより下肢筋力が低下している方
  • 変形性の膝関節症や腰痛がある方 ‐がん疾患患者 など

理学療法士などのリハビリ専門職の支援を受けていないケースの対象者

専門職の支援を受けていないケースでは、原則として健康状態や利用環境による制約に留意して、自由に利用することができます。例えば、以下のような方は、電動アシスト歩行器を利用するとことで歩行や外出の範囲を広げることができるでしょう。

  • 筋力が低下傾向にあり歩行に不安がある方
  • 買い物など日常の行動範囲を広げたい方
  • 行動範囲に坂道などがあり、一般的な歩行器では実用的な移動が困難な方
  • 買い物に行くお店が遠い方
  • 重い荷物を運びたい方
  • 電動アシスト歩行器を使っていきたい場所がある方 など

電動アシスト歩行器の活用方法とその効果、注意事項など

これまでに説明した通り、電動アシスト歩行器は要介護度が低い方から要介護度の進んだ方まで幅広く利用できる可能性があります。ただし、実際に導入する上では、注意事項を理解しておく必要があります。

要介護度が高い方と低い方では、期待できる効果と注意するべきポイントが異なります。

先ほどと同様に、理学療法士などのリハビリ専門職から指導や支援を受けている要介護度の比較的高い方と、専門職の支援を受けていない要介護度の低い方のケースに分けて期待される効果と注意事項を確認していきましょう。

理学療法士などのリハビリ専門職の支援を受けているケース

活用の方法

このケースで考えられるのはリハビリテーションの訓練ツールとして利用できる可能性です。リハビリテーションの自主訓練する場合、介助者の支援を得ながら訓練する場合、専門職と一緒に訓練する場合など、様々な使い方があります。

期待される効果

  • 歩くことで身体機能維持につながる
  • 歩行機能が維持される
  • 骨格筋量が維持
  • 増加する可能性がある
  • 生活の自立と社会参加が拡大する

注意事項

電動アシスト歩行器を利用するときの注意事項や最適な利用方法は、利用者の状態により異なります。担当の専門職と相談しながら、安全で効果的に利用しましょう。 特に以下のような方には、注意が必要です。

・下肢の筋力低下が高い方

転倒リスクが高くなるため使えない方もいます。

・脳血管疾患の後遺症で片麻痺がある方

麻痺による左右差が非常に強い場合には上手に使えないことも想定されます。

・歩行機能障害が非常に高い方

バランスが取れずに転倒するリスクが高くなるため注意が必要です。

・上下肢、膝や腰の痛みが強い方

痛みが最も強いときには歩行器を使うこと自体が難しいため、痛みをコントロールしてから使う必要があります。

・認知機能が低下している方

ご自分では使えると思っていても、安全に使うことが難しい場合があります。専門職と相談をして、使えるかどうかを判断していくことが必要です。

 

利用者の心身の状態を考慮して安全に使いましょう。導入時に注意が必要ではない人と判断された場合でも、状況によって利用を中止する必要が出てくることもあります。

リハビリテーションの専門職が治療上の注意事項を確認し歩行能力を評価することは、安全・効果的な利用のためにも大切です。転倒リスクが高い方が利用する場合には、リハビリテーションのときに誰かの見守りの下で使うなど限定的に使ってみて、大丈夫かどうかを見極めると良いでしょう。 また、安全な利用に向けて環境などの確認も大切です。

▼利用環境などについての主な確認項目

  •  通路幅、通行幅は確保できているか(ドア、門、玄関、廊下など)
  •  道路の傾斜は問題ないか
    • 縦断勾配 12%、傾斜 7 度以下
    • 横断勾配 5%、傾斜 3 度以下
  • 乗り越えられない段差がないか(最大段差:約 3cm まで)
  • 行動範囲や目標とする目的地までの道のりに危険はないか
    • 距離や段差、片流れによる転倒リスクを確認する
    • 踏切、側溝などの車輪挟まる可能性のある場所を確認する
  • 疾患、特に状態が変動しやすく日によってまたは時間帯によって身体機能が変化する場合は注意する
  • その他、在宅支援チームのアドバイスに沿って利用方法や利用範囲を明確に決める

効果の見られた事例

ここで、理学療法士などのリハビリ専門職の支援を受けているケースのうち電動アシスト歩行器の利用に効果が見られた事例をいくつかご紹介します。

 

●筋量以外に認知機能や抑うつスコアにも改善が見られた例

対象者:80歳男性、B1~2相当のパーキンソン病で障害が少し進んでいた方

トイレへの移動以外はほとんどベッド上で過ごしていましたが、訪問リハビリで電動アシスト歩行器を使った歩行訓練を導入。訓練により筋量が増えただけではなく、認知機能、抑うつのスコアが改善しました。次はどこに行きたいと、自主的に目標をどんどん引き上げることができ、最終的には屋外の歩行もできるようになりました。

 

●電動アシスト歩行器の活用で体の機能が維持できた例

対象者:84歳女性、骨粗しょう症

転倒して骨折し、手術を受けた後に、回復期リハビリテーション病棟にて電動アシスト歩行器を使った機能回復訓練を実施機能回復訓練で体の機能が回復した後、自宅に戻ってからも電動アシスト歩行器を使うことで機能を落とさずに生活ができました。

 

●電動アシスト歩行器で身体機能の回復をサポートできた例

対象者:69歳女性、小脳出血で入院

回復期リハビリテーション病棟を退院後に、電動アシスト歩行器を利用。入院中に回復した身体機能が維持・向上して、3ヶ月ほど経ったころには歩行器が必要なくなるほど歩けるようになり、利用を終了しています。

 

専門職の指導・支援を受けている方の場合は、目指ものがあると、モチベーションや意欲につながりやすいようです。歩行器利用に向けた動機付けや短期的・長期的な目標設定と共有ができると良いでしょう。

理学療法士などのリハビリ専門職の支援を受けていないケース

活用の方法

こちらのケースで考えられるのは、普段は杖やシルバーカーを利用している方が買い物などで重い荷物を運んだり、自宅の近隣や外出先などの屋外で利用したりするなど、活動量の増加・社会参加の増加・自立度の向上を目指す活用方法です。

電動アシスト歩行器を用いた状態では、電車やバスに乗るのは難しいことが多いですが、支援者がいたり、バリアフリー化されていたりするなどの条件が整えば、利用できる可能性はあります。したいこと、行きたい場所がある場合には、最初から諦めずにどうしたら実現できるかを検討してみましょう。

期待される効果

  • 普通の歩行器から電動アシスト歩行器に乗り換えることによって、より長い距離を歩行することができる
  • より長い距離を歩行することで、生活範囲の拡大や社会参加の拡大が期待できる
  • 長期的に利用することで、廃用性変化の進行を防止できる可能性がある

注意事項

導入時に問題はないと考えられた場合でも、念のため身体機能や認知機能をチェックしていただくと安全な利用に繋がります。

効果の見られた事例

理学療法士などのリハビリ専門職の支援を受けていないケースで電動アシスト歩行器の効果が見られた事例としては、以下のようなものがあります。

●電動アシスト歩行器で生活の利便性を向上した例

対象者:要介護未認定で、普段は杖やシルバーカーを利用している方

買い物などで重い荷物を持って歩くために電動アシスト歩行器を利用。生活の場面により福祉用具を使い分けることで、生活の利便性が向上しました。

 

●これまで自力で行けなかった場所に行けた例

対象者:散歩の途中で坂道がある川の土手沿いを歩くという方

電動アシスト歩行器で坂道を上る写真電動アシスト歩行器で乗り越えられる段差の例

電動アシスト歩行器を使うことで、写真のような自力歩行で行けなかった上り坂や下り坂がある散歩コースでの散歩が可能に。横断歩道などの段差(3センチ程度)も安定して乗り越えることができ、自力で行ける場所を増やすことができました。

 

●歩行器導入を悩まれていた方の例

対象者:日常生活自立度はA1からA2相当で、両手に杖を持ちながら歩行していた方

転倒の不安から外出を控えていましたが、デイケアの開始とともに電動アシスト歩行器を利用開始。それまでは周囲から障害が進行していると思われることを気にして歩行器の利用を懸念していましたが「スタイリッシュでかっこいいから使ってみたい」と思ったことが利用のきっかけになりました。電動アシスト歩行器の利用中は、転倒することなく歩行できました。

 

「RT.2」の有用性を検証する研究では、使用前と比べて使用3ヶ月から6ヶ月後に全体として筋量増加が見られるという検証結果が得られており、電動アシスト歩行器を使って歩くことが筋肉を保つことに有用であることが示されています。この論文では他にも、筋量が保たれたことで、社会的な参加活動が向上するという結果も得られており、歩行の補助以外の効果も期待できるでしょう。

※出典:Yamanaka T, Kidana K, Mizuki M, Matsui T. Effectiveness of Servo-Assistive Robotic Rollator (RT.2) Among Older Adults Living in the Community, Innovation in Aging, Volume 4, Issue Supplement_1, 2020, Page 193.,

電動アシスト歩行器の利用継続について

専門職の支援を受けている場合もそうでない場合も、電動アシスト歩行器が安全に利用できているか、問題点がないかを定期的な確認は必要です。1~3ヶ月ごとに理学療法士、作業療法士などのリハビリ専門職が利用状況を確認してください。上手に使えていない場合、機器の設定がうまくできていない可能性がありますので利用方法に合わせた機器の設定を再検討してみてください。また、操作方法を指導することでも問題を解決できる可能性があります。利用状況に問題が見られる場合には、解決策やより良い利用方法をアドバイスしましょう。

 

 身体機能の低下により転倒したり、歩行が不安定になったりしたときには、これらの引き金がどこにあるかを医師と相談してみましょう。例えば、薬剤が原因で転倒やふらつきが生じていることもあります。認知症の進行が原因で安全な利用ができていない場合には、「支援者が一緒にいるときだけ使う」「危ない場所では使わない」などのルールを提案しても良いでしょう。

 

機器の利用が適切かどうかは、かかりつけ医や福祉用具専門相談員、理学療法士、作業療法士などの専門職に定期的に相談してください。

在宅支援チーム間の連携とケアマネジメントのポイント

ケアマネジャーだけで抱え込まない

電動アシスト歩行器の導入時には、安全な利用に向けて身体機能と認知機能を確認することや生活環境で有効に活用できるかどうか、何に注意するべきかを確認することが必要です。ケアマネジャーは、リハビリ専門職や福祉用具専門相談員の力を借りて確認すると良いでしょう。かかりつけ医やリハビリテーション医に相談をして、客観的に使えるかどうか判断をしてもらうと、より安全に利用することができます。

ケアマネジャーだけで抱え込まずに、いろいろな職種と相談しながら連携をして導入し、利用を支援することが大切です。特に疾患を持っている方の場合には、リハビリテーション職が要(かなめ)になるでしょう。

在宅支援チームの連携イメージ

リハビリテーション職(理学療法士、作業療法士)には、利用者の生活の目標、身体機能、生活環境などを総合的に評価して、電動アシスト歩行器利用の必要性を判断し、最も適した設定、使い方を検討してもらうようにしましょう。 総合的に評価するためのポイントは次の3つです。

  • 下肢筋力、平衡機能、腰背部・下肢痛、気分などを評価して、利用時の注意点を明確にする
  • 視覚や認知機能のリスクを事前に評価して、電動アシスト歩行器利用の可否および支援者の必要性を検討する
  • 睡眠薬など、服用している薬剤も確認する

大切なのは目標の設定

電動アシスト歩行器を使う場合には、「これを使って何がしたい」「どこに行きたい」「どういうことができるようになりたい」という目標の設定が非常に大切です。いきなり高い目標を立てても、達成するのが難しいこともあるでしょう。途中で諦めてしまわないためにも高い目標は「叶えたい夢」として設定し、その手前の短期的な目標、中期的な目標からひとつずつクリアを目指していくことで長く・楽しく使うことに繋がります。 それぞれのニーズごとに長期目標、短期目標の一例をみてみましょう。

▼ケアプランの目標設定例

電動アシスト歩行器導入のケアプラン文例

ここで重要なのは、動機づけや具体的な目標設定を適切に行うことです。例えば、「自力でスーパーへ行って買い物をしたい」と夢を描く方の場合、最終的な長期目標は「ひとりでスーパーに行って買い物ができる」と設定します。この目標に向けて「自宅とスーパーを往復できる」、「買った商品を持ち帰ることができる」という短期目標を手前に置いて、最終的に「ひとりでスーパーに行って買い物ができる」姿を目指すというような提案をすると、利用者のやる気を引き出すことができるでしょう。

電動アシスト歩行器の導入や使い方について

続いて、電動アシスト歩行器の主な使い方を見ていきましょう。 ここでは、電動アシスト歩行器「RT.2」を例として使い方を説明していきます。

導入と使い方について

安全に使うための導入準備や使い方については、一般的な歩行器の導入と同様の部分が大半ですが、その中でも電動アシスト歩行器特有の点は

・ バッテリーや電源操作があること

・ 利用者に合わせた設定の変更が必要なこと

の2点といえます。 こちらでは2つのポイントについて詳しく見ていきましょう。

バッテリーの充電と電源操作について

RT.2 バッテリーの大きさイメージ図

バッテリーは手のひらに乗るサイズで重さは220gと非常にコンパクトで軽いバッテリーです。バッテリーの充電時間は約3時間です。利用環境やバッテリーの残量にもよって異なりますが、空の状態から約3時間で満充電になります。

1回充電すると、標準歩行パターン(上り坂や下り坂、そして平坦な道を混ぜて繰り返してあるくことを想定したパターン)で10kmほど歩くことができます。実際に利用されている方では、週に1回か2回程度の充電をされているケースが多いです。

充電器への取り付け、取り外しも簡単です。動画で手順を確認してみましょう。

バッテリーの充電はとても簡単。アダプターにバッテリーを設置し、コンセントに差し込むだけです。 コンセントに差し込むと赤いライトが点灯し、緑になれば充電完了です。

バッテリーの残量は電源ボタンの上に表示されるので安心です。ご自身で充電される場合には、忘れることが無いように帰宅後にはバッテリーを抜いて充電器にさしておき、利用時に充電器から外して電動アシスト歩行器に取り付けるようにしましょう。ご自身での充電が難しい場合には、同居のご家族や訪問ヘルパーに定期的な充電を依頼してください。

バッテリーの本体取り付けから電源を入れるまでの手順も、動画で確認してみましょう。

バッテリーの取り付けもやり方は簡単、電源の操作はバッテリーボックスの上にある電源ボタンを押すだけです。

本体にバッテリーを取り付け、電源を入れる

アシストやブレーキなどの機能は自動でかかるため、電源を入れたらそのまま一般的な歩行器と同じように使えます。一定時間止まっていると自動で電源がOFFになるので、電源を切り忘れる心配もありません。

利用者に合わせた設定の変更について

電動アシスト歩行器では、利用者の歩行能力や利用環境に合わせて、アシストの強さ、ブレーキの強さ、制限速度の設定を変更することができます。

アシストの強さ:4段階

ブレーキの強さ:4段階

制限速度:4段階(時速1.5km、時速3km、時速4.5km、時速6km)

設定ボタンは電源ボタンの横にあり、アシストを設定するときはアシストの部分にランプがつくなど、設定中の機能がわかりやすくなっています。

 

電動アシストの設定方法

 

設定は電源ボタンを押して選択し、設定ボタンを2秒以上長押しして完了です。音声でも案内してくれます。

▼身体状態・疾病別設定例

身体状態・疾病別設定例

設定強度の選び方がわからないという方に向けて、身体状態・疾病別の設定例が公開されています。

 

利用される方の症状や状態によって設定は異なるので、この資料や本人・リハビリの専門職などの意見を参考に、個人にあわせた強度を設定しましょう。

「RT.2」の公式ホームページではこうした設定方法や調節方法などがいつでも確認できるほか、設定の要点をまとめた簡単スタートアップガイドの掲載もあります。

>>「RT.2」簡単スタートアップガイドはこちら

 

また、設定方法や使い方に関する相談などは、お近くの福祉用具貸与事業所や福祉用具専門相談員にしても良いでしょう。 「RT.2」を取り扱う福祉用具貸与事業所も公式ホームページ内で検索できます。

>>「RT.2」の取り扱い事業所紹介ページはこちら

「自分で歩く」可能性を広げる電動アシスト歩行器

電動アシスト歩行器は、アシスト機能・ブレーキ機能・片流れ防止機能・急発進防止の4つの機能が付いた介護ロボットの1つです。電動アシスト機能により、生活の幅を広げたい方から比較的介護度が高い方まで、多くの方が利用できるのが特徴です。

電動アシスト歩行器は、一般的な歩行器と同様に介護保険でレンタルすることができます。自宅の周辺に坂道があって外出が難しい場合や、身体機能がかなり低下していて一般的な歩行器では転倒のリスクが高い場合には利用を検討してみてはいかがでしょうか。

ケアマネジャーが電動アシスト歩行器の利用を検討する場合には、身体機能・生活環境・生活目標を評価して決めると良いでしょう。電動アシスト歩行器を導入する際にはチームで取り組むことが大切です。電動アシスト歩行器を使う目標をしっかり立てて共有し、それに基づくケアプランを立てることが有効活用につながります。 この際、動機付け、短期的・長期的な目標を設定して共有することが非常に有用です。ただ歩くというだけではなかなかモチベーションは上がりませんが、「これをしてみたい」とか「ここに行ってみたい」などの目標が具体的になると、「使ってみよう!」という意欲につながるでしょう。

こちらのページを読んで電動アシスト歩行器に興味を持った方、利用を検討したいという方は、電動アシスト歩行器「RT.2」の製品紹介ページを一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。

>>「RT.2」製品紹介ページはこちら 

※本セミナーの内容、及び資料の一部は、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)による「電動アシスト歩行器の導入運用支援マニュアル(案)」より使用しております。 電動アシスト歩行器の活用についてより詳しい情報をご覧になりたい方は、同マニュアルも併せて御覧ください。

>>「電動アシスト歩行器の導入運用支援マニュアル(案)」はこちら

 

山中 崇先生
山中 崇先生(東京大学 大学院医学系研究科 在宅医療学講座 特任准教授)

在宅医療現場での経験を活かし、在宅医療学の確立を目指して研究を推進している。AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)のロボット介護機器開発・標準化事業に研究者として従事、「電動アシスト歩行器の導入運用支援マニュアル(案)」の作成に携わる。

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