
この記事では、バイステックの7原則*1の中の「統制された情緒的関与の原則」について、ケアマネジャーの現場の一場面に沿って解説します。利用者の感情に共感しつつも、専門職として冷静さや客観性を失わずに援助する「寄り添いながらも飲み込まれない」姿勢を取り上げ、すぐに取り組める「実践ポイント」もわかりやすくまとめています。
こんな場面に心当たりありませんか?
あるいは、辛い話を聞くのが苦しくなり、無意識に話を逸らしてしまったり、態度が不自然にぎこちなくなってしまう、といったことはありませんか。気づくと、必要な情報収集や説明ができないまま面談が終わってしまうことも。
一時的に感情を共有できたとしても、あとで「結局、あの人は何しにきたの?」とかえって不安を感じさせたり、専門職として信頼関係を築くことに至らない場合も…。
「統制された情緒的関与」とは、援助者自身の感情を自覚しコントロールしながら関わること
利用者の感情に共感しその気持ちを深く理解しつつも、援助者自身の感情は冷静にコントロールするという、専門職としての関わり方を指します。これは、相手の感情の渦に飲み込まれる「同情」とは明確に区別される、極めて重要な専門技術です。
自身が似たような境遇や感情を経験していると、自分のことのように感じてしまうことは人間として普通のことかもしれません。専門職としては、まずはそう感じてしまう自分を客観的に自覚することで、冷静に関わることができます。
「統制された情緒的関与」の視点で関わるとどう変わる?

利用者は「気持ちを分かってくれた」という安心感と、「この人は冷静に助けようとしてくれる頼もしい専門家だ」という信頼感を同時に抱くことができます。この冷静さこそが、具体的な問題解決への道を切り拓くのです。
- 自分の感情に気づく(セルフモニタリング)
利用者と話している最中に「あ、今自分はイライラしているな」「悲しい気持ちに引きずられているな」と、自分自身の感情の動きを客観的に観察する癖をつけましょう。自覚したら、一度深呼吸をして、冷静さを取り戻してみましょう。 - 「共感」と「同情」の違いを意識する
「共感」は相手の気持ちを理解し、寄り添うこと。例えば、利用者の悔しさを理解しつつも、冷静に「どうしたらいいか一緒に考えましょう」と進める関わり方です。一方、「同情」は相手と同じ気持ちの沼にはまってしまうことです。
私たちが目指すのは、あくまでも専門職としての「共感」です。「その気持ちはよく理解できます。では、どのように対応しましょうか」と、意識的に次のステップに切り替えることも統制を保つことに役立ちます。 - 対応後に振り返り(リフレクション)の時間を持つ
面談後、自分の感情がどう動き、対応は適切だったかを一人で、あるいは同僚やスーパーバイザー(指導・教育をする人)と共に振り返る習慣が重要です。感情を整理し、客観視することで、自己覚知と心の健康(セルフケア)につながります。
*1:参考文献:Biestek, F. P. (1957) The Casework Relationship. Loyola University Press. ( 『ケースワークの原則[新訳改訂版] 援助関係を形成する技法』(2006) F.P.バイステック 著 尾崎新/福田俊子/原田和幸 訳 誠信書房
その辛い話を聞いているうちに、自分のことのように腹が立ったり悲しくなったりと、共感を通り越して感情的になってしまった。