この記事では、バイステックの7原則*1の中の「受容の原則」について、ケアマネジャーの現場の一場面に沿って解説します。たとえ利用者の言動や価値観が自分の考えと違っても、「その人にとってはそれが現実」としてありのまま受け止める重要性を取り上げ、すぐに取り組める「実践ポイント」もわかりやすくまとめています。
こんな場面に心当たりありませんか?
または、受け止めずに聞き流してしまう… (またいつもの愚痴が始まったか…)と内心思いながら、相槌は打つものの、関心のない態度で聞き流してしまう。
これらの対応は、利用者に「この人にも自分の気持ちは分かってもらえない」と感じさせ、対話の扉を固く閉ざさせてしまうことにも…。
「受容」とは、利用者の感情をあるがままに受けとめること
利用者の長所・短所、肯定的な感情・否定的な感情を含めて、その人のありのままの姿を、良い悪いと評価せずに現実として受け止めることを指します。重要なのは、これは相手の言動すべてに「同意」したり「称賛」したりすることではない、ということです。
人は時として、「事実を見る前に、まず自分の感情を受け止めてほしい」と思うことがあります。また、自身の感情を整理できないまま表現してしまう時があります。
そのような時、まずは向き合って「受容」されることが、利用者の「わかってもらえた」という安心感や、感情の整理にもつながります。
それによって初めて支援者との間に信頼関係が築かれ、 利用者が自ら問題に向き合い、次のステップに進むための基盤となるのです。
「受容」の視点で関わるとどう変わる?

そして、 「ご家族がご自身のことを気にかけてくれていない、と感じていらっしゃるのですね」 「そのようにお感じになるのは、とてもお辛いことですね」 と、利用者が〝そう感じているという事実〟を、言葉と態度で丸ごと受け止めます。
利用者は「この人は真剣に私の話を聞き、気持ちを受け止めてくれる」と安心し、なぜそう感じるのか、というより深い話をしてくれるようになります。そして、支援者として、利用者に対する理解も深めていくことができます。
特に、つい意見を言ったり聞き流したりする癖のある方こそ、「受容」を意識し、それを表情や態度で示すことが非常に効果的です。
- まず「否定ことばを使わない」と心に決める
会話の冒頭で「でも」「だって」といった否定の接続詞や、「そんなことはない」「そんなことできない」といった打ち消し表現を使わないように意識してみましょう。 - 言葉以上に「表情」と「態度」で示す
穏やかな表情、相手にしっかり向いた身体の角度、優しい眼差し、深いうなずき。これら非言語的なサインが「あなたのことを受け入れています」という何より強力なメッセージになります。 - 「同意」ではなく「理解しようとする姿勢」を貫く
相手の意見に賛成する必要はありません。「なぜこの人はこう考えるのだろう?」と、相手の背景にある価値観や経験を知ろうとすること自体が、受容の最も重要な実践です。
*1:参考文献:Biestek, F. P. (1957) The Casework Relationship. Loyola University Press. ( 『ケースワークの原則[新訳改訂版] 援助関係を形成する技法』(2006) F.P.バイステック 著 尾崎新/福田俊子/原田和幸 訳 誠信書房
たとえば、不満を口にすることが多い利用者が、「どうせ家族は私のことはどうでもいいと思っている、忙しいからと何もしてくれない」と言われた時。
ケアマネジャーはつい 「そうでしょうか?実際はいろいろやってくれてますよ」と正論や事実で返してしまい、結果として相手の言葉を否定してしまう。