この記事では、バイステックの7原則*1の中の「秘密保持の原則」について、ケアマネジャーの現場の一場面に沿って解説します。利用者から得た個人情報やプライバシーを、正当な理由なく他者に漏らさないという専門職の基本姿勢と、多職種連携における情報共有の注意点を取り上げ、すぐに取り組める「実践ポイント」もわかりやすくまとめています。
こんな場面に心当たりありませんか?

「名前や住所は言っていないから大丈夫」という安易な考えは、非常に危険です。秘密保持とは、単に個人情報が特定されなければ良いというものではありません。
利用者が「人に知られたくない」と願うその気持ちや尊厳を軽んじ、信頼してくれた相手との約束を一方的に破ることになってしまいます。
「秘密保持」とは、援助関係の中で知り得た個人的な情報を、本人の同意なしに第三者に漏らさないこと
これは、これまで見てきた6つの原則が成り立つための大前提であり、信頼関係の絶対的な土台です。また、介護保険法第23条(ケアマネジャーの守秘義務)にも定められた、私たち専門職が遵守すべき法的義務でもあります。
「秘密保持」の視点で関わるとどう変わる?

まず「この情報は、利用者が信頼して打ち明けてくれた、”責任を持って守るべき”情報だ」という原点を忘れないようにしましょう。
多職種連携などで情報共有が必要な場合は、事前に「どこまでの情報を、誰に、何のために共有するのか」を本人と丁寧にすり合わせ、明確な同意を得ます。
利用者から「これは誰にも言わないでほしい」と託された想いは、たとえ支援に有益な情報であっても、その意思を最大限尊重します。
秘密保持は信頼関係の基礎ですが、以下のような「利用者本人の利益、または公共の利益が優先される場面」では、情報の共有が認められる(あるいは義務付けられる)場合があります。
- 生命・身体・財産の保護が必要な場合(救急搬送時、自傷他害の恐れがあるなど)
本人の同意を得る時間的余裕がない、または同意を得ることが困難な状況で、生命や生活を守るために必要な場合です。 - 法令に基づく通報義務がある場合(高齢者虐待の発見、感染症の予防など)
個人の秘密よりも、法律による通報義務が優先されるケースです。 - 本人の同意を得ている場合(チームケア)
最も日常的な「正当な理由」です。質の高いサービスを提供するためには、チーム間の情報共有が不可欠です。
正当な理由があるからといって、何でも話していいわけではありません。 その目的を達成するために必要な、最小限の情報にとどめる配慮が専門職として大切です。
- 「その情報共有は、誰のため?」と常に自問する
情報を口にする前に、一瞬立ち止まりましょう。その共有は、本当に「利用者の利益」につながるのか。それとも「自分のため(愚痴、興味本位、自己満足)」ではないか、と自問する癖が重要です。 - 事例検討や育成の場でも、最大限の配慮を
スーパービジョンや事例検討でケースを共有する際は、目的を明確にし、個人が特定されないよう情報を加工するのは当然です。それに加え、そのケースを興味本位で語ったり、嘲笑の対象にしたりせず、常に当事者への敬意(リスペクト)を払うことを忘れてはいけません。 - 公私の別を徹底し、物理的な管理も厳重に
事務所を一歩出たら、たとえ家族や友人であっても個別ケースの話はしない。電車内や飲食店など、公共の場での会話は絶対に避ける。また、個人情報を含む書類やデータが入ったパソコン、スマートフォンの管理も厳重に行う、という基本を徹底しましょう。
*1:参考文献:Biestek, F. P. (1957) The Casework Relationship. Loyola University Press. ( 『ケースワークの原則[新訳改訂版] 援助関係を形成する技法』(2006) F.P.バイステック 著 尾崎新/福田俊子/原田和幸 訳 誠信書房