
「あなたが所属している事業所では、特定事業所加算を取得していますか?」
多くの方が「取っている/取っていない」は把握していると思います。ただ、「どの区分を取っているのか」、そして「それが地域の中で一般的なのか」まで意識する機会は、多くはないのではないでしょうか。
日々のモニタリングや連絡調整に追われる中で、加算は“制度の話”として扱われがちですが、特定事業所加算の有無や区分は、現場の業務設計や「学ぶ環境」、地域からの見られ方にも直結します。
今回は、厚生労働省の「介護給付費等実態統計月報」*1や介護サービス情報公表システム*2のデータをもとに、特定事業所加算の「全国的な算定率」や「登録事業所の地域格差」を数字で明らかにします。
- データから見る「特定事業所加算」の算定実態
- あなたの県は何位?「加算体制がある事業所の登録率」ランキング
- 特定事業所加算は現場に何をもたらすか?
- 「地域差」から考える、ケアマネジメントの環境と収入基盤
データから見る「特定事業所加算」の算定実態
居宅介護支援における特定事業所加算は、質の高いケアマネジメントを提供するための体制を評価するものであり、介護経営において重要な指標となっています。まずはケアプラン数や事業所数に占める割合から、その全体像を読み解きます。
ケアプラン数と事業所数に占める加算の割合
◆基本報酬の算定状況
介護給付費等実態統計月報 令和7(2025)年7月審査分より
| 基本報酬区分 | 算定数(単位:1,000件) |
|---|---|
| 居宅介護支援(Ⅰ) | 2,796.3 |
| 居宅介護支援(Ⅱ) | 217.2 |
| 計 | 3,013.5 |
◆特定事業所加算の算定状況
介護給付費等実態統計月報 令和7(2025)年7月審査分より
| 加算区分 | 算定数(単位:1,000件) | 算定率 (対基本報酬総数) |
|---|---|---|
| 特定事業所加算(Ⅰ) | 143.0 | 4.75% |
| 特定事業所加算(Ⅱ) | 1,341.1 | 44.50% |
| 特定事業所加算(Ⅲ) | 474.9 | 15.76% |
| 特定事業所加算(A) | 27.5 | 0.91% |
| 計 | 1,986.5 | 65.92% |
全国の居宅介護支援における基本報酬の算定総数(約301万件)に対し、何らかの特定事業所加算が算定されている割合は65.92%に達しています。つまり、全国のケアプラン総数の3分の2は、何らかの特定事業所加算が算定されているということになります。
一方で事業所数の割合を見てみると、全国の居宅介護支援事業所36,526事業所のうち、特定事業所加算を登録している事業所は14,617か所で、全体の40.0%となっています。
※介護サービス情報システムへの登録データから算出(2026年1月16日時点)
給付件数(65.92%)と登録事業所率(40.0%)に差があるのは、特定事業所加算が人員体制(主任ケアマネの配置や研修・会議体制等)と結び付いた制度であり、結果として加算取得事業所は規模が大きくなりやすいためです。その分、担当件数(給付数)は加算取得事業所側に集まりやすい構造があります。

データから見える加算区分ごとの特徴
「加算(Ⅱ)」が圧倒的メインストリーム
算定率44.50%を占める「加算(Ⅱ)」は、すでに「標準的な体制」になりつつあると言えます。現場のケアマネジャーから見れば、「加算(Ⅱ)がある職場」は、主任介護支援専門員の存在や、定期的な研修参加等の機会があるという点で、成長の機会が得やすい環境の目安になるかもしれません。
「加算(Ⅰ)」の希少性
最上区分の「加算(Ⅰ)」を算定できる事業所は4.75%です。主任ケアマネジャーの複数配置に加え、重度者受け入れや支援困難ケースへの対応実績が要件となるため、地域における専門性の高い拠点として位置付けられます。
小規模向け「加算(A)」の浸透はこれから
小規模事業所でも取得しやすいように新設された「加算(A)」ですが、算定率は0.91%と極めて限定的です。「どう取ればいいかわからない」という現場の声も聞かれますが、今後の活用が進むかどうかが注目されます。
あなたの県は何位?「加算体制がある事業所の登録率」ランキング
最大31.3ポイント差!地域による「温度差」
次に、「介護サービス情報公表システム」で、特定事業所加算の体制がある事業所が、全体の介護支援事業所の中で占める割合を調べてみました。(2026年1月16日時点)
特定事業所加算の登録率で比べると、最も高い県と最も低い県の差が31.3ポイントもの開きがありました。ある地域では「2事業所に1事業所以上」が加算体制を持ち、別の地域では「4事業所に1事業所程度」という状況です。
加算体制の登録率トップ10
なぜこんなに差が生まれるのか?
こうした差の背景には、どのような要因が影響しているのでしょうか。考えられる要因をいくつかあげてみます。
- 法人規模:大規模法人が多い地域では、組織的に加算取得を進めやすい傾向があります。地域によって、介護事業者の協働化・大規模化が進められているケースもあります。
- 他事業所との連携体制:地域内での連携が日常的であれば、共同主催の研修を実施しやすく、加算取得への心理的ハードルが低くなります。
- ケアマネジャー不足の影響:人材不足が深刻な地域では、まず「人の確保」が最優先となる現実があります。
特定事業所加算は現場に何をもたらすか?
算定するメリット
- 報酬アップ:基本報酬比で約20%~50%アップの確実な収入増に。
- 職場環境の整備:定期的な会議や研修など、成長できる仕組みが整う。
- 信頼の証:利用者や地域から「体制が整った事業所」として認識される。
- 人材確保:待遇面で求人時のアピールポイントになる。
あえて算定しないという選択
- 家族的な運営:収入増よりも、小規模ならではのペースを大切にする。
- 安定した集客力:紹介や口コミで利用者が安定しており、差別化の必要がない。
- 現場負担への考慮:加算要件(研修の開催、24時間連絡体制等)が、現場の負担になる場合。
「地域差」から考える、ケアマネジメントの環境と収入基盤
算定率65.92%、登録事業所率40.0%という数字から、特定事業所加算はもはや一部の特別なものではなく、居宅介護支援における「標準的な体制」へと移行しつつあると言えます。
一方で地域によって30ポイント以上もの格差があるのは、例えばケアマネジャー(特に主任介護支援専門員)が特定の地域に偏っているといった、事業所単位の努力ではどうにもならない事情が隠れているのかもしれません。
日々の業務が高度化し、処遇改善への関心が高まる今、こうした既存の仕組みを最大限に活用していくためには、地域における協働化の推進といった環境整備も必要になっているのではないでしょうか。ケアマネジャーが専門職としての質を維持し続けるためには、安心して働き続けられる土台が不可欠だからです。
あなたの事業所や地域はいかがでしたでしょうか?この記事が、これからのケアマネジャーの働き方や地域の未来を考えるきっかけになれば幸いです。
▼特定事業所加算の詳しい算定要件はこちら
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