
増え続ける特殊詐欺。その手口はもはや「注意」だけでは防げないほど巧妙化しています。オレオレから悪質商法まで、その魔の手は静かに、着実に高齢者を狙っています。
「まさか、あの人が」
「しっかりしている方だから大丈夫だと思っていた」
被害に遭った利用者のご家族から、こうした声を聞いたことがある方もいるかもしれません。実際には、判断力や性格の問題ではなく、誰でも巻き込まれる可能性があるものです。
ケアマネジャーとして、日々の関わりの中で「予防の視点」を持っておくこと、そして「いざというときの相談先」を知っておくことが、利用者の安心につながります。
この記事では、「ケアマネがすべてを背負う必要はない」という前提に立ちながら、現場で使える予防策と相談先をご紹介します。
ケアマネの役割は「抱え込む」ことではなく「つなぐ」こと
生活上のトラブルは、体調の変化や環境の変化と重なって表面化することがあります。そんなとき、ケアマネに求められるのは問題を一人で解決することではなく、状況を整理して適切な相談先につなぐことです。
家族、民生委員、地域包括支援センター、行政、警察、消費生活センター——それぞれに役割があります。必要なところへ橋渡しを行い、本人の不安が大きくならないように支援の枠組みを整える。その積み重ねが、利用者の安心と支援者の負担軽減につながります。
リスク事例を知って、「詐欺アンテナ」の精度を上げる
詐欺は、本人が「被害に遭った自覚」を持ちにくい形で進むことがあります。特に認知症がある方や独居の方では、支援者が訪問した時点では「何が起きたのか分からない」ことも少なくありません。
そのため予防策の一つとして、最近の手口や典型的なトラブル事例を、支援者側が把握しておくことも有効です。
たとえば、次のような“違和感”が手がかりになります。
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見慣れない封筒・書類・カード類が置かれている
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「警察」「公的機関」「保険金」「還付」などの話が突然出る
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「修理費が保険金でまかなえる」など、家の修理や保険を勧められている
実際に、「保険金で住宅修理ができる」などと勧誘し、申請代行等の契約に結びつけるトラブルも報告されています(国民生活センター「見守り新鮮情報」第454号)。
こうした事例を事前に知っておくと、訪問時の小さな違和感を見逃しにくくなり、早めに消費生活相談や警察相談などの窓口へ「つなぐ」判断がしやすくなります。
また、事業所内で「最近の手口」を定期的に共有するのも、予防の一つとして有効です。たとえば国民生活センターの以下のページは、高齢者に多い消費者トラブルが整理されており、情報収集の入口として活用できます。
▼高齢者の消費者被害情報ページはこちら
https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/koureisha.html
また、独居高齢者が多い地域(団地など)では、同様の手口が連続して発生することもあります。
「怪しい電話があった」「強引な買取業者が来て困った」といった情報は、事業所内で共有するだけでなく、地域包括支援センターとも連携し、地域としての見守りや注意喚起につなげておくと安心です。

予防の入口は「電話対策」から
オレオレ詐欺の多くは、今も「電話」が入口です。近年は海外からの番号(「+」で始まる国際電話)を使った不審な着信も増えています。
電話対策には、いくつかの方法があります。
固定電話の場合
- 留守番電話設定: 常に留守番電話にしておき、知らない番号には出ない
- ナンバーディスプレイ: 発信者番号を確認してから出る
- 迷惑電話防止機能付き電話機: 家電量販店などで購入可能。着信時に警告アナウンスが流れたり、自動で録音する機能がある
スマートフォンの場合
知っておきたいのが、警視庁の防犯アプリ「デジポリス」です。
デジポリスでできること:
- 海外からの国際電話番号をブロックする設定が可能
- 東京都以外の人でも利用できる
- スマートフォンに入れるだけで、不審電話の入口対策になる
すべての詐欺電話を防げるわけではありませんが、「怪しい電話が鳴らない環境をつくる」という点では有効です。
伝え方の例:
「最近、海外からの変な電話が増えてるみたいなんです。留守番電話にしておくだけでも予防になりますよ。もしスマホお使いでしたら、ブロックできるアプリもあるので、ご家族と一緒に入れてみるのもいいかもしれません」
▼デジポリスについて詳しくはこちら

いざというときの相談先を、事前に共有しておく
「これって詐欺かもしれない」と感じたとき、どこに相談すればいいか迷うことは多いものです。以下の相談先を、利用者や家族と事前に共有しておくと、いざというときスムーズです。
消費生活センター(消費者ホットライン)
電話番号: 188(いやや!)
屋根修理の訪問販売、身に覚えのない請求、健康食品の定期購入トラブルなど、「詐欺かもしれないけど、警察に行くほどか迷う…」という場面で心強い相談先です。
- 最寄りの消費生活センターに自動でつながる
- 契約トラブルや悪質商法について相談できる
- 本人だけでなく、家族や支援者からの相談もOK
こんなときに:
「工事業者が突然訪問してきて、その場で契約させられそうになった」
「健康食品を1回だけ買ったつもりが、定期購入になっていた」
▶全国の消費生活センター等詳しくはこちらから
警察(生活安全課など)
被害後だけでなく、「これって怪しいかも?」という段階でも相談できます。
- 緊急性が高い場合: 110番
- 相談したい場合: #9110(警察相談専用電話)
- または最寄りの警察署へ電話し、「生活安全の相談をしたい」と伝える
#9110は全国共通の警察相談専用電話で、「詐欺かもしれない電話があった」「不審な訪問があった」といった緊急性の低い相談にも対応しています。地域によって窓口名が異なる場合がありますが、生活安全課などが対応します。
▶警察相談専用電話 「#9110」についてはこちらから
防犯アプリは「補助ツール」として捉える
東京都の「デジポリス」のように、防犯情報を発信するアプリが他の地域にも存在する場合があります。探す場合は、アプリストアで「〇〇県 防犯」「〇〇県警 防犯」などと検索し、提供元が公的機関であるかを確認しましょう。
ただし、防犯アプリには地域差があります。見つからない場合は、無理に探す必要はありません。全国共通でできる電話の着信拒否設定や、相談先の共有だけでも、十分に予防効果があります。
おわりに
詐欺被害の予防は、ケアマネ一人の力で完結するものではありません。でも、「誰に相談すればいいか」を知っているだけで、利用者や家族の不安は和らぎます。
本記事が、日々の支援で相談先・連携先を確認する際の参考になれば幸いです。
実務の中での「気づき」や実際の支援事例をもとに、日々の業務や利用者支援のヒントとなる情報をお届けします。現場の皆様の力になれるよう、心を込めて発信しています。