「適切なケアマネジメント手法」を脅かす? 資源不足による「チームケア」機能の不全

2021年に「適切なケアマネジメント手法」の手引きが公開されてから、4年が経過しました。今年9月には老健事業の一環で、「疾患別ケア」についての新たな手引きや「実践ガイド」が示されています。ただし、これを「活かしきる」うえでの課題も少なくありません。

実践ガイドは確かに使いやすいツールだが…

ここでは、独居世帯および高齢者のみ世帯を対象とした「はじめての『適切なケアマネジメント手法』実践ガイド」に着目します。

「先輩ケアマネジャーと学ぶ」のサブタイトル通り、簡易で分かりやすく整理されているのが特徴です。当初の確認項目一覧などをいきなり見せられても、「混乱しがち」という人がいるかもしれません。その点では、現場で使いやすいツールとなりそうです。

ただし、気になる点もあります。特に「独居世帯」に関してですが、ざっと見た時に「ケアチーム」との情報共有や情報取得の依頼が大きな軸になっている点です。

独居世帯となれば、家族・親族等からの情報収集はどうしても難しくなります。業務負担軽減の観点からも「ケアマネ単独」による情報収集・確認等には限界が生じがちで、利用者の状況把握については「ケアチームの協働」が基本となる流れも強まっています。

実戦で重要となるのが「ケアチーム」の存在

問題は、地域の介護および医療の資源が地域によって減りつつある中、「実践ガイド」で示されている「ケアチーム」そのものがきちんと機能するのかという点です。

たとえば、「摂食嚥下の状況」について、「介護者等から情報を収集する」という実践項目があります。独居世帯であれば、この「介護者等」とは「家族」以外となるケースが多いでしょう。地域の人が一緒に食事をするなどの場面もあるでしょうが、やはり「ケアチーム」がかかわるサービス場面が想定されます。

上記の「情報収集」を受けた後は、「専門職によるリスクチェック(摂食嚥下だけでなく栄養や口腔内状況含む)」を依頼。さらに「リスクチェック」の結果を「ケアチーム」で共有したうえで、「リスクチェック」を定期化するというのが、実践の流れとなります。

ちなみに、上記の「リスクチェック」については、2024年度改定で訪問系サービスに導入された口腔連携強化加算などが思い浮かびます。同加算は、訪問系の介護サービスと訪問診療を行なっている歯科医療機関との連携が体制要件となっています。その点では、「情報収集」、から「リスクチェック」、「リスク共有」まで、一貫して「ケアチーム」が機能していることが前提と言えるでしょう。

現実とのズレが新人ケアマネにおよぼす不信

仮に、地域の資源状況によって「ケアチーム」が十分に機能しなくなったとします。もちろん、この実践ガイドはひな形の1つですから、その時々の状況によって「情報収集」や「リスクチェック」のあり方は変わってくるでしょう。経験豊かなケアマネであれば、柔軟な読み換えも可能かもしれません。

しかし、今回の実践ガイドは、主に新人ケアマネを想定した手引きです。特に「家族との連携」が難しい独居世帯となれば、先輩の指導・助言があるとしても、このガイドの使いこなしには困惑も生じるでしょう。

また、国民生活基礎調査でも明らかなように、すでに独居世帯は高齢者のいる世帯の中心となっています。新人ケアマネが「適切なケアマネジメント手法」にもとづいて業務を展開する場合、この「独居世帯」を想定した実践ガイドは大きな頼りとなるはずです。

そこで「どうも現実と違う」という受け止めが広がれば、どうなるでしょうか。「適切なケアマネジメント手法」そのものへの信頼が揺らぐともなりかねません。

「資源不足」を想定した実践ガイドの必要性

この点を考えた時、この実践ガイドの中に「地域に(チームケアを展開できる)介護・医療資源が足りない場合」というテーマを設けておくべきではないでしょうか。

介護サービス事業の倒産・撤退の加速はご存じの通りですが、病院の減少数も今年に入ってさらに増えています。一般診療所は増えていますが、訪問診療の実施割合は2023年から低下傾向にあり、歯科診療もニーズの伸びに供給が追いついていない状況です。

地域での介護・医療資源の減少は、チームケアの機能不全を呼び起こすだけでなく、「適切なケアマネジメント手法」でも目標としている「本人のストレングス(強みや)の発揮」にも大きな影響を与える可能性があります。

たとえば、利用者によっては、通所介護に通う・通院するという際に「特に身だしなみに主体的な注意をはらう」というケースが見られます。介護や医療の利用は「本人の本来的な意向」ではなくても、生活習慣の1つとして本人の中で根づき、それが強みを発揮する入口となっていることが多々あるわけです。

その「なじみ」の習慣が、資源不足によって「なくなる」あるいは「場所や対象の変更を強いられる」となれば、本人のストレングスの発揮にも影響を与えるでしょう。そうした場合のケアマネジメントのあり方は、当然大きく問われることになります。
資源不足時代の「適切なケアマネジメント手法」はどうあるべきなのか。改めて検討すべき課題の1つと言えそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。