在宅のおむつ支給等のこれから

要介護者と介助者の写真

今年9月21日に出された「2021年度の地域支援事業実施要綱の改正点」の中から、任意事業の一つ「介護用品(紙おむつなど)の支給にかかる事業」の見直しを改めて取り上げます。ご存じのとおり、2015年から廃止・縮小に向けた流れとなりましたが、激変緩和措置として例外的な取り扱いが示されています。

事業の廃止・縮小に向けた流れを改めて整理

介護用品の支給事業は、重度の要介護者を介護している世帯(所得制限あり)に対して、紙おむつの他、尿取りパッド、ドライシャンプー、洗浄剤、使い捨て手袋などを現品支給したり、購入費用を補助するしくみです。特養ホームでは紙おむつは介護保険の給付対象となっていますが、在宅では地域支援事業の任意事業で対応してきたことになります。

この事業について、2015年の見直しで、任意事業の対象外とする方向が示されました。つまり、地域支援事業ではなく、市町村特別給付や保健福祉事業(介護保険特別会計事業)、あるいは市町村の一般財源事業として行なうべきものとされたわけです。

もちろん、一気に対象外(廃止)となれば、地域の要介護者・家族支援に大きな影響をおよぼしかねません。そこで、段階的な激変緩和措置が図られてきました。

課税段階によっては年間上限も設けられる

まず、2015年度については「2014年度時点で事業を実施していた場合」に限り、当面は継続OKとされました。その後、事業の廃止・縮小に向けた検討が行われつつ、今回の取扱いの提示に至っています。

具体的には、第7期(2018~2020年度)に事業を実施していた場合に限り、以下の支給範囲・要件を満たしたうえで事業継続を認めるというものです。このあたりは、昨年11月9日の厚労省通知でも示されましたが、今回の要綱にも反映されたことになります。

課税段階による支給範囲は以下のとおりです。(1)課税段階6~9(本人が住民税課税)→支給対象外。(2)課税段階4、5(本人は住民税非課税だが、家族が課税対象)→年間6万円の支給上限を設ける。(3)課税段階1~3(本人も家族も住民税非課税)→従来通り。

要介護3以下の場合は認定調査票による確認

次に「要介護度による支給要件」ですが、要介護度に応じて以下の条件が示されました。

(1)要介護4以上→要件は特に設けず、必要な人に支給可能。(2)要介護3以下(要支援認定者も含む)→市町村が認定調査票を確認し、「排尿」「排便」の項目において「介助」または「見守り等」に該当する人は支給対象に。(3)要介護認定を受けていない、あるいは認定調査時から状態が変化しているケース→市町村が認定調査と同じ方法で必要性を確認する

なお、上記(2)については、例外的な取り扱いも示されました。具体的には、認定調査票の「ズボン等の着脱等」の項目の特記事項を踏まえたうえで、必要性が認められる人については支給の対象とするというものです。また、上記(3)の調査については、包括職員やケアマネへの依頼も可能としています。

廃止後の「受け皿」について市町村の考え方

このように、地域支援事業(任意事業)での実施について、徐々に支給要件の「縛り」が強くなってきました。いずれにしても激変緩和措置の間に、市町村には事業継続に向けた新たな受け皿を設けることが求められます。実際、昨年11月の通知以降、市町村の検討の動きは慌ただしくなっています。

市町村にとって、「受け皿移行(市町村特別給付や一般財源事業などに移すこと)」における課題は何でしょうか。もっとも大きいのは、支給のための財源が異なってくることです。

これが、仮に市町村特別給付になると、財源は第1号保険料が100%となります(介護保険特別会計による保健福祉事業も同様)。また、仮に一般財源事業となれば、市町村が100%財源拠出をしなければなりません。

市町村の方向性についてケアマネも関心を

仮に前者となった場合、その市町村に在住する65歳以上の保険料額の引き上げも視野に入ってきます。後者であれば、市町村の財政負担が大きくなります。市町村としては、いずれも痛みが伴うことになるでしょう。

ちなみに、厚労省の調査によれば、2019年度時点での市町村の対応の方向性の割合は以下のようになっています。「一般財源事業への移行」→58.2%、「市町村特別給付への移行」→23.8%、「保健福祉事業への移行」→14.0%という具合です。さらに「介護用品支給事業の廃止」も17.7%にのぼっています。

2023年3月末(第8期末)までは、支給要件が厳格化されたとはいえ、とりあえず激変緩和措置は続きます。問題はその後です。一部の自治体で「事業の廃止」を視野に入れているとなれば、低所得世帯における在宅の要介護者・その家族への影響は大きいでしょう。

市町村が方針を公表した時点で、ケアマネ等への相談などが増える可能性もあります。管轄の市町村がどのような対応を取ろうとしているのかについて、調査しておく必要がありそうです。2024年度には、介護保険をめぐるその他のさまざまな負担増やサービス制限も予想されます。地域のケアマネ連絡会なども、地元市町村との意思疎通をこれまで以上にしっかりとっていくことが欠かせません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。