レスパイト利用急減下での世帯状況

イメージ画像

2020年度の介護給付費実態統計が公表されました。2020年5月~2021年4月の審査分による、介護給付の受給者数などを示したものです。以降の月報はまだ示されていないので、今年中盤の感染急拡大の影響は反映されていません。とはいえ、新型コロナ禍での介護保険の状況がうかがえるデータといえます。

2020年、通所・短期入所とも受給者は大幅減

改めて対前年度比での受給者状況を確認すると、通所系および短期入所系の受給者数の減少が際立ちます。累計受給者数で、通所介護が4.2%減、地域密着型通所介護が5.1%減。両者を合わせて4.4%減となっています。

さらに短期入所系になると、トータルで13.2%減と1割以上の減少となりました。名寄せをした実受給者数では、実に14.3%減。前年度と比較して、約12万人が短期入所系サービスの利用を取りやめたことになります。加えて、介護付き有料ホームやGH、小規模多機能型の「短期利用」についても、合計すると約2000人の減少となります。

もちろん、感染が拡大状況によって月ごとの差はあります。とはいえ、利用者の自立支援はもとより、家族のレスパイトという状況からしても、2020年度の在宅介護に大きな影響が及んだことは容易に想像できるでしょう。

1人あたりの給付費が伸びているのはなぜか

一方で注意したいのは、利用者1人あたりの給付費の変化です。それによれば、今度は逆に通所系・短期入所系の伸びが(他サービスと比較しても)大きくなっています。

データは、2020年と2021年の同月(4月)を比較したものです。通所介護は6.6%増、地域密着型通所介護は6.9%増。両方を合わせた伸び率は6.7%となります。短期入所系でも、6.5%の伸びを記録しています。介護給付全体で1.7%増、居宅サービス全体で3.2%増と比較しても、伸びの大きさが目立ちます。

年間を通したデータではないので一概には言えませんが、以下のような仮説も成り立ちます。1つは、一定の「利用控え」が生じている一方で、たとえば通所介護なら「レスパイトニーズの高い長時間利用等」のケースが集中したこと。もう1つは、報酬上の上乗せ特例(通所系では4月改定による基本報酬の上乗せ)が影響している点です。

他にも要因はあるでしょうが、受給者減と1人あたり給付費増という2つの傾向から、何が見えてくるかについて注意が必要です。

新型コロナ禍、介護離職者は減ったものの…

ここで、やはり厚労省統計である雇用動向調査に目を移してみましょう。今年8月に2020年の調査結果が公表されています。

それによれば、新型コロナの感染拡大下にもかかわらず、離職者は一般・パートタイムともに減少しています。特にパートタイム労働者の離職は、前年比(2019年比)で3.1%減となりました。このあたりは、雇用調整助成金等の施策効果によると推定されます。

注目したいのは、家族の介護・看護による離職率です。こちらは対前年比でほぼ変わらないのですが、全体の離職者数が減っている分、介護・看護離職者数も一定程度減ったことになります。となれば、「家族が働いているので介護サービスが必要」というニーズは、むしろ低下している可能性が浮かびます。

こうした点では、以下のような見方もできるかもしれません。介護離職者は減っているゆえに、通所や短期入所の「利用控え」があっても、「家族が働くこと」への影響は限定されている──という観測です。

しかし、家族の就業にかかる事情は、「現在働いている」というケースばかりではありません。先の雇用動向調査でもっとも気になるのは、離職率以上に入職率の減少が著しいことです。結果として、「入職率-離職率」(入職超過率といいます)は、8年ぶりにマイナスとなりました。離職は減ったが、就職できない人はそれ以上に増えたわけです。

家族の「限界点」は下がっている可能性

問題は、こうした状況下での「世帯の事情」です。家族の介護負担は、「仕事との両立」だけでなく「求職活動」や「仕事に就けないことでの心理面・生活面のストレス」も大きく影響します。また、「利用控え」の背景として、感染の恐れだけでなく家計不安からの「サービスを切り詰め」という事情も垣間見えます。

この点を考えたとき、家族をめぐるレスパイトニーズの高まりについて、今まで以上に視野を広げていくことが必要です。

よく指摘されるのは、家族が家にいて、介護をめぐる家族の役割を果たすことにも前向きというケースについてです。家族の意向から「介護の担い手としての意欲が高い」と判断した結果、ぎりぎりまで頑張ってしまい、介護倒れにつながることもあります。家族自身の意思の強さが、自分の限界点を見えにくくしているといったパターンもあります。

ケアマネとしては、常に「介護倒れを予防する」という観点を失わず、随時レスパイトを提案することも重要です。そのうえで、コロナ禍などの先行きが見えない状況下では、先の「限界点」が下がっている可能性にも注意しなければなりません。たとえば、「出社」と「コロナ禍のリモートワーク」では、後者の方がサービスの必要度が高くなることもあるという話を現場から聞くこともあります。

新型コロナの感染状況が、このまま収束していくかどうかは見通せません。次の感染の波が来た時を見すえて、世帯状況の把握についてのアンテナを研ぎ澄ましたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。