ケアマネを医療機関が取り込む時代へ?

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11月12日、2022年度診療報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会(中医協)では、ケアマネにとって注目すべきテーマが取り上げられました。ケアマネ側の入院時情報連携加算など、対医療連携のしくみと深くかかわる「入退院支援加算」です。ケアマネの実務にどのような影響が考えられるでしょうか。

診療報酬側の「入退院支援加算」を整理する

入退院支援加算については、2016年度の診療報酬改定で評価が拡充され(この時は「退院支援加算」)、「退院困難な患者の早期抽出」の要件が見直されました。ここで定められた「3日以内(加算1)」「7日以内(加算Ⅱ)」に合わせ、その後(2018年度)の介護報酬改定で、ケアマネ側の入院時情報連携加算の要件が見直されたのはご存じのとおりです。

入退院支援が必要となる「退院困難な要因」としては、「入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要であること」や「退院後に医療処置が必要であること」などがあげられていました。ケアマネからの「入院前」の情報がカギとなるケースもありますが、どちらかといえば、医療機関内での情報共有に重点が置かれていた項目といえます。

ところが2018年度の診療報酬改定では、ここに「虐待を受けている・その疑いがあること」や「生活困窮者であること」等が加わりました。いずれも、入院前の生活状況の把握に重点を当てたものです。その点で、ケアマネなど患者生活に密着する専門職からの情報入手が一気に重要性を増したわけです。

ヤングケアラーが入退院支援加算の論点に

この入退院支援加算について、2022年度の診療報酬改定で、さらに見直される可能性が出てきました。11月12日の中医協の論点では、入退院支援加算の算定時に「ヤングケアラーの早期発見および適切な支援へつなげること」を評価する旨が示されたのです。

ご存じのとおり、ヤングケアラーとは「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話を日常的に行なっている児童」を指します。高齢者介護の分野でも、さまざまな事情で祖父母の介護を孫世代が中心的に担うといったケースが見られます。こうした状況が、子供たちの心身の健康や学業、進路等に深刻な影響を与える可能性も指摘されています。

そこで、厚労省では今年3月に「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育のプロジェクトチーム」を立ち上げ、多機関の連携によってヤングケアラーを早期に発見して適切な支援につなげるしくみを打ち出しました。報告書の中では、介護・福祉事業者だけでなく、医療機関についても「早期発見と適切な支援へのつなぎ」を求めています。

ヤングケアラーをめぐる対医療連携の行方

では、ヤングケアラー支援に向けて、入退院支援加算ではどのような見直しが図られるでしょうか。想定されるのは、「退院困難な要因」の項目に、退院後の在宅生活における「ヤングケアラーの存在の有無」が含まれてくることでしょう。そのうえで、要件となっている「多機関(居宅介護サービス事業者等)との地域連携」というしくみを活かし、患者退院後の適切な支援につなげることが要件に明記されることが考えられます。

注意したいのは、ここでも居宅のケアマネ等からの「患者の家族状況」等にかかる情報提供が重要なポイントになることです。

すでに厚労省は「ヤングケアラーへの対処方針」の一つとして、ケアマネの法定研修にかかるカリキュラムやガイドラインへの反映を進めつつあります。そして、過去の改定では、医療側の入退院支援にかかるしくみの改編は、その後の介護側の報酬・基準改定に反映される傾向が見られます。

この点から、(1)ケアマネ側の研修カリキュラムやガイドラインの見直しを土台としつつ、(2)診療報酬側の入退院支援加算に対応する形で、(3)2024年度の介護報酬改定でのケアマネ側の入院時情報連携加算などの要件の見直し──という流れとなるのは間違いなさそうです。ケアマネとしては、今から心得ておきたいポイントといえるでしょう。

ケアマネの活動フィールドも大きく変わる⁉

ここで、今後の診療報酬改定に向け、ケアマネとしてもう1つ注意しておきたいことがあります。それは、入退院支援における責務が広がる一方で、支援部門の設置や加算算定をはばむ要因──「担当・専従の看護師や社会福祉士が確保できない」というものです。

この点について、中医協で示された論点では、「地域の関係者とのさらなる連携」などの評価の見直しが示唆されています。つまり、医療側で入退院支援に向けた必要な人材が確保できないのであれば、地域の他機関とのより密接な連携でカバーすることが視野に入っているといえます。となれば、ケアマネ側に求められる「共有すべき情報」のレベルも一段上がることが考えられます。

また、医療機関側の人材不足という点でいえば、社会福祉士だけでなく「ケアマネ資格保有者なども配置要件に加える」といった改定がなされる可能性もあります。いずれにしても、医療機関側としては地域のケアマネとのつながりを常に確保し、場合によっては組織の一員として取り込むという流れが、近い将来強まっていくことになるわけです。

医療側のしくみと地域福祉のあり方が変わりゆく中、ケアマネの活動するフィールドも激変期に入りつつあるのかもしれません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。