ケアマネにも関係。 通いの場等の推進に向け、今必要なこと

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新型コロナウイルスの感染については、オミクロン株による国内の市中感染例が認められるなど、再び予断を許さない状況が迫りつつあります。そうした中、感染防止に配慮した「通いの場等の取組みを実施するための留意事項」について、厚労省が通知を出しました。

条件付きとはいえ、国は緩和に向けて舵切り

今回の通知は、先に政府が発出した「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(2021年11月19日)にもとづき、介護予防・見守り等の取組みのさらなる推進を図るための留意事項の見直しです。新たな知見にもとづいた感染防止策の確保についての更新を行ないつつ、一部で緩和も図られています。

たとえば、「基本的な考え方」。改定前は「運営者・リーダー、参加者ともに感染を広げないよう意識して取り組んでいただきたい」という具合に、感染の拡大防止を前面に出した記載になっていました。これが、今改定では「外出自粛による心身機能の低下や地域のつながりの希薄化の回復に向けて、感染防止対策を確保したうえで、通いの場等の取組みを実施していただきたい」へと変更されました。

ちなみに、「ワクチン接種歴や陰性の検査結果等も踏まえ」という一文も加わっています。これも行動制限の緩和要件である点を考えれば、やはり高齢者の介護予防等に向けた活動回復に大きく舵を切ったと言えます。「通いの場等の取組み」についての留意事項でも、「歌を控える」や「息が荒くなるような運動は避ける」などの制限項目が(感染拡大の傾向が見られる場合等を除いて)削除されています。

通いの場等での感染対策のサポートを再確認

こうした条件付き緩和が図られたとはいえ、住民主体の活動となる「通いの場」等では、依然として本格的な再開に慎重なケースも見られます。この先オミクロン株等の感染が一定程度拡大すれば、国が緊急事態宣言等を出さなくても、再び「休止」や「オンライン対応等」が中心になることも想定されるでしょう。認知症カフェなど要介護者の参加が多い場では、より厳しさが増すかもしれません。

ここで気になるのが、通いの場などにおける感染防止の対策に向けた公的なサポートについてです。たとえば、感染防止にかかる「かかり増し経費」について、「通いの場」等は介護保険サービスに適用されている緊急包括支援事業の対象となっていません。その代わり、地域支援事業交付金があてられます(2020年9月10日の厚労省・老人保健課の通知より)。

かかり増し経費の対象となるのは、衛生用品等の感染症対策に要する物品購入、消毒・清掃費用、感染防止のための増員で発生する追加的人件費、タブレット等のICT機器の購入・リース費用などとなっています。

個別協議や地方単独事業の枠で足りるのか

上記の費用については、原則として、市町村ごとに算定した地域支援事業交付金の上限額の範囲内でまかなわれます。ただし、それ以上に事業費を要するとなった場合は、個別協議に。また、地方創成臨時交付金を活用した地方単独事業が適用されることもあります。

いずれにしても、個別協議や地方単独事業になるという点で、流動性の高いしくみといえます。感染状況は地域によって異なるという事情もあるでしょうが、国として「通いの場」等の再開に介護予防や孤立化防止の効果を期待するのなら、さらに追加的かつ安定的な予算措置も必要ではないでしょうか。

ちなみに、今回成立した2021年度補正予算では、「通いの場」等にかかる項目として、再開・推進を図るための「広報」に力点が置かれています。すでに感染防止のための好事例や手法等に関して、国はさまざまな情報発信を行なってきました。この継続・発展に向けた予算として4.1億円が計上されています。

参加の当事者に響く「安心確保」をもう一歩

確かに感染状況が落ち着いている現状では、積極的に参加してもらえるような情報発信は有効かもしれません。しかし、次々と変異株による感染が生じている中では、利用者の「強い安心」を築くために、より強い下支えのしくみを整備しておくことが望まれます。

たとえば、感染対策およびその最新情報にかかる知識・ノウハウが豊富な医療職を確保し、地域の「通いの場」等を巡回指導したり、専用の相談窓口や衛生用品バンクなどを設置するといった方法もあるでしょう。2019年の法改正で、介護予防と保健事業の一体化が図られたわけですから、その枠組みを活用した施策の強化を図るやり方もできるはずです。

先の補正予算による国の広報では、当予算が民間事業者への委託費等に使われますが、その使い道が妥当なのかどうか。2022年度の本予算では、そのあたりの検討も望まれます。

なお、「通いの場」等に認知症カフェなども入ってくるとなれば、介護保険外の地域資源として、ケアマネジメントにも深くかかわってきます。「ここで認知症カフェ等が有効」と判断しても、利用者・家族の不安が十分解消できなければどうなるでしょう。国や自治体、あるいは主催団体からの広報だけで「利用者・家族の気持ち」を動かすことができるかとなれば、大きな壁にぶつかるかもしれません。

高齢者の多様な地域活動は、これからますます重要です。だからこそ、当事者に響く「安心の土台」をしっかり固める施策ことが、この時期こそ特に必要ではないでしょうか。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。