公的価格評価検討委員会の中間整理、 期待すべきポイントは?

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2022年2月からの処遇改善策(処遇改善にあてた分の補助金支給は6月より)の後、10月からの恒久的な対応策はどうなるのか──その方向性を示した「公的価格評価検討委員会」の中間整理が、12月21日に公表されました。注目したいポイントを取り上げます。

現場の「仕事内容」への評価が見当たらない

まず、中間整理で示された「処遇改善の最終的な目標」に着目します。それは、「職種ごとに仕事の内容に比して、適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されていること」です。現場としては「当たり前」という印象でしょうが、ポイントは「職種ごと」の「仕事の内容」に比するという点です。

そのために何が必要かといえば、現場従事者(2月からの処遇改善策の対象外となったケアマネ等も含む)が日々こなしている仕事内容の分析、そしてそこにどのような価値が生まれているかを明確にすることでしょう。そのうえで、利用者および社会に対して、現場従事者が提供している価値をきちんと評価することが欠かせません。

しかし、残念ながらこの「評価」の部分について、今回の中間整理では踏み込みが見られません。「マンパワーのニーズの見通し」を踏まえ、「経験年数や経験年数」に応じた「キャリア・ラダー(キャリアアップを可能とする人事制度等のシステム)の形成」等を目指すとはしていますが、その座標軸となる評価の方向性は漠然としています。いわば、行き先の航路図があいまいなまま、船の構造だけを議論しているようなものです。

今後、詳細な「評価」を議論する場はあるか

現場実務にそくした評価は、それぞれ専門の分科会(介護保険部会や介護給付費分科会)で──ということなのかもしれません。しかし、それでは今までの処遇改善加算等の見直しの流れと何ら変わりはありません。内閣府のトップダウンによる「抜本的な見直し」を期待する側としては、「看板倒れ」という懸念も生じるのではないでしょうか。

もちろん、これまでの処遇改善策等の「措置の実効性を検証する」、そして「明らかになった課題や対象外となった職種も含め、検証を行なうべき」と記されてはいます。後者の「対象外となった職種」といえば、当然居宅のケアマネなども含まれるはずです。

こうした方向性を示しているのであれば、現場が創造してきた社会的価値などについて言及し、その評価を議論することの明記があっていいはずです。今回の検討委員会では各論への踏み込みが困難なら、内閣府に別の分科会を設けて検討する方法もあるでしょう。

中間整理には反映されていないが注目意見も

もちろん、期待がないわけではありません。中間報告には反映されていませんが、検討会では構成員から注目すべき意見も上がっています。それは、社会福祉法の改正などで、社会福祉法人における近年の「公益的な取組み」の推進を指摘したものです。その指摘の中では、政府が進めている孤独・孤立対策や困窮者支援策において、社会福祉法人が期待される役割も大きいという内容も見られます。

論点そのものは、社会福祉充実財産(法人の活用可能な財産から、事業用不動産や運転資金を控除したもの)の活用の方向性について述べられたものですが、注目したいのは「社会福祉法人に求められている幅広い役割」にふれていることです。こうした社会的な役割について、社会福祉法人だけでなく、すべての現場従事者も含めてさらに踏み込んだ議論へと展開させていくことは可能でしょう。

たとえば、政府の進める「公益的な取組み」において、幅広い相談援助業務をどう評価するか──という議論も期待できます。その先には、ケアマネ等の相談援助やケアマネジメントをどう評価し、賃金増へとつなげていくかという道筋も絡んでくることになります。

10月施策の枠も固まる中、次の改革の道筋は

問題なのは、2022年10月からの継続的な取組みをめぐる予算案がすでに編成されてしまったことです。その予算案を見ると、10月からの施策についても、2~9月の処遇改善策(月額平均9000円相当)をベースとした臨時の介護報酬改定にとどまっています。

つまり、現行の処遇改善加算Ⅰ~Ⅲの取得を前提とした報酬改定という位置づけは動かず、介護職員等特定処遇改善加算に「賃金反映への担保策(賃金改善の3分の2以上は基本給および毎月の手当ての引き上げにあてるための措置)」をプラスしたという内容に過ぎません。この予算案の通りで施行されるとするなら、10月からの新施策でも居宅のケアマネ等はやはり「蚊帳の外」となります。

あえて期待を寄せるなら、以下のような流れです。たとえば、年明けから公的価格評価検討委員会が再開する議論について、来年にも開催が予定される介護保険部会が引き継ぎ、2023年をめどとした法改正につなげる──というものです。これならば、2024年度の報酬・基準改定において、抜本的な改革がなされうる可能性は残ることになります。

一番怖いのは、今回のように既存の施策をベースとした「継ぎはぎ」状態が進む中で、「やはり抜本的な見直しは行われないのでは」という現場の失望が浮上すること。それにより、現場の人員不足に拍車をかけることになりかねません。これを防ぐうえでも、上記のような改革スケジュールを早期から現場に示し、しっかり説明することが欠かせません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。