感染急拡大下でのケアマネ 過去の臨時的取扱いだけで対応は可能か?

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新型コロナウイルスの感染が再び急拡大する中、厚労省のアドバイザリーボード(専門家による対策助言のための会合)でも、「介護現場における感染や濃厚接触による職員の離脱」が大きく広がることを危惧しています。サービス休止等の拡大も懸念される中、ケアマネ側の対応や国の施策について考えます。

居宅介護支援費をめぐる臨時的取扱いを整理

今後さらなる感染拡大となれば、ケアマネ実務では以下のような事態が想定されます。

1つは、感染防止の視点によるサービス休止のみならず、職員の離脱によって「サービスが提供できない」という状況が広がることです。そうなれば、通所系・短期入所系サービスはもとより、訪問系サービスでも人員不足等によるサービス休止も急増しかねません。

2020年5月に示された「新型コロナウイルス感染症にかかる介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取り扱いについて(以下、臨時的取扱い)」の第11報によれば、サービス休止によって「サービスの利用実績」がなくなっても、居宅介護支援費の請求は可能とされています。一定の条件(※)を満たすことは必要ですが、居宅介護支援への給付は一応確保されていることになります。

とはいえ、サービス休止等が長期化すれば、ケアプランの見直しで「サービスを組み替える」などの必要性は高まるでしょう。状況次第ですが、早期の「サービス組み換え」を促す通知が出てくる可能性もあります。

※一定の条件…(1)当初ケアプランで、サービスが予定されていたこと。(2)モニタリング等の必要なケアマネジメント業務を行なうこと。(3)給付管理票の作成など、請求にあたって必要な書類の整備を行なっていること。

地域でのケアマネ離脱が急増した場合は…

もう1つは、感染拡大によって他事業所が休止等に追い込まれ、その担当利用者を引き継がなければならない状況です。その場合に、ケアマネ1人あたりの担当件数が一時的に40件(ICT活用等による緩和された逓減制を取り入れている場合は45件)を超えた場合でも、逓減制にはかかりません(2020年2月の「臨時的取扱い」の通知より)。

ただし、これはあくまで「一時的・限定的」であることが前提でしょう。今回は感染力の強いオミクロン株が主流となりつつあり、先に述べたように介護従事者の離脱も一気に拡大するケースが考えられます。地域で多くの事業所が入れ替わり立ち替わり「休止」という事態になれば、ケアマネ不足が長期に生じることも想定しなければなりません。

そうなれば、稼働している事業所の多くのケアマネが長期にわたり「40件を超える」担当をこなす状況も発生しないとは限りません。もちろん、事業所としては現場のケアマネにかかる負担は最小限にとどめたいと考えるでしょう。一方で、恒常的なケアマネ不足が進行する中、感染拡大による「地域でのケアマネ離脱」の状況によっては、保険者等からの引継ぎ要請なども強まると考えられます。

ケアマネ離脱の加速で社会インフラ停止も!?

上記のようなケアマネ離脱が進むとなれば、「居宅サービスの入口が失われる」という問題にも直結します。その場合のケアマネジメントを誰が担うのかについて、国と職能団体が今から対策を協議する必要もあるでしょう。

場合によっては、アセスメントやモニタリングは「原則」リモートで──という通知等も出される可能性があります。そうした状況下では、「新型コロナ禍」に特化したケアマネジメントのあり方について、国や自治体がガイドラインを示すことも求められます。

いずれにしても、今回の感染拡大は「社会インフラの停止」といった状況が現実となる可能性も示唆されています。となれば、介護保険サービスについても、随時の「臨時的取扱い」によって補完するだけでなく、緊急時のサービス体系などを早急にまとめ上げることが必要となるのかもしれません。

コロナ禍の新・ケアマネジメント手法確立を

サービス体系といえば、昨年の感染拡大時に通所系サービス事業所がリモートによる利用者への運動指導などを行なうケースも見られました。こうした取組みを支援するIT系サービスの開発・提供も広がっています。

そして、感染拡大が進む海外(北欧など)では、こうしたデジタルによる支援をケアプランに位置づけるといった取組みも見られます。わが国のケアマネとしても、デジタル活用によるリモート型サービスの広がりを想定したうえで、それを利用者の自立支援や意欲向上へと効果的につなげていくための「新たなケアマネジメント手法」の確立が問われる時代が訪れることになりそうです。

ただし、時代状況に応じた大きな変革に際しては、事業所内の組織編成やマニュアル等の見直し、業務の合間をぬっての新たな学びなど、現場にはさまざまな負担がかかります。それをカバーしていくだけの予算措置や報酬の見直しなども、持続可能な社会インフラを整えるうえで欠かせない道筋となるでしょう。

ケアマネの処遇改善も、そうした社会インフラの維持・継続という観点からの議論が必要です。間もなく通常国会もスタートしますが、国民の健康面のインフラを支えているのは医療職だけでないという視点での支援策をしっかりと定めてもらいたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。