感染急拡大下、「応援人員が足らない」 という状況も想定した一手を

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新型コロナウイルスをめぐっては、高齢者介護施設等におけるクラスター発生も再び二桁台に上りました。一昨年来、繰り返し訪れる感染拡大の中で、介護サービス基盤をどう守っていくのかはますます大きな課題です。

事業者団体はさらなる待期期間短縮を要望

今回の感染拡大については、これまでとは桁違いのスピードがあり、次に訪れる状況がなかなか読み切れません。そのため、これまでの感染対策のあり方を検証し、より強固な見直しを図るという流れが、現場レベルでも十分に追いつかなくなっています。

従事者の大規模な離脱を防ぐべく、国は介護現場においても「濃厚接触者の待機期間の短縮」を打ち出しました(一定条件のもとで最短6日まで)。また、18日には全国介護事業者連盟が、「医療従事者と同様に待機期間なしでの継続勤務」を可能とするよう、国に要望書を提出しました。それだけ現場がひっ迫しつつある状況を受けたものといえます。

ちなみに、現段階で緩和された待機期間を適用する場合、条件の一つとして「PCR(核酸検出)検査または抗原定量検査による陰性確認」が必要です。やむを得ない場合には、抗原定性検査キット(薬事承認されたもの)でもOKとされています。なお、同キットについては配布事業も行われています。

濃厚接触者発生に向けたフローは機能するか

問題は、感染スピードがさらに速まる中で、「濃厚接触者の確認」→「そのつどの検査の実施」→「仮に陽性であった場合の対象者の医療機関受診と診断結果の把握を行なうこと」といったフローが適切に機能するかどうかです。ある時点で、事業所による上記のような管理が追いつかなくなることも考えられます。

そうなると、事業所・施設等の中には、(意図的でなくても)条件を満たせないまま、濃厚接触者の継続従事を進めてしまうケースが生じる可能性もあります。オミクロン株のように「無症状者」が多い状況下では、仮に従事者側が感染していてもサービス提供が継続されるといった事態も生じかねないでしょう。

中でも、登録ヘルパーによる直行直帰体制が多くで習慣化している訪問介護などの場合、感染スピードが上がる中で、どこまで濃厚接触者(さらには無症状感染者)の管理が可能なのかという懸念は深まります。

今後、通所系・短期入所系の再びのサービス休止などが拡大すれば、要介護者支援にかかる訪問系サービスの位置づけはますます重要となります。住宅型有料老人ホームなどで内部スタッフの離脱も見られる中、一般居宅以外でも訪問系サービスによる支援ニーズ(訪問頻度を増やすなど)が急拡大しています。いわば地域資源における要(かなめ)の地位はますます高まっており、この訪問部分への集中支援も大きな課題となりそうです。

「応援派遣」をしようにもその余力がない…

上記のような状況になってくると、やはりカギとなるのは地域における「応援派遣」などのあり方です。応援派遣については、自治体と地域の介護関係団体との連携を通じて、事前の登録および適宜の派遣が滞らないような取組みが続けられてきました。

しかし、現場における従事者不足が恒常化する中で、事業所・施設側から「人を出す」余裕が「そもそもない」というケースも目立っています。今後の感染ピーク時などは、さらにそうした訴えも増えていくでしょう。

となれば、以下のような状況も増えていくことを想定しなければなりません。それは、1つの法人内で施設と通所・短期入所系サービスを併設している場合、(まだサービス休止をする状況でなくても)通所・短期入所系を閉鎖し、その分の人員を施設に異動させるといったパターンです。施設入所者のように、「自宅をベースすることが困難」という対象者の支援をとにかく優先するわけです。

しかし、こうしたサービス編成を各法人だけに任せてしまうと、必要な支援の度合いによるサービス選別(トリアージ)の質に差が生じる可能性もあるでしょう。先に述べたように、現場のマネジメント余力も限界に達しがちな中で、利用者の支援の度合いをきちんと評価できないケースも生じがちです。

地域ぐるみ対策のバージョンアップが必要に

その結果として、組織内異動にかかる従事者の負担が過重となり、かえって離脱が加速してサービス資源が損なわれるリスクが高まることも考えられます。そうなれば、さらに応援派遣が必要となり、そのための人員が底をつくスピードも速まりかねません。

そこで必要になるのが、自治体(保険者など)による、管轄地域の事業所・施設への今後の感染状況を見込んだうえでの事前調査です。もちろん、地域の介護関係団体(社会福祉協議会や職能・事業者団体の各支部など)に協力を仰ぎつつ進めることになるでしょう。

そのうえで、各法人からの応援派遣の依頼がある・なしにかかわらず、事前評価でリスクの高い現場に向けた体制づくりに向けて、各現場との間で協議を行ないます。その結果、その地域での応援人員が足りない場合には、近隣自治体も含めた広域からの応援の依頼も前もって締結しておくという具合です。

つまり、今回のような感染スピードの中では、「依頼があってから動く」のではなく、事前のアセスメントにもとづいた予防的観点からの取組みが必要になるわけです。今回はもう遅いかもしれませんが、国としても平時からの介護現場への応援人員をどのように育成するかという計画の強化を図るべきでしょう。

【関連リンク】
介護職の濃厚接触者、やむを得ない緊急時は待機期間なしに 介事連が政府に要望|ケアマネタイムスbyケアマネドットコム

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。