通所系サービスの「送迎」評価 利用者のアクセス権にかかわる課題

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ここ数年、北海道や日本海側は冬場の大雪に見舞われています。そうした中、一般社団法人・日本デイサービス協会が、地域の特性に応じた加算の要件緩和を求める要請をサイトに掲載しました。通所系サービス「送迎」については、2015年度改定などで現場の厳しさが増しています。この時の改定のひずみも含めて、送迎のあり方が問われています。

豪雪地帯の現場から浮かぶ「送迎」の価値

豪雪地帯では、送迎前の事業所の駐車場はもちろん、一人暮らし等の高齢者宅では乗降に際しての「利用者宅」の雪かきも必要になる──非常に厳しい状況が報告されています。

こうした中での冬季の水光熱費や除排雪費は、3割以上増加するというデータも示されました。直近でのガソリン代高騰なども加わる中では、特に経営体力に乏しい小規模デイなどは、まさに存続の危機に直面しています。

豪雪地帯(厚労省が指定する地域)においては、訪問系サービスについて「特別地域加算(15%)」が適用されています。しかし、通所系サービスは対象外。そこで、「中山間地域等に居住する利用者へのサービス提供加算(5%)」を求めたことになります。

もっとも、費用増の状況を見れば、季節限定であっても「特別地域加算の対象にしてほしい」というのが本音ではないでしょうか。この点を掘り下げたとき、そもそも通所系サービスにおける「送迎」の持つ意義と、その評価のあり方が問われているといえます。

今も厳しい2015年度改定の送迎未実施減算

通所系サービスの「送迎」といえば、2015年度改定での見直しが、今でも現場運営に大きな影響を与えています。それは、利用者に対して「送迎」を行なわない場合の減算(片道47単位)が適用されたことです。

送迎について「行なった加算」ではなく「行なわない場合の減算」を適用したということは、サービス提供上「送迎は原則」と位置づけたことになります。そうであるなら、送迎にかかるコストを基本報酬できちんと保障するというのが、施策上の筋だったはず。

ところが、ご存じのとおり、この時の通所介護の基本報酬は大幅な引き下げとなり、認知症加算や中重度者ケア体制加算の新設や個別機能訓練加算などのインセンティブでカバーするというしくみとなりました。

国としては、より高いサービス価値に「利用者側が納得してお金を払う」という構造を目指したといえます。しかし、利用者にしてみれば、「事業所と居宅間の移動」という「アクセス権の保障」にも欠かせない価値を見出しているのでないでしょうか。

高齢期の免許返納が進む中での「送迎」意義

というのは、一人暮らし以外でも同居家族の高齢化により「家族による送迎」が難しくなっているからです。高齢期の免許返納が促進される昨今では、今まで以上に「送迎の価値」が高まることは間違いありません。

ちなみに2015年度改定では、送迎時に一定の要件(居宅内介助等)を満たせば「所要時間への組み込み(30分以内)」をOKとするしくみ設けられました。しかし、これは「利用者のアクセス権」にスポットを当てたというより、訪問介護での「送り出しにかかる介助」を通所介護に付け替えたという構図に近いものです。いわば、報酬上の合理化策です。

先のように「利用者の(移動という)アクセス権」が時代とともに脅かされる状況が高まる中では、「合理化」ではなく「保障の強化」が焦点となるべきでしょう。たとえば、通所系サービスの送迎実態(今回の要望にある降雪時の従事者負担のほか、送迎中の交通事故等のリスクを含む)を改めて調査し、次期改定で評価のあり方を抜本的に見直す──そうした時期に来ているといえます。

そもそも、通所系サービスは「利用者の居宅」をベースとしたものであり、「住み慣れた家でその人らしく暮らし続ける」という理念を実現する重要な資源の一つです。利用者の生活の継続性が問われるという点で、通所先までのアクセス保障がきちんとなされなければ、居宅系サービスの根っこが損なわれかねないという危機感が求められます。

国が進める施策との整合性も問われている

国としても、高齢者の「生活の継続性」を強化するための通所系サービス──という位置づけは重視しているはずです。個別機能訓練加算における「居宅での生活状況」のアセスメントはもちろん、2021年度改定でいえば入浴介助加算の見直しなどが、まさに「生活の継続性」にスポットを当てたものです。

新たな入浴介助加算は、今まで利用者がしてきた「家のお風呂での入浴」を実現するべく、多職種協働による「家の浴室」等の環境整備まで含めた支援を評価するものです。家での暮らしと通所先でのサービスは、ケアマネジメント上の目標に向けた「同一線」上にありますが、このことを報酬上の要件でさらに明確化したことになります。

となれば、通所系サービスの送迎は、上記の「同一線」をつなぐうえで欠かせないものであるはず。この部分を現場実態に沿って評価できなければ、「線」は切れてしまいます。国が推し進めようとする施策との間で、大きな矛盾となりかねません。

2023年から始まる介護給付費分科会でも、国のビジョンおよび時代の状況との整合性をとりつつ論点化が求められます。たとえば、先に述べた「特別地域加算」のしくみについて、条件付きで通所系サービスにも適用するなどの対処も検討すべきでしょう。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。