「紹介状なしでの大病院等の受診」にかかる定額負担引き上げ。注意すべき点は?

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2022年度の診療報酬改定では、患者の医療費負担に関係する見直しも行われました。それが、紹介状なしで一定規模以上等の医療機関を受診した場合の「定額負担」についてです。具体的な見直し点は、負担額引上げのほか、対象となる医療機関の拡大など多岐におよびます。施行は2022年10月からとなります。

「定額負担」のしくみについて改めて整理

今回の見直し対象となった「定額負担」について、改めてしくみを整理しましょう。

この「定額負担」は、2016年度から導入されています(それ以前も、選定療養費として「保険診療費とは別の特別料金」を徴収できるしくみはありました)。これは、医療が高度化する中、地域で高度急性期を担うような中核病院などに軽症患者が集中するといった状況を避けるためのしくみです。

ポイントは、この「定額徴収」を一定の医療機関についての責務(除外要件を除いて必ず徴収しなければならない)とした点です。その対象は、今改定前で「特定機能病院(※1)」または「一般病床200床以上の地域医療支援病院(※2)」となっていました。

なお、地域医療支援病院以外の一般病床200床以上の医療機関については、定額徴収を「責務」とはしていません。ただし、この後で述べる除外要件のケースを除いて、上記で述べた「選定療養費」として特別の料金を徴収することが可能となっています。

※1・特定機能病院…高度先端医療に対応する病院として厚労大臣の承認を受けたもの
※2・地域医療支援病院…かかりつけ医等への支援など地域医療を支える機能を有した病院として、都道府県知事の承認を受けたもの

初診で2,000円アップ。それだけではない?

さて、今改定での見直し点ですが、大きく分けると4つあります。(1)定額負担の金額が引き上げられたこと。(2)医療機関側にも「保健給付の控除」というペナルティが加わったこと。(3)定額負担を求める「責務」がある医療機関の範囲が広がったこと。(4)先に述べた「除外要件」が見直されたことです。

まず(1)の引き上げですが、たとえば医科(歯科以外)の場合、初診について「5,000円→7,000円」、再診では「2,500円→3,000円」となります。初診での2,000円アップとなれば、それだけでも負担感は小さくありませんが、実際はそれ以上に負担が大きくなる可能性があります。それは(2)の導入によるものです。

(2)は、定額負担を求める患者の初診・再診について、以下の点数を保険給付から控除するというものです。たとえば医科であれば、初診で200点、再診で50点が控除されます。

ここで注意したいのは、(1)の徴収額は、あくまで最低金額だという点です。もっとも、これまでの医科での徴収額の状況を見ると、ほぼ最低金額となる5,000円台が95%以上にのぼっていました(中医協資料より)。国としては、紹介状なしの受診の抑制効果を上げるうえで、医療機関側にも強い対応を促す必要性があるわけです。そこで、(2)を導入することで、さらに高い徴収額の範囲が広がるような仕掛けを設けたことになります。

対象医療機関の拡大や除外要件の見直しも

(3)の対象医療機関の拡大については、2021年の医療法改正が関係しています。この時の改正で、紹介受診重点医療機関というカテゴリーが誕生しました。これは、「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関とされています。たとえば、がん手術前後の外来であるとか、外来によるがん治療(化学療法や放射線治療)など、より高度な医療資源を活用するケースがあげられます。

この新たなカテゴリーのうち、一般病床200床以上の医療機関に対し、新たに「定額負担を徴収する義務」が設けられました。これにより、200床以上の医療機関の大半が、定額負担義務化の対象となりそうです。

もう1つの見直しが(4)の「除外要件」ですが、そもそもこの要件には、「定額徴収を求めてはいけない」ケースと「求めなくてもよい」というケースがあります。今回の見直しは後者にかかるものです。たとえば、後者には「その医療機関が直接受診する必要を認めた患者」という規定がありますが、このうち「急を要しない時間外の受診」など、患者都合による受診は認められないことが明確化されました。

10月の施行に向け、利用者への情報提供も

以上のような見直しのうち、患者の受診動向に大きな影響を与えそうなのは、やはり(1)(および(2)との関連)による定額負担の引き上げでしょう。介護保険を利用している高齢者の場合、もともとかかりつけ医がついていて、大病院受診の際にも紹介状を受けたうえで…というケースは多いかもしれません。

しかし、たとえば現在受診している病院への不信があり、知人等から別病院の評判を聞いて、いきなり外来に赴くなどのケースは想定されます。特に他に開業医が少ないような地域では、選択肢の乏しさから大病院への直のアクセスも生じかねません(こうした開業医が少ない地域事情については、パブリックコメントでも「定額負担増で受診控えから重症化をもたらす」という批判が出ています)。

担当ケアマネなども、「利用者の受診にかかる意向」への注意を払いつつ、今回の見直し点の情報提供を行なうことが必要になりそうです。また、この見直しの施行(2022年10月)が、一定以上所得の後期高齢者の2割負担スタートと重なる点も気がかりです。国としても、高齢患者の受診動向について、改定後の実態把握を進める必要があるでしょう。

【関連リンク】
医療保険の訪問看護、BCP策定の義務付け決まる 経過措置2年 中医協答申|ケアマネタイムスbyケアマネドットコム

【関連資料】

令和4年度診療報酬改定 個別改訂項目について(※該当部分は119ページ【紹介状なしで受診する場合等の定額負担の見直し】)

 

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。