浮かぶ「居宅ケアマネ処遇」の厳しさ 介護従事者処遇状況等調査をどう読むか?

介護給付費分科会で、「令和3(2021)年度介護従事者処遇状況等調査」の結果(案)が示されました。各種処遇改善加算のほか、2021年度の報酬改定やコロナ禍が処遇状況にどう影響したのかが現れています。ここでは、今調査から浮かぶ「居宅ケアマネの処遇状況」に焦点を当ててみましょう。

ケアマネの月額平均給与は5,640円UPだが

過去の同調査でも、介護職員以外の職種の処遇状況が取り上げられています。たとえば、居宅介護支援事業所は特定処遇改善加算の対象外ですが、施設等のケアマネは「その他の職員」として処遇改善の対象となりえます。一方で居宅ケアマネについては、同一法人内に算定可能な事業所があったとしても、原則として処遇改善の対象とはなりません。

こうした状況下、ケアマネ全体の処遇状況はどうなっているのでしょうか。まずは、各種処遇改善加算を取得していない事業所・施設も含めた「全事業所」について、職種ごとの月あたり平均給与額に着目します(平均給与額とは、「月額の基本給」+「月ごとの手当」+「一時金を月あたりの金額」をさします)。

それによれば、2021年9月時点(a)でのケアマネ(介護支援専門員)の月あたり平均給与額は、33万2,640円。その1年前の2020年9月時点(b)で32万7,000円なので、1年で5,640円の増加となっています。

相談員の給与がケアマネを上回っている!?

これに対し、各種処遇改善加算の主ターゲットである介護職員は、aで31万5,640円、bで30万8,260円、a-bの増加額は7,380円。aはケアマネの方が高いですが、増加額は介護職員の方が1,700円ほど高くなっています。ここに、2022年2月からの新たな補助金や加算が加われば、ケアマネとの給与差はさらに縮まることになるでしょう。

ここで注目したいのが、相談支援業務にたずさわる生活相談員や支援相談員の給与額です。bの時点でケアマネとほぼ同額になっていますが、これがaになると33万6,830で、4,000円以上ケアマネを上回ります。

ケアマネの実務研修受講試験の受験資格には、「施設等で一定以上の相談援助業務(生活相談員等)に従事していること」があります。極端な話、仮に国家資格を持っていなくても、受験資格に必要なキャリア要件を満たしていれば、ケアマネの給与を上回る可能性もあるわけです。介護従事者のキャリア構築と報酬の関係でいえば、逆転現象が生じ、その差がさらに広がっていることになります。

浮かんでくる「居宅ケアマネ」の厳しい実態

上記については、施設等のケアマネまで含めたすべてのケアマネについての話です。ここで、各種処遇改善加算を取得している事業所に限定してみましょう。すると、ここでは生活相談員・支援相談員よりケアマネの方が月あたり給与額は上回ります(特定処遇改善加算を取得しているケースでは、リハビリ職よりも高くなっています)。要するに、居宅介護支援以外のケアマネ(施設等のケアマネ)に限れば、組織内での相対的な給与額はそれなりに高くなっていることになります。

逆に言えば、全事業所から各種処遇改善加算の算定事業所を除いた場合、つまり居宅ケアマネの給与がいかに低いかが浮かび上がるわけです。特定処遇改善加算の施設ケアマネ等への恩恵がそれなりに高い状況もうかがえる中、特定処遇改善加算の導入により、一部の施設ケアマネと居宅ケアマネの「格差」はさらに広がったと見ることもできるでしょう。

bからaへの「伸び」という視点でも、居宅ケアマネの厳しさが垣間見えます。たとえば、全事業所対象では、事務職の給与額の伸びがケアマネのそれを上回っています。一方、各種処遇改善加算を取得している事業所では、ケアマネの伸びが上回っています。

これは何を意味するかといえば、たとえば居宅介護支援事業所内で、ケアマネよりも事務職の処遇改善が、表に出ている数字以上に上回っているという可能性です。

ケアマネジメントの価値がないがしろに…

ここで思い起こされるのが、2021年度改定での居宅介護支援における「担当件数の逓減制の緩和」でしょう。緩和に際しては、ICT活用や事務職配置が要件となっています。その「事務職」に対する処遇改善が、「ケアマネ」の処遇改善より優先される──一部で、そうした流れが形成されている仮説が浮かびます。

逓減制の緩和に踏み込む事業所は、厚労省のデータ(介護給付費実態統計など)によれば、現時点でまだ多くはありません。しかし、居宅介護支援事業の潜在的なトレンドとして、「ケアマネジメント本体」よりも「給付管理業務等の事務作業」にかかるコストを重視する流れが形成されつつあるのかもしれません。

仮にこうしたトレンドが生じているとすれば、深刻な事態といえます。なぜなら、居宅介護支援事業所自体が、介護保険におけるケアマネジメントの価値を見失いつつあることの現れとも言えるからです。

今後の居宅ケアマネの処遇改善に向けては、ケアマネジメントの持つ価値をきちんと高めることが欠かせません。それが業界内でも揺らぐとなれば、処遇改善はおろか居宅ケアマネ不足をさらに助長させることになるでしょう。それは、中長期的に見れば、ケアマネメントの崩壊を意味することになります。
ケアマネジメントの価値の明確化と、それにともなう居宅ケアマネの処遇改善──これらは、もはや緊急を要する課題といえます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。