介護保険部会も重視する「かかりつけ医機能」 介護側の制度にどう組み込まれるか?

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12月5日の介護保険部会で示されたとりまとめ案、「在宅医療・介護連携」の項では、愛護と医療の連携強化にかかるかかりつけ医機能のあり方にふれています。現在、同じ社会保障審議会内の医療部会で「かかりつけ医機能」の検討が行われていますが、介護保険制度の見直しにどうかかわってくるでしょうか。

そもそも「かかりつけ医」の定義とは何か?

ご存じのとおり、2024年度の介護報酬・基準改定は、診療報酬側とのダブル改定となります。法改正についても、ここ数回の制度見直しと同様に医療法等との一括法で審議される可能性が高いでしょう。つまり、介護と医療で双方がかかわり合う部分において、大きな改革を進めやすい環境にあるわけです。

そうした中、医療部会の方で示されたテーマが「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」です。そもそも「かかりつけ医」というと漠然としたイメージがありますが、2013年に日本医師会・四病院団体協議会による定義が、以下のように示されています。

「①何でも相談できるうえ、②最新の医療情報を熟知していて、③必要な時には専門医・専門医療機関を紹介でき、④身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」というものです。

「かかりつけ医=診療所の医師」というイメージがありますが、上記の定義に沿えば「病院の医師」でもかかりつけ医に含まれます。どのような診療科に属しているかということも、定義を左右するものではありません。ケアマネなども、この点を頭に入れつつ、今後の制度の行方を見ていく必要があります。

「かかりつけ医機能」を整理するとどうなる

その「かかりつけ医」の「機能」を発揮させるとは、どういうことでしょうか。これについても、先の協議会提言に明記されています。主なものを整理してみましょう。

①日常行なう診療⇒患者の生活背景を把握し、適切な診療および保健指導を行なう

②自己の専門性を超えて診療や指導を行なえない場合⇒地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する

③自己の診療時間外⇒地域の医師、医療機関等と必要な情報を共有し、相互に協力して休日や夜間も患者に対応できる体制を構築する

④日常行なう診療のほか⇒医療をとりまく社会的活動・行政活動(健診・がん検診、産業保健など)に参加するとともに、保健・介護・福祉関係者との連携を行なう

⑤その他⇒在宅医療の推進、患者や家族への医療に関する適切・分かりやすい情報提供

 たとえば、③では地域における多機関連携が明示されています。ケアマネにとっては「担当利用者のかかりつけ医」だけでなく、地域の中で「かかりつけ医機能」を有する幅広い医師が、「連携」の対象となるわけです。このあたりが次期改正にもかかわってきそうです。

「かかりつけ医機能」についての情報公開も

医療部会では、上記の機能を強化するために、以下のような制度改正を提案しています。

1つは、「かかりつけ医機能」の定義を法定化すること。ここに対介護連携の具体的な内容(個々の患者にかかる情報共有だけでなく、日常的なさまざまな場面での連携含むなど)が明記されれば、これに合わせた介護側の制度の見直しも行われることになります。

2つめは、各医療機関が有する「かかりつけ医機能」について、都道府県に報告するとともに、その情報を国民に分かりやすく提供すること。たとえば、こうした情報を提供できるプラットフォームを構築し、幅広い情報提供を可能にするしくみが考えられます。

3つめは、継続的な医学的管理が必要とされる患者(複数の慢性疾患を有する高齢患者など)に対して、患者が希望する場合に、医療機関が「かかりつけ医機能」として提供する医療の内容を説明すること。高齢者の場合、こうした書面などを示されても分かりにくいこともあるでしょう。その場合、担当ケアマネが何らかの形でエスコートすることなどが省令で示される可能性もあります。

ケアマネ側のしくみにはどんな影響が?

こうした「かかりつけ医機能」にかかる制度整備については、医療部会の進め方のイメージでは、2024年度から完全スタートという形にはなっていません。しかし、その土台としての診療報酬上のしくみや介護報酬・基準側のしくみが整えられることは想定されます。

実際、介護保険部会のとりまとめ案では、冒頭で述べた「在宅医療・介護連携」の項において、「医療と介護の連携を強化するため、かかりつけ医機能の検討状況を踏まえて、日必要な対応を検討することが適当」としています。たとえば、2023年の介護給付費分科会で論点の1つに上がるかもしれません。

一例としては、居宅介護支援の特定事業所加算において、かかりつけ医機能を有する地域の医療機関との一定の連携実績(研修に際して講師として招へいするなどを含む)を要件に含めるといった具合です。

ケアマネの中には、利用者の療養状況などで困りごとがあると、研修等で知り合った医師にアドバイスを求めるといったケースもあるでしょう。こうした日常的な場面での連携を、制度上に位置づけていく動きはますます大きくなっていくと思われます。

今から、「地域でかかりつけ医機能を有している医師」がどこに、どれだけいるのかを改めてリサーチしておく必要もありそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。