2024年度改定で一気浮上のテーマに? 利用者の「服薬」にかかる情報連携

利用者の在宅生活の継続を進めるうえでは、ADL・IADL、栄養・口腔の状態の維持・向上だけでなく、「適切な服薬管理」も重要な課題となります。2024年度改定に向け、「服薬管理」をテーマとした居宅のケアマネジメントやサービス担当者間の連携は、どのように推進されていく可能性があるでしょうか。

ケアマネジメントでも重視される服薬管理

2024年度からのケアマネの法定研修にも反映される「適切なケアマネジメント手法」では、「基本ケア」の入口段階で、利用者の処方薬の内容や服薬状況、服薬管理にかかる本人・家族の理解度などがアセスメント項目に示されています。見方によっては、栄養改善や口腔機能の維持・向上にかかる情報以上に重視されているといえます。

もちろん、居宅のケアマネとして、「利用者の服薬状況をアセスメント・モニタリングすることは基本中の基本」ととらえているでしょう。ケアプランでも、適切な服薬管理を長期・短期目標、あるいは課題解決のための支援内容に位置づけるケースはあるはずです。

また、2018年度の改定では、訪問介護の提供時に得られた服薬をめぐる情報(例.利用者の服用すべき薬が大量に残っている、複数回分の薬を一度に服用している、など)を、サービス提供責任者を通じてケアマネに伝えるといった規定(留意事項)が設けられました。利用者の服薬状況を、多機関・多職種間で適切に共有することが、制度上でも重視されているわけです。この流れは、2024年度改定でも、さらに強化されると考えられます。

医療機関・老健での処方見直しの取組み

問題は、利用者が医療機関に入院したり、老健に入所して、その後に退院・退所したケースです。その時点で、入院・入所前とは処方薬が変わってくる可能性があります。

たとえば、診療報酬上では、入院患者が6種類以上の内服薬(規定されたものを除く)が処方されている場合、処方内容を変更し、療養上必要な指導を行なった場合に、「薬剤総合評価調整加算」が算定されます。同加算の区分では、評価を行なったうえで、実際に内服薬や2種類以上減らすことができると上乗せ区分が適用されます。いわば、減薬に向けたアウトカム評価が導入されているわけです。

また、老健では、2018年度改定で「かかりつけ医連携薬剤調整加算」が設けられました。これは、老健側と入所者のかかりつけ医が事前に合意して、減薬の取組みを行なった場合に算定されます。2021年度改定では、取組みの実効性を上げるための再編が行われましたが、やはり「1種類以上の減薬」を要件としたアウトカム評価が設けられています。

「減薬」に向けた評価もさらに強化される?

このように、いったん居宅のケアマネジメントを離れた時点での処方の変更や減薬にかかるインセンティブが設けられています。ケアマネとしては、退院・退所加算を算定する場合の情報連携が図られる際に、特に注意しながら居宅のサービス担当者とへの情報伝達を図っていくことが必要でしょう。

というのは、2024年度の診療報酬との同時改定で、このポリファーマシー(多剤投与)の解消に向けた「減薬」の取組みは、さらに強化される可能性が高いと思われるからです。

ちなみに、8月7日の介護給付費分科会の資料によれば、老健の「かかりつけ医連携薬剤調整加算」の算定は決して芳しいとはいえません。算定している施設は1割以下。アウトカム評価の区分算定は1.6%にとどまります。ただし、「薬剤調整の必要は高い」と考えている施設は95%以上に達しています。

現場の薬剤調整へのモチベーションは高いわけですから、国としては加算単位の引き上げを含め、算定向上に結びつけようとするはずです。減薬により医療費の抑制にもつながるとなれば、思い切った報酬上の手当てをとることは十分に考えられるでしょう

科学的介護推進体制加算の様式見直しも?

そのうえで頭に入れておきたいのは、居宅介護サービス側でも、「なぜ、その減薬を行なったのか」、そして「減薬によって在宅生活上で高まるリスクはどうなのか」といった、医療機関・施設側からの情報をきちんと受け取る体制が求められることです。

たとえば、ケアマネが利用者の入院・入所していた医療機関・施設から情報を受け取る際、服薬内容だけでなく、上記のような情報を得るための様式などが整備されるかもしれません。また、減薬が実施された旨を、LIFE対応の科学的介護推進体制加算の情報提供様式に反映させることも考えられます。

現行では、科学的介護推進体制加算において、「服薬情報」は「任意」となっています。これを「必須」項目としたうえで、かかりつけ医等からの注意事項等を何らかの形で反映させるといった方法も想定されるでしょう。

2024年度改定では、居宅介護支援や訪問系サービスでも科学的介護推進体制加算が適用されることが濃厚となっています。仮に同加算の情報提供様式が改定された場合、その影響範囲は大きく広がることになります。

いずれにしても、ケアマネおよび居宅のサービス担当者としては、利用者の「服薬状況」に関して、意識を高めることがますます求められる時代となりそうです。薬剤師との連携を報酬上で評価する動きなども含め、事業所内でも服薬をめぐる見識をいかに高めていくかが問われることになるかもしれません。
 

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。