あっさり引っ込んだ「LIFE加算の適用拡大」。 その背景は? 今後に注意したい点も…

居宅介護支援や訪問系に関係する2024年度改定の動向で、注目されていたのが「LIFE対応加算(科学的介護推進体制加算など)の適用拡大」です。11月27日の介護給付費分科会では、この訪問系サービス等への対象拡大を見送る方針が示されました。

複数回モデル事業を実施したにもかかわらず

人材不足や業務負担の拡大に直面している居宅介護支援や訪問系サービスの現場にとっては、新たな実務増につながるしくみが見送られたことで、ほっと一息という人もいるのではないでしょうか。とはいえ、複数回にわたるモデル事業を実施してまで「拡大」に意気込んでいたことを考えると、あまりに「あっさり」という印象を抱く人も多いでしょう。

ましてや、LIFE情報をめぐっては、2023年の法改正で、利用者を含めて介護情報等を電子的に閲覧できる情報基盤の構築が明確に示されたばかりです。改正法では、電子化された介護情報等の共有・活用を推進するための地域支援事業も位置づけられました。この介護情報等の中には、LIFE情報を含める方向で、厚労省内でも検討が進んでいます。

問題は、LIFE情報を利用者が閲覧できるとなったとき、たとえば「訪問系サービスしか使っていない」といった利用者は、閲覧できる介護情報が限られてくることです。先に述べた地域支援事業には。介護保険の財源が使われています。利用者の保険料で運営される事業の中で、人によって活用できる範囲が変わってくるとなれば、財源活用を通じた「不公平感」が生じかねないことになります。

2027年度改定にターゲットを切り替え?

もちろん、先の法改正の施行は「公布後4年以内の政令で定める日」となっています。同改正の公布は2023年5月19日ですから、4年後は2027年5月。次々回の報酬・基準改定となる2027年4月に、LIFEにかかる何らかの改定が施行されるとすれば、施行期日的には間に合うことなります。

とはいえ、国会で制定される改正法の「中身」となる点や、複数回のモデル事業を実施してまで下準備を進めてきた点を考えても、今回の「撤退」は異例と言えます。

モデル事業を実施後の居宅介護支援や訪問系サービスへの調査でも、「LIFEの利用が介護の質向上に寄与する」と「思う」回答は、(無回答を除いて計算した場合に)おおむね5割かそれ以上に達しています。厚労省としては、算定が任意である「加算」であれば、十分に導入できると考えるのが普通です。

それでも「見送った」ということは、逆にいえば、それだけ現場側の環境が「対応に追いつかない」ほど深刻であることを示しています。むしろ、「ここで対象を拡大して、仮に算定率が極端に低くなったり、現場の混乱が拡大すれば、2027年度の実施も危ぶまれる」という判断もあったと思われます。

見送り背景の1つが、起こりうる現場の混乱

ちなみに、今回の見送りの背景の1つが、以下のような点です。それは、居宅の場合に「同一の利用者に複数の事業所が(少なくとも、居宅介護支援以外に)サービスを提供している」ことから、利用者の生活状況のどんな部分を評価するのか、各サービスがそれぞれにどのように評価するのかという課題です。

たとえば、通所介護で科学的介護推進体制加算が適用されている場合、LIFEに提供する評価情報が居宅介護支援や訪問系サービスと異なるケースも出てくるでしょう。ADLやIADL、認知症の状況などは、その人が過ごしている場(通所の事業所内なのか、住み慣れた家の中なのか)によって、変わってくることも大いに想定されるからです。

当然、このあたりをどのようにすり合わせるかというノウハウが確立していなければ、チームケアにおける総合的な支援方針に混乱が生じかねません。ケアマネとしても、ケアプランの作成・見直しにおいて、利用者の状況というより「LIFE情報」に振り回されるという本末転倒な状況も生じるわけです。

2027年度に向けての「仕掛け」に注意を

もっとも、今回は「適用拡大」が見送りとなったものの、厚労省としては2027年度改定に向けた下準備をすでに進めようとしているのは間違いないでしょう。

今回のLIFEの入力項目等の見直しでは、現場の実務負担の軽減を図るための簡素化(複数加算で重複する項目の一本化など)が、まずあげられています。一方で、「フィードバックを充実させる観点から、新たな項目を盛り込むこと」の検討も提案されています

仮に、居宅介護支援や訪問系サービスへのLIFE対応加算への適用拡大を視野に入れるのであれば、ケアマネからの(利用者の居宅内や地域での生活の状況などを含む)モニタリング情報を一部反映させる項目などが付け加えられる可能性もありそうです。

ここで連想されるのが、やはり「適切なケアマネジメント手法」や、それを反映するべく先だって改定された「課題分析標準項目」でしょう。そこでは、利用者が家でしている行為に関するアセスメントやモニタリングでの確認項目が詳細に掘り下げられています。

厚労省としては、これらを「すべて確認すること」を求めてはいませんが、LIFEへの情報提供項目を今後再編していくうえで、土台にすることが考えられます。今は「適用拡大見送り」でほっとしている現場も、次に何が仕掛けられるのかについて、LIFE項目の改定内容に目を凝らすべきでしょう。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。