診療側6月施行に合わせるサービスは一部。他サービスの対医療連携強化への影響は?

2024年度の診療報酬改定では、薬価を除いて施行時期を6月に後ろ倒しすることが決まっています。これを受け、12月18日の介護給付費分科会では、介護報酬についても一部サービスを6月施行とする方針が示されました。ただし、それ以外のサービスが4月施行のままとなった場合の影響も懸念されます。

介護側と診療側でインセンティブのズレが?

2024年度改定での大きな軸の1つが、診療報酬との同時改定をふまえた対医療連携の強化です。「連携の強化」となった場合、その実効性を上げるには「双方」ともに協力の意識を高めることが不可欠です。一方(介護側)だけに報酬上のインセンティブを図っても、十分な機能を発揮させるは難しいでしょう。

つまり、今回の介護報酬側の改定内容に、診療報酬側の改定内容がどのように対応しているかが大きなポイントになります。双方で対応する改定が行なわれたとして、その施行時期がズレた場合、わずかな期間でも、現場の対応やそれにともなう利用者(患者)の状態に影響がおよぶことになります。

その点を考えれば、介護側の6月施行が医療系の一部サービスにとどまるという対応でいいのかどうか、きちんと精査することが必要でしょう。利用者の医療ニーズが高まる中だからこそ、連携体制づくりなどをスタートさせるタイミングは特に重要です。

たとえば、協力医療機関との連携への影響

以上の点を頭に入れ、対医療連携に関する審議報告の中から、「診療報酬側の対応はどうなるのか」が気になる一例を取り上げます。

まず、今回の審議報告で、施設・居住系における対医療連携にかかる大項目として、協力医療機関との連携体制の構築があります。

現場実務への影響が多い内容としては、1年に1回以上、協力医療機関との間で「利用者の病状の急変」が生じた場合の対応の確認(何らかの協議機会など)が必要となります。居住系は努力義務ですが、施設系は3年の猶予を設けたうえで義務づけが図られます。

また、運営基準からの上乗せとして、協力医療機関との定期的な会議の実施を要件とした加算・区分も設けられます。この会議では、利用者の現病歴等の情報共有が行われるという点で、医療機関側がどれだけ前向きに「協力」してくれるかも大きなポイントです。

「たった2か月」でも軽視できない問題

上記の「協力」に関する医療側のインセンティブですが、当然ながら診療報酬改定を審議する中医協でも検討が進んでいます。実際、中医協では「協力医療機関であることについては、現在、何の(報酬上の)評価もない」と指摘されています。そのうえで、日頃から利用者の病歴などを共有する場合について、「(高齢者施設への)通常の往診よりも高く評価されるべき」という意見も出ています。

こうした指摘を受け、たとえばICT等の活用によって協力医療機関の医師が、施設等の利用者の病歴を常に確認できる体制をどのように評価するかが論点となっています。また、施設側の利用者の容態急変時における往診等でも、新たな評価が検討されています。

新たな基準や評価が誕生した場合、先の「施行時期の2か月のズレ」が影響してくる可能性もあります。たとえば、容態急変リスクの高い利用者が年明けくらいから入所したとして、協力医療機関との間で容態急変時の対応が定まっていないと、「わずかなズレ」が利用者の安全や生命を左右しないとも限りません。

介護側も努力義務であったり、義務化までに3年の猶予が設けられている点を考えれば、「2か月のズレ」の影響は大きくないのでは──と思われるかもしれません。しかし、利用者の医療ニーズが高まる中、介護現場側の緊張度は高まっています。スタートダッシュでつまづくとなれば、現場のその後の士気を考えると、決して影響は小さくないはずです。

ケアマネも注意、入院時情報連携加算見直し

もう1つ気になるのは、ケアマネに関することです。介護報酬側の審議報告では、居宅介護支援の入院時情報連携加算について、情報提供のタイミングの見直しが示されました。

現行の要件で、利用者の入院から「3日以内」「7日以内」の情報提供となっています。これを「入院当日」「3日以内」へとスピードアップを図るものです(事業所の休日等には配慮しながら要件設定が行われる)。

このスピードアップに対し、診療報酬側での入退院支援加算の見直しはどうなっているのでしょうか。つまり、区分によって「退院困難な患者の抽出」が「3日以内」「7日以内」となっている点です。これが、入院時情報連携加算の現行での日数と符合しています。

この場合、「情報提供を行なうのはケアマネなので、情報提供が早まる分には、医療側に影響ないのでは」と考えがちです。ここで注意したいのは、入院前からの患者支援を評価した入院時支援加算で、医療側の事前の情報収集が拡充される可能性があることです。

そうなると、入院時情報連携加算にかかる提供情報と同レベルの情報を、医療側が「前倒し」でケアマネに求めるという動きが強まるかもしれません。そもそも入院当日の情報提供といったスピードアップを図るには、早期からの準備が必要です。今回のケアマネ側の改定は、こうした診療側の入院時支援加算の見直しとリンクしていると考えられます。

そうであれば、「2か月の後ろ倒し」によって、ケアマネ側にかかるプレッシャーも4月時点とは大きく変わる可能性があります。ケアマネ側が「ようやく仕事のリズムがつかめた」と思った矢先、医療機関からの要求ハードルがさらに高まれば、現場も混乱が生じかねません。こうした点にも注意が必要です。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。