BPSD予防を推進する新視点の加算。 ケアマネも注目したい要件となる評価指標

2024年度改定の審議報告で、ボリューム的に目立つ項目の1つに認知症の対応力向上があります。2023年の「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の成立も、大きな後押しとなっています。具体的な改革の中で注目されるのが、認知症のBPSDの予防や早期対応の推進を目的とした新加算です。

適用サービスは限定的だが、将来的には…

現行での認知症のBPSDに関する取組みの評価といえば、「認知症行動・心理症状(以下、BPSD)緊急対応加算」があります。BPSDが現れた際の緊急的な対応を評価したものです。

これに対し、今回示された新加算は、BPSDの現れを未然に防いだり、早期に対応するために「平時からの体制整備」などを評価したものです。この点で、これまでの認知症関連加算にはない評価が盛り込まれています。

この新加算の対象サービスは、施設系サービスのほか認知症GHです。適用対象は限られていますが、新加算に新たな視点が盛り込まれていることで、「まずは対象と絞ってスタートさせる」という意図が感じられます。

逆に言えば、今回の創設で一定の効果が認められた場合に、将来的には小多機系や通所系、さらには訪問系などに広がっていく可能性もあるでしょう。そうなれば、ケアマネジメントのあり方にも影響がおよんできます。

実際、適切なケアマネジメント手法の「認知症がある人のケア」では、ケアマネジメントにおいて留意すべき点として「BPSDが生じる要因を少なくできるよう、必要な支援を組み立てていく」ことが述べられています。ケアマネとしても、BPSD予防に向けた実務はすでに織り込まれているわけです。

新カリキュラムによる研修修了が要件に

今回示された新加算について、現時点での詳細を見てみましょう。11月27日に示された案では、加算名(仮称)は「BPSDチームケア加算」で、区分は2つ。IIの方が、専門研修を受けた職員配置が手厚くなるため、単位数は多くなる予定です。想定されるI・IIの要件を整理すると、以下のようになります。

まず「人員配置要件」ですが、BPSDの予防に資する専門的な研修を受けた職員を配置していることが求められます。

Iについては、認知症介護実践リーダー研修。IIは、認知症介護指導者研修です。いずれのカリキュラムも、BPSD予防に資する内容を含む改訂が行われる予定です。なお、IIについては、実践リーダー研修とともに日本版BPSDケアプログラム研修等(認知症介護研究・研修東京センター等の実施するもの)を修了した職員もプラスされます。

国が定める指標でBPSDを客観的に評価

次に「取組み要件」ですが、I・IIを通じて4段階の取組みが設定される予定です。

具体的には、(1)「人員配置要件」にもとづいて配置された職員が、事業所・施設内でBPSDの予防に資する認知症ケアの指導を行なっていること。(2)認知症日常生活自立度II以上の利用者に対し、国が定める評価指標を用いてBPSDの客観的評価を行なうこと。(3)(2)の評価を行なったうえで、チームでBPSDの予防に資するケアを提供することです。

(4)さらに、(3)のチームケアの実施後の取組みとして、チームケアの実施をめぐる計画的な評価・見直しのほか、事例検討を行なうことなども求められる予定です。

利用者のBPSDはどう分類されるのか?

気になるのは、(2)の「国が定める評価指標」でしょう。現時点で厚労省が示している指標は2つ。A.25項目のBPSDの状態を数値化した「BPSD25Q」、B.認知症高齢者の健康関連QOLを評価する「Short QOL-D」です。

A.は、認知症の人のことをよく知る介護者などへのBPSD解決に向けた質問票として作られた「BPSD+Q(27項目)」から、「せん妄」関連の2項目を除いたものです。「他者を傷つけるような乱暴な言葉を発する」といった「過活動スコア(13項目)」と、「やる気がない、自分からは動かない」などの「低活動スコア(6項目)」、「異食や過食、拒絶」などの「生活関連スコア(6項目)」からなります。

これらの項目に沿って評価する中で、利用者のBPSDが「過活動」か「低活動」か「生活関連」かを評価することにより、ケアの手がかりとします。そして、それぞれに「重症度」や「(対応の)負担度」などを評価したうえで各スコアを合計することにより、ケアの前後での状態の比較もできるという具合です。

「その人らしく過ごせているか」にも着目

一方の「Short QOL-D」は、認知症高齢者の健康関連QOL評価票(QOL-D)・31項目のうちから、主に「楽しんでいる状況(9項目)」にスポットを当てたものです。たとえば、「食事を楽しんでいる」とか「訪問者に対して嬉しそうにする」といった状況が、どの程度見られるかを評価するしくみです。

これにより、BPSDの現れだけでなく、その人らしく過ごせているかどうかにも着目しながら、尊厳確保に向けた認知症ケアの手がかりをつかみやすくする狙いがあります。

今回の新加算を機に、現場でもこれらの指標に接する機会は増えていきそうです。いずれは、LIFEへの提供データにも含まれてくるかもしれません。居宅のケアマネとしても、厚労省が今後HP上で掲載する指標様式をダウンロードしつつ、アセスメントに活かせる部分はないか検討してみてはどうでしょうか。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。