基本報酬か、逓減制緩和分の増収か… ケアマネの処遇改善はどこでまかなう?

2024年度改定については、15日の基準の諮問・答申に続き、間もなく基本報酬や加算等の具体的な要件・単価が示されます。居宅のケアマネにとって気が気ではないのが、ここまで「ケアマネの処遇改善」に向けた明確な方策が示されていないことでしょう。

ケアマネの明確な処遇改善策は示されず

2023年度の補正予算で、介護職員を中心に2~5月分の処遇改善策となる補助金が設けられました(6月以降、介護報酬に組み込まれることが想定されます)。また、介護報酬上では、現行の各種処遇改善加算を一本化し、新年度から配分・ベースアップルールを統一した4区分の加算へと再編されます。

しかし、いずれの改革も居宅介護支援は対象外です。東京都など自治体が独自で行なう処遇改善策はありますが、全国一律で居宅ケアマネのための明確な処遇改善策は、現時点では示されていません。上記の補助金を介護報酬に組み込む際に「居宅ケアマネも対象にするか否か」が論点となる可能性はありますが、大きな期待はできないでしょう。

となれば、現時点での焦点は、既存報酬の中でいかに処遇改善につながる単価の引き上げがなされるかということになります。具体的には、(1)居宅介護支援の基本報酬(指定を受けた場合の介護予防支援の報酬も含む)、(2)特定事業所加算──この2点について、それぞれの単位がどうなるかがポイントです。

特に(2)については、介護給付費分科会の審議報告でも、要件変更にともなって「評価の充実を行なう」とされているので、一定程度の単位引き上げが見込まれます。

基本報酬等の設定によっては人材流出加速も

しかし、仮に(1)の基本報酬、および(2)の加算単位の引き上げが十分でない場合、居宅のケアマネにとってはダメージが大きいでしょう。物価高騰に加え、他産業の賃金水準が上昇、そして他サービスで新たな補助金が交付されることにより、施設等ケアマネや相談員などとの賃金格差がますます広がっています。

その状況を考えれば、居宅ケアマネの「取り残され感」はいっそう強まることになります。結果として、「居宅ケアマネが集まらない」だけでなく、「他サービスや他産業へとケアマネ人材が流出する恐れ」が高まります。
たとえば、国は一般企業に対して「仕事と介護の両立支援の強化」を図ろうとしています。大企業では、いわゆる産業ケアマネと委託契約したり直接雇用するケースも増えてくるでしょう。他産業でケアマネ雇用の受け皿が拡大すれば、人材流出は加速しかねません。

ケアマネの実務研修受講試験の合格者数がなかなか伸びない中、他サービス・他産業への人材流出が重なれば、地域の居宅介護支援が成り立たなくなる恐れも浮かびます。

最新調査でも、居宅支援の事業所数大幅減少

実際、居宅介護支援の事業所数も減少傾向が著しくなっています。年明けに2022年(10月1日時点)の介護サービス施設・事業所調査の結果が、厚労省より公表されました。それによれば、施設系を除いて事業所の減少数が突出しているのが居宅介護支援です。

2021年から2022年にかけての減少数は509で、減少率はマイナス1.3%。2017年からの5年間で減少数は2,735事業所に達し、減少率も6.6%と著しくなっています。吸収・合併などもあるでしょうが、いずれにしても地域偏在が進んでいるのは間違いありません。

地域から居宅介護支援が消え、担当するケアマネが見つからなければ、「居宅サービスそのものが使えない」という状況が迫ります。国も大きな危機感を抱いているはずです。

逓減制のさらなる緩和が唯一の処遇改善策?

仮に、基本報酬も特定事業所加算の単位もそれほど上がらないとなれば、厚労省は以下の施策で居宅ケアマネの収入増を補い、人員不足に対応しようとしていることになります。

(1)逓減制にかかる取扱い上限や介護予防支援の取扱い件数の算出法の緩和により、利用者との契約件数を増やしやすい環境を整え、事業所の増収を図る(介護予防支援の指定事業所となった場合の基本報酬増も加わる)。

(2)(1)により、ケアマネ1人あたりの担当件数が増える可能性が高まることから、オンライン活用等による訪問モニタリングの回数緩和や利用者への説明責任を「義務」から外すことで、業務負担の軽減を図る。

たとえば、もともと逓減制の緩和を選択していない事業所で、(1)に則ってケアマネ1人あたりの担当(居宅介護支援に限った場合)を5件増やしたとします。基本報酬が変わらないことを前提とすれば、増えた5件分の利用者が全員要介護1・2で月5万3,800円、全員要介護3以上で月6万9,900円(1点=10円で計算)。間をとると6万1,850円の増収となります。居宅介護支援の給与費割合が約77%(2023年度介護事業経営実態調査より)ですから、ケアマネ1人あたり月4万7,000円ほど給与増になる計算です。

厚労省として、「これなら十分な処遇改善になる」と考えているのでしょうか。しかし、これはあくまで机上の計算です。担当件数が増える中で、ケアマネジメントの質を維持しようとすれば、事業所内のケース検討や研修の機会も増やさざるを得ないでしょう。

このようなコストが見込まれているのか、(2)によって本当にケアマネの業務が効率化されるのか──不透明な要素は尽きません。間もなく提示される基本報酬等が、不透明感に揺れるケアマネの安心を確保できるかどうか、現場でもしっかり分析することが必要です。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。