「看取り期」のチームケアに重大影響も。 訪問介護の基本報酬問題、もう1つの視点

2024年度改定では、居宅系サービスでも看取り期の対応強化を促す見直しが行われています。訪問看護でのテコ入れが目立つ一方で、訪問介護もカギの1つと位置づけている点は見逃せません。訪問介護の基本報酬引下げが社会的に問題化しつつある中、国による施策の実効性が問われるテーマでもあります。

看取り期の訪問看護の評価はどうなったか?

まず、訪問看護での在宅利用者の看取り期にかかる改定事項を整理しましょう。

1つは、ターミナルケア加算の単位が引き上げられたことです。同加算は、利用者の死亡日および死亡前14日以内に2日(末期がん等の場合は1日)ターミナルケアを実施した場合に算定されるものです。

これが、改定前は月2000単位だったのが2500単位となりました。簡単に言うと、医療保険での訪問看護にかかる、訪問看護ターミナルケア療養費(25000円)の単価との整合性を図ったものです。介護給付費分科会に提示されたデータから、介護保険と医療保険で訪問看護のターミナルケアにかかる業務負担に大差がないことも改定理由の1つです。

2つめは、ターミナルケア加算を算定した利用者について、その人が在宅で死亡した場合の対応にかかる新加算です。利用者の死亡に際し、訪問看護師がICTの活用によって担当医に死亡時状況の情報を提供し、医師が死亡診断を行なった場合の看護師側の補助行為を評価したもので、遠隔死亡診断補助加算(150単位)といいます。利用者が離島などに住んでいて、死亡時に担当医がすぐには訪問できないなどのケースを想定したものです。

訪問介護では、特定事業所加算で看取り強化

その他の居宅系では、「看取り期の対応」について、以下のような改定が見られます。
(1)訪問介護…特定事業所加算I・IIIで、看取り対応体制の整備を要件としたこと。併せて、重度者対応の選択要件で「看取り期の利用者」への対応実績を必要としています。

(2)訪問入浴介護…看取り期の利用者を対象に、看取り連携対応加算(1回64単位。死亡日および死亡以前30日以下)を設けたこと。看取り期の対応体制(指針の策定や従事者研修)を整えたうえで、訪問看護等と連携してサービス提供を実施した場合に算定されます。

(3)短期入所生活介護…やはり看取り期の利用者を対象に、看取り連携体制加算(1回64単位。死亡日および死亡以前30日以下において7日間)を設けたこと。看取りの対応方針を定めて、利用者・家族の同意を得るとともに、看護体制加算の算定や訪問看護等との連携などが要件となっています。

訪問看護と訪問介護の「両輪」は整ったのか?

これら看取り期の各種加算の算定ケースでは、居宅介護支援もターミナルケアマネジメント加算の対象となります。ターミナルケアマネジメント加算では、利用者の死亡日14日以内に2日以上利用者宅を訪問し、利用者の心身の状況を記録、主治医や担当するサービス事業所に情報提供を行なうことが必要です。

その情報提供においては、各サービス事業者が「どのような情報を求めているか」を頭に入れることが欠かせません。その前提として、各事業者の看取り期の加算算定と関連し、どのような対応体制をとっているのかを事前に把握しておくことも求められます。

ただし、注意したいのは、利用者やケアマネが期待する看取り期の事業者連携がきちんと機能するのかという点です。たとえば、看取り期においては、訪問看護による療養支援とともに、訪問介護によって最期まで本人のQOLを高めるという両輪が整っていないと、本人・家族の望む終末期の支援を完結させることは、どうしても難しくなります。

その点は厚労省も考えているはずで、だからこそ訪問介護の特定事業所加算に看取り期を想定した要件を加えてきたはずです。

チームは一丸…でも制度だけ外れている様相

しかし、訪問介護の特定事業所加算I・IIIの加算率は上がっていません。重度者要件が選択制になったとはいえ、看取り期対応という明確なテーマが加わったわけで、その評価分の引き上げがなされてしかるべきでしょう。

しかも、ベースとなる基本報酬は引下げとなり、人員確保がますます難しくなる可能性が高まれば、人材要件を満たせないゆえに「特定事業所加算は算定できない」というケースも増えてくる恐れがあります。つまり、厚労省が目指すべき「看取り期の両輪ケア」が「絵に描いた餅」で終わりかねないわけです。

ちなみに、訪問看護の基本報酬は引き上げられましたが、依然として処遇改善加算の対象になっていません。ただし、訪問看護の場合、診療報酬側で処遇改善にかかる「ベースアップ評価料」が誕生します。また、看取り期に多い緊急時訪問では、看護師の負担軽減策を評価する加算区分(緊急時訪問看護加算Iでの単位引き上げ)が登場しました。これも実質的に処遇改善と言えるでしょう。

こうして見ると、看取り期に欠かせない両輪のバランスは決して「いい」とは言えません。利用者・家族をはじめ、ケアマネも連携するサービス事業者も「最期までその人らしく住み慣れた家で過ごす」という方針に向けて一丸の取組みを進めています。ところが、そこから制度だけが外れつつあるわけです。

このままでは、訪問介護の問題が、多職種連携にも重大な影響を及ぼしかねません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。