今改正で誕生した「居住サポート住宅」。 介護支援の「囲い込み」は生じないか?

今年の通常国会で、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等、いわゆる「住宅セーフティネット法」が改正されました。ケアマネ等が注目したいのは、一人暮らし高齢者等の新たな住まい類型として「居住サポート住宅(居住安定援助賃貸住宅)」の認定制度が設けられたことです。

安否確認や見守りも提供される住宅類型

今改正で誕生した「居住サポート住宅」とは、一人暮らしの高齢者など賃貸住宅等の入居を拒まれがちな立場の人(住宅確保要配慮者)に対し、そうした人々を支援する居住支援法人等が供給する新たな住宅類型です。

現状でも、住宅確保要配慮者の入居を拒まないものとして「セーフティネット登録住宅」があります。ただし、入居者の多様なニーズ(見守りなど)に十分対応できなかったり、低所得の人が住み続けるだけの家賃負担が定額な住宅が少ないなどの課題がありました。

これに対し、新設の居住サポート住宅では、供給者である居住支援法人等が、入居者のニーズに応じて安否確認や見守り、必要に応じた介護や福祉のサービスへの「つなぎ」を行ないます。ちなみに、この新たな住宅については、福祉事務所を設置する市町村などが認定を行なうしくみとなっています。

また、今改正では要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者を国交省が認定する制度も設けられ、家賃債務保証保険による保証リスクの低減も図られました。居住サポート住宅では、この認定保証業者が家賃債務保証を原則として引き受けることとされています。

サ高住や住宅型有料を補完する存在に?

さて、安否確認や見守りというと、思い浮かぶのがサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)でしょう。こちらは専ら高齢者が対象であることや、建物ごとの登録制度になっている点で制度の枠組みは異なりますが、生活支援等の部分では重なる点も目立ちます。

戸数的な部分で比較してみると、サ高住の場合、施行後10年で27万戸に達しましたが、その後は伸び悩んで2024年5月時点では約28万7000戸となっています。一方、今回新設された居住サポート住宅については、施行後10年間(2035年あたり)で10万戸の供給が目標として定められています。

今後、一人暮らしで見守り等のニーズも高い高齢者が増える中では、サ高住や住宅型有料ホームに加え、この居住サポート住宅が、高齢期の住まいニーズを支える大きな存在となっていく可能性があるでしょう。

ケアマネとしても、遅かれ早かれ居住サポート住宅に住む利用者を担当する場面が出てきます。その際、住まい供給とともに見守り等のサポートを手がける居住支援法人とどのように連携するか(たとえば、サ担会議などに参加してもらうかどうかなど)について、今から頭に入れておく必要がありそうです。

居住支援法人が介護事業を運営していたら…

ところで、見守りや安否確認、さらには福祉サービス等への「つなぎ」を居住支援法人が担うとなれば、「囲い込み」的な介護サービス利用が進まないかという点も気になります。

たとえば、居住支援法人等の関連法人において介護サービス事業を手がけているとします。供給している居住サポート住宅で、利用者の相談に乗りながら、自らの関連法人による介護サービスを紹介する(つなぐ)というケースも考えられます。このあたりは、サ高住や住宅型有料ホームにおける、入居者のサービス利用への誘導の構図と類似します。

居住支援法人の場合、居住支援等にかかる業務に関しては限度額1000万円の補助金が出されます。ただし、居住支援事業が赤字の団体は5割以上にのぼります。法人全体としては、多角的な事業展開で運営の安定化を図ろうとする動機は働きやすくなるでしょう。

ちなみに、今改正前から、居住支援法人の事業は多様化していて、「必要なサービスのコーディネート」(実施率56.1%)のほか「家事・買い物支援」(実施率41.7%)も見られます。入居者の生活支援に幅広く乗り出している点で、介護ニーズに対応する事業を展開するのも自然の流れとなりそうです。

介護保険財政の問題とリンクする可能性も⁉

もちろん、居住支援法人は都道府県が指定するものであり、居住サポート住宅の供給に関しては居住安定援助計画を作成したうえで、市町村等の認定を受ける必要があります。介護サービス等に関して、利用者の選択権を侵すような「囲い込み」があれば、行政としても対応せざるを得ないでしょう。

ただし、あくまで利用者ニーズに則っての対応だったとしても、支援コーディネートに際してフリーハンドな状況が色濃くなれば、サービス過剰となるケースも考えられます。サ高住のような「同一建物」という例は少なくても、居住支援の流れの中で「囲い込み」が生じれば、介護保険給付の適正化の課題とリンクしやすくなるでしょう。

なお、サ高住併設の事業所の収支差率が高まったりすることで、同じサービス類型の介護報酬の抑制圧力につながることが問題視されています。併設事業者の経営分析を切り離すべきという議論もある中、この居住支援法人がかかわる事業をどう位置づけるかも、後々議論になってくるかもしれません。

介護保険の枠組みの中で、今回の制度をどう位置づけていくのか。2027年度に向けた介護保険制度の議論においては、重要なテーマの1つとして念頭に置きたいものです。

 

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。