ケアマネジメントへの利用者負担導入は、 国が推進する認知症施策と矛盾する恐れ

政府が「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2024」を閣議決定しました。介護保険関連では、2割負担拡大の検討などが示されています。ケアマネにとって特に気になるのが、ケアマネジメントの利用者負担導入の是非でしょう。介護保険部会等に議論が移る前に、気になるポイントを取り上げます。

ケアマネジメントと認知症支援策との整合性

長年にわたる「ケアマネジメントへの利用者負担導入」の議論では、各立場からさまざまな見解が上がっています。たとえば、慎重論からは「サービス利用の入口で負担が発生すれば、サービスの利用控えが生じる」といった懸念が。推進論からは、「施設ではケアマネジメントが利用料に含まれており、その点との整合性」を求める意見が出ています。

今後の介護保険部会等でも、両論からの新たな見解が出てくるでしょう。ここでは、上記とはやや異なる観点からの課題にスポットを当てます。それは、昨年の認知症基本法の制定により、国にも今まで以上の責務が課せられることになった認知症施策との関係です。

近年の国民生活基礎調査によれば、介護が必要になった要因のトップが認知症です。また、厚労省のデータによれば、要介護認定者のうち認知症日常生活自立度Ⅱ以上の割合は2010年時点で約6割。ずいぶん前のデータなので、利用者の高齢化・重度化が進む中では7割以上になっていることが想定されます。

いずれにせよ、ケアマネジメントを要する人の大半は認知症にかかる一定の支援ニーズがあります。となれば、ケアマネジメントと認知症支援の間での整合性も問われてきます。

認知症初期集中支援に費用負担は発生せず

認知症の人への支援の入口として、国が押し進めているのが、認知症疾患・医療センターによる相談体制、および包括に設置されている認知症初期集中支援チームの介入です。

前者については、診察・治療に移行した場合に費用負担が発生しますが、初期相談に関しては原則として無料です。後者は介護保険の地域支援事業に位置づけられており、おおむね6か月の支援期間では、やはり費用負担は発生しません(医療や介護につながった場合、やはりそれぞれの費用負担は発生します)。

たとえば、認知症の鑑別診断などを受ける時点で費用負担は発生するわけですが、これをケアマネジメント上のアセスメントに比類すると考えれば、ケアマネジメントへの利用者負担導入の促進論につながるかもしれまえん。ケアマネによる初期相談(インテーク)に費用負担は発生しないとしても、その先のアセスメント、ケアプラン作成、モニタリング等は負担の対象となるという考え方です。

初期集中支援も継続的なモニタリングが必須

ただし、認知症初期集中支援については、初期相談だけでなく、支援計画の作成や関係機関への連絡調整も地域支援事業費でまかなわれ、利用者の費用負担は発生しません。

もちろん、医療機関へとつないだ後に診断を受けるという流れになれば、そこで費用負担は発生する可能性は高いでしょう。しかし、それは初期集中支援チームによる関係機関との調整後に発生する料金となります。居宅における介護支援の流れでいえば、各サービスにつないだ時点で「各サービスの料金が発生する構図」と同じという見方もできます。

仮に「医療機関による鑑別診断等」を介護サービスと位置づけるなら、初期集中支援チームが手がける部分は、ケアマネジメントにおけるプラン作成やサービス調整にあたります。この部分で、初期集中支援の費用負担が発生しないとなれば、ケアマネジメントの利用者負担も発生しないという理屈になります。

もっとも、「初期集中支援の期間はおおむね6か月なので、支援期間が限定されないケアマネジメントと比較できないのでは…」と考えかもしれません。この点については、認知症初期集中支援チーム員テキストにおいて、支援を終了し医療・介護に引き継いだ後も定期的(おおむね2か月ごと)にサービス状況のモニタリングを行なうことが求められています。この流れは、ケアマネのモニタリングに類するという考え方もできるでしょう。

利用者負担導入は認知症基本法に反する⁉

こうして見ると、認知症初期集中支援という地域支援事業の枠内では、初期相談だけでなく、その後の支援の流れを通じて費用負担を発生させない原則にあると言えます。これは、認知症施策においてチームによる伴走者の存在を重視しているという観点の施策です。

ちなみに「伴走」といえば、認知症の本人や家族に対する継続的な相談支援として「伴走型支援事業」が実施されています。これは、認知症GH等の職員による継続的な相談支援を、国と自治体の折半による事業費でまかなっています。つまり、継続性はあるものの利用者側の費用負担はやはり発生しません。

ケアマネジメントも、見方によっては「伴走型支援」の最たるものといえます。そして、対象ケースの大半は認知症であるという点で言えば、「利用者負担を発生させないこと」が他の認知症施策と整合性を取るうえで譲ることのできないしくみとなるでしょう。

認知症基本法の制定により、国は「必要な相談体制の整備」を基本施策として位置づけることが必要となりました。その流れで言えば、継続的かつ伴走的な相談支援が途切れてしまうような施策を取れば、それは基本法の趣旨に反するということになりかねません。ケアマネジメントへの利用者負担導入の議論でも、この点に注目しておきたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。