サービス危機は訪問介護だけではない。 居宅介護支援の休廃止高止まりの深刻度

2024年末に開催された介護給付費分科会で、サービス事業所の休廃止にかかる自治体アンケートの結果が公表されました。注目はやはり訪問介護の休廃止の多さですが、それを上回るのが居宅介護支援です。再開・新規開設数との比較による増減差でも、マイナスが常態化しつつある状況も浮かび上がっています。

新規開設は増えたが、休廃止ペースも加速

改めて、居宅介護支援の状況を確認しましょう。2023年6~8月では、休廃止数583に対し再開・新規開設数は293で、トータルはマイナス290。2024年6~8月では、休廃止数615に対し再開・新規開設数が332で、トータルはマイナス283となっています。

上記の1年で再開・新規開設数は増えたものの、休廃止ペースも加速しました。もともと、ケアマネ不足が深刻化していましたが、2024年度改定で居宅介護支援が処遇改善加算の対象外となったことも、休廃止ペースの加速につながったと見ることもできます。

再開・新規開設数が増えているゆえに、業界内で一定の新陳代謝が進んでいるという見方もできます。しかし、増減比のマイナス値が高止まりしている状況は看過できません。

ちなみに、訪問介護は再開・新規開設数が休廃止数を上回っていますが、分科会では「集合住宅への併設ケースが増大している可能性」が指摘され、実質的に利用者のサービス選択が制限されていないかどうかについて、詳細な調査の必要性も問われています。仮にこうした状況があるとすれば、居宅介護支援にも当てはまることが推察できます。

そうなると、事業所の絶対数が減少している以上に、在宅の利用者が介護保険を使う場合の「間口」が狭くなっているのではないか──そうした危惧も浮かんできます。

ケアマネの「働きづらさ」が増している⁉

たとえば、「住み替え」などの意向がない居宅利用者のケアマネジメントを手がけるとして、数字以上に「対応できる訪問・通所介護の事業者数」が減っているとします。

ケアマネとしては、サービス調整の困難さがつきまとい、その負担が募れば「集合住宅等に併設する事業者に転職する」といった意向も生じやすくなる可能性もあります。

結果として、ケアマネ不足の実感はデータ上の数字以上にきつくなり、介護保険の間口がますます狭くなる──この悪循環が進行している状況も見すえなければなりません。

何とかやりくりをしているというケアマネでも、個々のサービス調整のあり方にもう1つの変化も生じることが予想されます。それは、訪問介護や通所介護が縮小する一方で、訪問看護や訪問・通所リハビリの増減比のプラス幅が比較的大きく、そうしたサービス利用へのシフトが進むことです。

訪問・通所介護の減少とケアマネへの影響

今回の自治体アンケートの結果を見ると、2023年6~8月⇒2024年6~8月で、上記事業所の増加は以下のようになっています。訪問看護では「530⇒430」、訪問リハビリでは「100⇒659」、通所リハビリでは「84⇒88」という具合です。ちなみに、2024年度改定後の訪問リハビリの増加が急なのは、みなし指定の緩和などの影響も考えられます。

上記の結果は、訪問介護が「85⇒20」、通所介護が「マイナス12⇒マイナス10」、地域密着型通所介護が「マイナス107⇒マイナス59」という数字とはまさに対照的です。

訪問介護は一応プラス推移となっています。しかし、そのプラス幅は減少し、休廃止数が跳びぬけて高いという状況を見れば、先に述べたような「サービス調整のしにくい新陳代謝」が進んでいる状況もうかがえます。

いずれにせよ、こうした状況が続けば、「訪問・通所介護が十分に使えない」という状況を「部分的に看護・リハ系サービスでカバーする」という流れも強まるかもしれません。

本来のケアマネジメントに専念できない苦悩

もちろん、訪問看護や訪問リハビリは、医師の指示が必要であり、サービス内容も利用者の療養やリハビリに特化されます。また、そもそも資源の絶対数が少なかったり、利用者負担も重くなりがちです。訪問介護等が十分に使えないという状況下でも、単純に「代替え」として位置づけるのは困難でしょう。

とはいえ、利用者の重度化リスクや家族の負担増を前に、手をこまねいている余裕はありません。たとえば、訪問介護の提供量が限られるのであれば、服薬管理や生活環境に密着したADL改善等を進めることに焦点を当てつつ、訪問介護が行なっているケアの一部(生活動作の介助や見守りなど)をサービスの流れの中でカバーする状況を「期待する」というシーンが増えるかもしれません。

こうしたサービス特性間のグレーゾーンに期待するというのは、本来のケアマネジメントからすれば違和感もあるでしょう。ケアマネとしては、「やはり保険外サービスを探してカバーすべきではないか。でも、利用者の経済的負担も増えかねない」という、ケアマネジメントの本質以外での悩みも募りがちです。

こうしたサービス資源の不均衡も、「業務の環境を変えたい」という意向につながりかねず、やはり居宅介護支援の減少の遠因となりえます。今回の自治体アンケート結果には、要介護者の生活を揺るがす大きな課題が潜んでいることに注意を払いたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。