急速に進む「ケアマネの高年齢化」。 「働き方調整」が強く問われる時代に

ケアマネの年齢層が年々上がっている様子は、厚労省の審議会データや先の介護労働実態調査でも明らかです。この状況が続くことで、ある時期から「ケアマネのリタイア」が集中する懸念も指摘されています。若年世代のケアマネを増やすための処遇改善は当然として、どのような追加ビジョンが必要でしょうか?

60歳以上ケアマネが3割の時代を迎えて

改めてケアマネの年齢構成を確認すると、60歳以上の割合が3割を超え、50歳以上のケアマネも66.2%となっています(介護労働実態調査より)。少なくともケアマネの3割が、「いつまで働き続けることができるか」という選択に直面しつつあると言えます。

ご存じの通り、2025年4月からは事業者に対して65歳までの雇用確保措置(定年制の廃止という選択肢含む)が完全義務化されています。とはいえ、体力的な課題やその他の事情により、ケアマネ自身が退職や非常勤への転換などを望むケースは増えそうです。

たとえば、「その他の事情」の中には、親世代の介護などが想定されます。もちろん、介護休業制度等を活用しながら働き続けることは可能ですが、「今まで通りの働き方が続けられるか」に悩まざるを得ないかもしれません。

また、年齢とともに自身の体調も崩れやすく、仕事と治療・療養の両立も視野に入れる人も増えるでしょう。2024年度改定では、仕事と治療の両立に配慮した「常勤換算方法の緩和」も行われましたが、「常勤1」となる週30時間以上の勤務が可能かどうかなど、事業所が見通すべきポイントは尽きません。

若年世代参入を図るまでのタイムラグも問題

こうした中での対策は、どうあるべきでしょうか。理想としては、若年世代のケアマネ参入を促進しつつ、一定年齢層に達したケアマネは(その働き方の意向を尊重しつつ)新人指導などのバックアップに専念してもらうということになるのかもしれません。

しかしながら、前提となる「若年世代のケアマネ参入」は明るくありません。仮にケアマネの処遇改善が進み、参入意欲が高められたとします。それでも、実務研修受講試験の要件となる国家資格等や通算5年以上の実務経験を考えれば、受験者のすそ野を広げるための施策(介護福祉士資格保有者や生活援助業務従事者のさらなる処遇改善など)が不可欠です。当然ながら、受験資格の拡大などの制度変更も視野に入れなけければなりません。

いずれも効果が上がるまでには、少なからぬ時間差が生じます。それまでに、全体で6割を占める「50歳以上のケアマネ」が第一線で現場を支え続けることができるのかといえば、時間的余裕はあまりありません。

一定年齢以上のケアマネとの個別面談を

その点を考えた場合、必要な各種施策を国に強く求める一方、各事業所として「今、何をすべきか」を考える必要があります。

たとえば、入職から日の浅いケアマネに対して、「今後のキャリアのあり方」に向けた個別面談を行なっているケースが見られます。また、更新研修や主任ケアマネ等に向けたキャリアステップと、「日々の実務」との折り合いについて、個別に話し合う場を設けている事業所の話も見聞きすることがあります。

こうした個別の面談・話し合いに加え、これからは、一定年齢(たとえば親の介護に直面し始めることの多い50歳)に達したケアマネに対し、事業所として「今後の働き方の意向」を確認するための個別面談を、定期的に催すことも必要になってくるでしょう。

なお、当事者の中には、すでに家族の介護や自身の体調不良などの問題に直面していることも想定されます。そうしたケアマネ一人ひとりの状況の把握とともに、各種両立支援制度の個別周知を図る機会として位置づけることも頭に入れておくべきでしょう。

もちろん、個別面談を行なったうえで、本人の意向に沿った働き方の調整やそのための支援(テレワークの体制づくりなど)、各種両立支援制度とのマッチングなど具体的な対応策への「つなぎ」が求められます。

問題は、ただでさえケアマネ不足が深刻な中、どこまで本人の意向を叶えることが可能なのかが現実問題として付きまとうことです。

既存の助成金に加え、報酬上の新体制加算も

当然ながら、「ケアマネの年齢層が上がっていること」を想定したうえでの国の支援策も問われます。現状では、厚労省が管轄する中小事業所を対象とした「両立支援制度等助成金」があります。たとえば、労働者が介護休業を取得したり両立支援制度を活用した場合に、業務を代行する人への手当等にかかる助成を受けられるしくみです。

ただし、支給回数が限られるなど、人員不足が深刻なケアマネジメント分野において、十分な実効性には疑問符もつきます。ケアマネの高年齢化が一大トレンドとなる中では、業界事情を考慮した上乗せ策も必要です。

たとえば、先に述べた「一定年齢以上のケアマネを対象とした個別面談」と「働き方調整」等を要件に、報酬上で新たな体制加算等を設ける方法も考えられます。財源の問題もあるので、あくまで「ケアマネの処遇改善等により人材の新規参入効果が認められるまで」の時限措置とするやり方でもいいでしょう。

ケアマネの高年齢化がもたらす「ひずみ」が大きくなる前に、国・自治体・業界団体が課題と真剣に向き合う時期に入っています。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。