厚労省の2026(令和8)年度予算の概算要求について、今回はケアマネ関連の内容に注目します。地域医療介護総合確保基金(以下、総合確保基金)のメニュー拡充に加え、新規予算項目などさまざまなものが上がっています。施策総動員の感はありますが、全体をどう読み解けばいいのでしょうか。
ケアマネ関連の概算要求全体を整理すると
まず、総合確保基金の活用枠では、地域のケアマネジメント体制確保支援事業が上げられています。
具体的な内容は以下の3つです。
(1) 介護支援専門員(以下、ケアマネ)人材確保支援事業
(2) ケアマネ業務負担軽減支援事業
(3) 居宅介護支援事業所経営改善支援事業
一方、新規予算枠では、
(4) ケアマネの魅力発信のための広報事業
(5) ケアマネ資質向上支援事業
となっています。このうち(5)については、
(5)-1 ケアマネ法定研修教材作成事業(オンライン受講のための全国統一的な講義動画や教材の作成)
(5)-2 適切なケアマネジメント手法普及促進事業(普及・促進を図るための他職種・保険者へのセミナー等開催など)
の2つのメニューで構成されています。
この他、(6)ケアプランデータ連携推進事業も引き続き見られます。
今概算要求では、将来的な介護情報基盤との統合を見すえつつ、実施中のフリーパス運用も含めて運営基盤の安定化・強化を図るものです。
さらに、災害発生時の被災高齢者等把握事業において、ケアマネ等による把握を円滑に進めるための研修等の実施も追加されています。
ケアマネの処遇改善につながる予算項目は?
このように、ケアマネ関連予算は例年以上の広がりを見せています。ケアマネ従事者数と居宅介護事業所数の減少傾向がともに鮮明になる中、それを押し留める効果はあるのか。気になるのは、やはり「ケアマネの処遇改善につながる方策はどれか」という点でしょう。
先にあげた予算項目のうち、ケアマネ確保支援を視野に入れているものが(1)~(3)です。それぞれの具体的な補助対象経費(例)を見ると、以下のようになります。
(1)ケアマネ人材確保支援事業…
a.(特に採用の厳しい)中山間・離島等地域における採用活動
b.「潜在ケアマネ(諸事情により現場を離れているケアマネ)」の実態把握や事業所とのマッチング
c.「潜在ケアマネ」復職後の相談対応や環境整備の支援
──など。
(2)ケアマネ業務負担軽減支援事業…
a.事務職員の採用や研修の支援
b.公共的な団体による業務の受け皿創設支援
c.シャドウワークに関する相談窓口の設置
──など。
(3)居宅介護支援事業所経営改善支援事業…
a.コンサルの派遣による加算の新規取得や職員の待遇改善の支援
b.大規模化・協働化等の経営改善支援
c.利用者確保のための広報活動支援
──など、となっています。
これら予算を人件費にあてることは可能か?
たとえば、(3)-aのように間接的に処遇改善を目指す施策はあります。ただし、2024年度補正予算の介護人材確保・職場環境改善等事業のように「人件費に充てること」を明記とした項目はありません。人材確保に関しても、あくまで「採用活動等にかかる経費」を補助の対象としているに過ぎません。
こうして見ると、「ケアマネの業務環境」の改善が焦点であり、「本丸」とも言える「処遇改善」にはやはり踏み込んでいないことになります。「結局、2026年度の期中改定もしくは2027年度の定期改定まで待たなければならない」と受け取る人も多いでしょう。
その場合、重要なのは「早ければ期中改定により、確実にケアマネの処遇改善が行われる」という見通しです。それがなければ、たとえば(1)のa・bにおける「採用活動」や「マッチング」でいかに経費を投入しても、ケアマネ側の参入意欲向上には限界が生じます。
予算投入に見合った効果が得られないとなれば、「その分のお金を処遇改善に回すべき」という批判も浮上しかねません。今後の予算編成過程で、自治体等からも「今回の総合確保基金枠を人件費にあてることは可能か」といった疑義も出てくる可能性もあります。
諸課題検討会の中間整理は網羅しているが…
もっとも、厚労省なりの踏み込みを評価できないわけではありません。今回のケアマネに関する予算項目の多くで、昨年12月の「ケアマネジメントにかかる諸課題に関する検討会」の中間整理で示された方向性がほぼ網羅されているからです。シャドウワークにかかる課題についても、本格的な解決に向けては「自治体による協議の場」の法制化などが求められますが、それでも概算要求の時点で「相談窓口の設置」まで踏み込んでいます。
しかし、逆に言えば、制度改正を待たずにそこまで踏み込めるのなら、「処遇改善」についても概算要求時点で何らかの手当が示せなかったのでしょうか。たとえば、次期報酬改定までに「当面の処遇改善」にあてる補助金設定も可能だったのではないでしょうか。
先の中間整理では、「処遇改善」の記述はわずかとはいえ、「他産業・同業他職種に見劣りしない処遇の確保」は明記されています。今後の社会保障審議会等の議論次第でしょうが、年末までの予算編成で、上記一文を反映させた追加施策が出てくるか否かが注目されます。というより、それなくして今概算要求の施策に「実」を備えるのは難しいかもしれません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。
