ケアマネジメントへの利用者負担導入。 利用者への影響予測で外せない視点とは?

 介護保険部会で「給付と負担のあり方」が議論され、「ケアマネジメントへの利用者負担導入」も論点に。これまで見送られてきたテーマですが、次期改正でどうなるでしょうか。厚労省は「導入された場合の影響」の調査などを実施する予定ですが、多岐にわたる状況をどこまで想定できるかが問題です。

サービス前に死亡のケースでも負担は発生?

ケアマネジメントへの利用者負担導入について、過去の介護保険部会で出されている主な懸念の1つが、「サービスの利用抑制」です。

ケアマネジメントは居宅サービス利用の「入口」にあたり、その時点での利用料発生は、介護保険そのものの利用ハードルを上げてしまうということ。また、サービス利用に行き着くとしても、他サービスの利用者負担を抑制することにもつながりかねません。

こうした「利用抑制」の意向が、利用者の間でどの程度働くのか。これについて、利用者の所得区分や負担割合区分ごとに調査を行なうのが、まずは基本となるでしょう。
ここに加えたいのが、いわゆる多死社会が到来している中で、在宅での看取りを希望するケースもさらに増えるという状況です。

ご存じの通り、2021年度改定の後は、看取り期の利用者の退院時にケアマネジメントを行なった際、「利用者の死亡によってサービス提供に至らなかった場合」であっても居宅介護支援費の算定が可能となっています。

仮にここでも利用者負担が発生するとなった場合、遺された家族等がどこまで納得できるかも問われます。「こうしたケースでも利用者負担を発生させるのか」、「身寄りがない場合に、誰に請求するのか」といった点を考慮した影響調査も加えていく必要があります。

特定事業所加算分の料金高への受け取り方

利用者の「負担への受け取り方」については、事業所によって負担が変わるのか否かという点にも注意を払わなければなりません。

仮に、「事業所ごとの所定単位に対する一定割合」の負担になったとします。当然ながら各種加算を算定している事業所の方が高くなります。仮に1割負担になったとして、たとえば特定事業所加算であれば、月あたり最大で500円程度負担が大きくなります。

年間に直すと約6000円。このくらいの金額でも、物価高騰等が続く時代に、低所得者であれば「負担感」を募らせる可能性はあります。ケアマネジメントに入る時点で特定事業所加算による「負担差」が生じる場合、利用者はその「差額」の根拠をどこまで理解し納得できているかが問われることになります。

仮に料金の高い事業所と低い事業所の「違い」への実感が乏しいと、選ばれる事業所のあり方が制度の理念とズレかねません。

ケアマネジメントへの理解不足と事業所評価

たとえば、「主任ケアマネの配置」や「定期的な会議の開催」が、自分の受ける介護サービスにどう影響するのかについて、頭で理解しても、どこまで実感が得られるでしょうか。

確かに、他サービスでも「介護福祉士等の専門職配置」や「必要なカンファレンスの開催」のよって加算(利用料)が変わることはあります。ただし、「直接サービスを提供している事業者」の体制や取組みという点で、質の高いサービスへの信頼は(仮に体感面での実感はなくても)得られやすいと言えます。

しかし、「ケアマネジメントの質」となった場合、そもそも「ケアマネジメントとは何か」という理解が十分でないと、利用者側の判断基準はどうしてもあいまいになりがちです。

もちろん、継続的にケアマネジメントを受ける中で、「ケアマネの力量とは何か」について利用者の理解が深まることもあります。しかし、介護保険を始めて利用するといった状況では、ケアマネジメントへの理解不足から、利用者による事業所評価が制度の理念から大きく離れてしまうことも起こりえます。

ケアマネの負担増の可能性にもスポットを

この「ケアマネジメントへの理解」が十分に浸透しない段階において、「利用者負担の導入」に際してのさらなる懸念が浮かんできます。それが、「利用者負担」導入の議論で常に指摘される、「とにかく利用者・家族の言うことを聞くケアマネが人気になり、いわゆる“言いなりプラン”が増える」という課題です。

これも、「ケアマネジメントとは何か」が浸透しない時点で、特に生じやすい懸念と言えるでしょう。この状況は、ケアマネの負担増にも直結しかねない問題もはらみます。

たとえば、先の「言いなりプラン」が助長されれば、「言われるがまま動くケアマネ」が「いいケアマネ」という評価が生まれやすくなります。結果として、カスハラ等をより深刻化させる土壌にもなりかねません。

先の特定事業所加算の話でいえば、「24時間連絡体制の確保」という要件は、その部分だけを利用者が「メリット」として受け取る恐れもあるでしょう。仮に「24時間いつでも電話して話を聞いてもらえること」が、上乗せ金額を払うことの付加価値という具合に拡大解釈されれば、本来の趣旨とは異なる業務負担が大きく増えることにもなりかねません。

利用者への影響調査では、「ケアマネジメントの価値」を(特に介護保険利用から日の浅い)利用者・家族がどう受け取っているかを同時に精査することが不可欠です。中途半端な調査で「利用者負担導入」に踏み込めば、さまざまな禍根を生じさせる危険があります。

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◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。