ケアマネの法定研修をめぐって── 現場が納得できる改革で必要なこと

ケアマネの安定的な業務環境を確保するうえで、法定研修のあり方の議論は避けられません。厚労省は、研修の時間的・費用的負担の軽減に向け、オンラインによる全国統一的な教材作成などに乗り出しつつあります。現場が納得できる研修のしくみとなるでしょうか。

研修負担の軽減がケアマネの心に響く条件

現場のケアマネにとって、日常業務との兼ね合いで特に負担となっているのが更新研修です。この更新研修については、「その研修が現場実務の役に立つのか」という点への納得と負担のバランスがカギとなります。

たとえば、国がオンライン受講や分割受講のしくみを大胆に取り入れ、受講費用のさらなる支援を打ち出したとします。それでも、ケアマネにとって「その研修が役に立つ」という実感が乏しければ、上記のバランスは崩れたままとなり、負担感の軽減という施策効果は限られたものとなってしまうでしょう。

加えて、納得と負担のバランスが崩れたままでは、更新研修の義務づけそのものに疑問符が生じざるを得ません。そうなると、更新研修の受講義務を前提とするケアマネの更新制についても、「廃止すべき」という声などがどうしても高まりがちとなります。

国による統一教材の内容を予想すると…

では、「役に立つこと」が実感できる研修とは、どのようなものでしょうか。たとえば、国が作成を目指す統一教材(これをオンラインによる分割受講によって時間的負担感も軽減させる)の内容がどのようなものであれば、現場の納得感が強まるのかを考えます。

あくまで予想ですが、厚労省としては、恐らく「適切なケアマネジメント手法」を軸としたアセスメントやモニタリングのあり方に重点を置くのではないかと思われます。そのあたりは、昨今の課題分析標準項目やケアプラン点検項目の改定からもうかがえます。

そこでポイントになるのは、ケアマネによる利用者状況の確認や多職種との情報共有に際しての重要事項でしょう。たとえば、最新の知見によって「自立支援・重度化防止や尊厳確保に向けての必要性」が高まっているのに対し、「日常業務で見落としがちなこと」にスポットを当てるという具合です。

具体的には、水分摂取や口腔機能、一定の尺度にもとづく認知機能、意思決定支援にかかる過程、ACPに関する情報など。これらの日常業務を通じた確認機会や方法、多職種との情報連携のあり方などが想定されます。

オンライン等の座学に適する内容とは何か?

これらは確かに、ケアマネジメントの質向上に関して重要な事項ではあるでしょう。しかし、現場にケアマネにとって、日々の業務に「役立つ」という実感に直結するかとなれば、違和感を抱く人も多いかもしれません。

たとえば、上記のような内容は、(講師派遣やテキスト提供を行なったうえで)地域でのケース検討会のような「仲間同士の協働によって気づき力を高め合う」というスタイルを通じて修得する方が、実務に活かしやすいかもしれません。こうした知見修得を「個々の座学」のみにすると、どうしても内向きかつ観念的になりやすく、ポジティブに業務に活かすという回路がつながりにくいからです。

オンラインによる統一教材、つまり「個々の座学」であっても「日々の業務に活かせる」という実感を得やすいのは、むしろ以下のような内容かもしれません。たとえば、「現場における利用者や家族とのコミュニケーション手法」や「想定される訴えや相談ごとの対応のフローやノウハウ」といった具合です。

考えてみれば、ケアマネという職業は、どんなに「チーム対応」を理想としてかかげても、現場では「利用者に一人で向かい合う」という孤立状況に直面しやすいのが現実です。仮にカスハラのような状況などなくても、多かれ少なかれ、「今、この場面をどう乗り切るか」というプレッシャーが重荷になっているケアマネは意外に多いのではないでしょうか。

「ケアマネの苦悩」を解消する視点の必要性

ここで、「プレッシャーを乗り越えて、利用者と良好な関係を築くための引き出しを少しでも増やすこと」ができれば、ケアマネにとっては大きな「助力」となるはずです。

そのようなことは、地域や事業所内の先輩などからアドバイスを受ければいい。国が統一教材でやるべきことではない──と思われるかもしれません。しかし、相談援助業務のすべては、当事者と向き合うことから始まります。この入口が整わなくては、どんなに「適切なケアマネジメント手法」などを肌感覚で備えても先に進むことができなくなります。

ケアマネの燃え尽きや人材確保の難しさは、実はこの部分のサポートが公的に整っていないことが背景にあるではないでしょうか。だからこそ、最新の発達心理学やコミュニケーション学の知見を集約させ、現場で(明日から)使えるスキルを修得させるというやり方は、時代の要請に合ったしくみとも言えます。

今後、さまざまな研究事業等で、統一教材の作成に向けた作業が行われるでしょう。その際に「ケアマネという仕事を続けるうえで困難と感じる状況」を、現場からきちんと汲み上げて反映させることができるかどうか。これを、「納得」のいく研修カリキュラムの軸の1つに定めてみてはどうでしょうか。

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◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。