ケアマネジメントへの利用者負担「住宅型有料入居者に適用」をどう考える?

介護保険部会で、「ケアマネジメントへの利用者の負担導入」について「住宅型有料老人ホーム(以下、住宅型有料)の入居者」を対象とする案が出ています。同案は、自民党の議員連盟が行なった決議においても(「丁寧に検討する」とはいうものの)、原則10割給付の「例外」として位置づけられています。

ケアマネジメントのあり方にかかわる背景

まずは、厚労省が示した「住宅型有料の入居者」を負担対象とする案について、その背景を改めて整理しておきましょう。

「住宅型有料」については、11月の有料老人ホーム検討会のとりまとめで、いわゆる「囲い込み」対策の一環として「ケアマネの独立性を担保する体制確保の必要性」が提起されました。そのうえで「ケアマネジメントのプロセスの透明化」の観点から、住宅型有料ホームにおけるケアマネジメントをどのように整理するかがポイントとなっています。

ここで「整理」を必要とするのが、以下のケースです。それは、本来は一般居宅と同じ「住まい」でありながら、関連法人等の居宅介護支援事業所を通じて、事実上ホーム側が入居者へのサービス提供の調整に関与しているというもの。これは、拠点運営、ケアプラン作成、介護サービス提供が一体的に実施されている施設・特定施設サービスと実情は変わらないと指摘されています。

一部住宅型の「特定施設」への移行との関連

この特定施設等と「変わらない」という実情が、今回のケアマネジメントへの利用者負担を住宅型有料の入居者に適用する案のベースとなっています。特定施設等では「ケアマネジメントも利用者負担の対象」という位置づけがあり、それと「実情が同じ」であるなら、住宅型有料でもケアマネジメントに利用者負担を求めてしかるべきという理屈です。

ちなみに、先の取りまとめでは、上記のような住宅型有料について「特定施設への移行」をうながす必要性も提案されました。その「移行」に先がける形で、「ケアマネジメントの利用者負担を適用する」というのであれば、一見筋の通った提案のように思われます。

しかし、「特定施設への移行」が視野に入っているとはいえ、介護保険が定める特定施設の基準等を満たしていなければ、「特定施設」ではありません。その状態でケアマネジメントに利用者負担を導入した場合、利用者に不利益が生じないかどうか──このあたりが慎重に議論すべきポイントといえます。

住宅型入居の利用者にとっての「不利益」

財務省の試算では、住宅型有料の入居者が区分支給限度基準額いっぱいまで居宅サービスを利用している場合、特定施設に移行した方が利用者の自己負担が「低くなる」ケースがあるとしています。仮にその「低くなる」ケースがほとんどであるなら、入居者として「移行」はおおむね歓迎となるでしょう。

ただし、実際は「低くならない」ケースもないわけではありません。また、先に述べたように「特定施設に移行する」だけの要件・環境が十分に満たされていなければ、「囲い込み」による不適切なサービス提供状態が解消されない限り、やはり入居者の負担が必要以上に膨らんだままとなる恐れがあります

上記のケースで、「ケアマネジメントへの利用者負担」が導入された場合、利用者は何重もの不利益を被りかねません。もちろん、「囲い込み」解消の手立て(提供される居宅サービスの減算等も含む)が尽くされたうえで…となるのでしょうが、そのあたりの体制が不十分なままだと、特に「すでに入居している人」にとっては、サービスの質も含めて「納得できない」となる可能性は高いでしょう。

急な負担増に「納得できない」となると、危惧されるのは「ケアプランにかかる利用者の要求が過大になる」というケースです。これは、ケアマネジメントへの利用者負担導入で懸念されている、いわゆる「言いなりプラン」が増えるというリスクと重なります。

住宅型有料が一種の「実験場」になる⁉

もっとも、そこに入居している(また、多くのサービスの主導権をホーム側に握られている)という立場からすれば、「過大な要求も出しにくい」となるかもしれません。

極めて皮肉な話ですが、住宅型有料で入居者の選択権が制限されがちな状況が、「言いなりプラン」やそれに伴う「ケアマネの負担増」を押しとどめることになるわけです。

まさか、そうした状況を想定しつつ「ケアマネジメントへの利用者負担を導入しやすい」と考えたわけではないでしょう。ただ、利用者負担導入によって「特定施設のような扱い」が実態化するとすれば、ケアマネジメントの公正中立性をいかに確保するかという課題が脇に追いやられる恐れも浮上します。

いずれにしても、「ケアマネジメントへの利用者負担導入」の影響をめぐり、「サービスの利用控え」をはじめとする懸念はなおも指摘され続けています。そうした中で、厚労省としては、今回の住宅型有料への導入案を一種の「モデル事業(言葉は悪いですが実験場)」的に位置づけているとも考えられます。

その点では、将来的に導入範囲を一般居宅にも広げる「突破口」となる可能性も否定できません。今案が実現された場合、その現場では今後何が起こっていくのかをきちんと分析・精査しないと、利用者の利益動向を軽視した負担増だけが拡大する恐れがあります。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。