厚労省提案の「新たな相談支援」類型本当に機能するのか?検証すべき視点は?

次期制度改正における「ケアマネジメントへの利用者負担導入」については、新たな「登録制」を想定した一部住宅型有料老人ホームの入居者に的を絞る方向となりました。そこで登場したのが、「新たな相談支援」類型です。この新類型は、今後のケアマネジメントにおいてどのような意味を持ってくるでしょうか。

「新たな相談支援」類型のしくみを再確認

今回の「新たな相談支援」類型の内容を、改めて確認しておきましょう。

これは、次期制度改正で導入が目指される、一部住宅型有料老人ホーム(以下、住宅型有料)の「登録制」導入に合わせたしくみです。この「登録制」については、中重度の要介護者や医療ケアを要する要介護者等を入居対象とする住宅型有料に適用される予定です。

この「登録制」対象の住宅型有料で、入居者のケアプラン作成や生活相談ニーズへの対応に際し、ケアマネによるケアプラン作成と生活相談員による生活相談を包括的に提供する──これが「新たな相談支援」です。

この新類型については、厚労省案によれば「ホームの外部から独立した形」で提供されます。また、従来の居宅介護支援によるケアマネジメントとは「別」としています。

ここで言う「外部から独立した形」というのが、ホーム運営者と異なる、もしくは提携関係がない法人という意味かどうかは明言されていません。厚労省提示の資料では、特定施設における外部サービス利用型に準じることも示唆されているため、何らかの提携関係があっても許容される可能性があります。

一方で、次期制度改正の課題である「住宅型有料等におけるケアマネジメントの独立性の担保」を視野に入れた創設であることも示されています。その点では、ホーム運営からの「一定の切り離し」を図るための運営基準などが定められることも間違いなさそうです。

日本介護支援専門員協会の意見書にも登場

ちなみにですが、この「新たな相談支援」の類型は、日本介護支援専門員協会(以下、日本協会)が12月10日に厚労大臣宛てに提出した意見書で提案されたものでもあります。

その意見書では、「住宅型有料(老人ホーム)については、(中略)高齢者の『住まい』であることに変わりはないものの、一般的な住宅とは異なる位置づけも併せ持つ」という点を踏まえ、「その入居者に対して、ケアマネジメントと生活相談の双方に対応する一体的なサービスとして、居宅介護支援とは異なる新たな類型を創設し対応すべき」としています。

なお、ケアマネジメントへの利用者負担導入についても、この新類型の創設を「前提」として「慎重に検討すること」を求めています。こうして見ると、日本協会の提案が5日後には、今回の厚労省の新類型創設案にほぼそのまま反映されたことになります。

厚労省にとっては「渡りに船」だった?

有料老人ホームにおける「囲い込み」対策への有効手立てや、ケアマネジメントの独立性の確保。そして、ケアマネジメントへの利用者負担導入の落とし所に向けた調整──こうした対応に苦慮する厚労省にしてみれば、これらの課題を一挙に解決できる方策として、「渡りに船」であったかもしれません。

ただし、利用者にとってケアマネジメントは、介護保険の根幹を支える重要な位置づけです。そこに新類型を設けるとなれば、それが本当に「利用者のニーズ」に適合したものになるのかどうかの見極めが必要でしょう。

気になるのは、この新類型が「有料老人ホームの適正運営」と「ケアマネジメントへの利用者負担導入」という、異なる施策課題を「(言葉は悪いですが)都合よく」解決するツールとして浮上してきた感があることです。

確かに、「ケアマネジメントの独立性を担保する(それによって、利用者の『囲い込み』を防いだり、ホーム内のサービスの質をけん制する)」という意図も含まれてはいます。しかし、いったん制度化によって「お墨付き」がなされると、当初の理念とはかけ離れた方向に一人歩きする懸念も付きまといます。

完全な「第三者」で担う事業者はあるのか?

そもそも、ホーム運営から切り離した形を保障するとして、その新類型を誰が担うのでしょうか。地域の居宅介護支援事業者が、別事業として実施するにしても、ただでさえケアマネ不足のうえに、生活相談員まで新たに採用して運営する余力はあるでしょうか。

このあたりはどの程度の基本報酬等を設定するかにもよりますが、仮に「第三者として介入するには割が合わない」となれば、実施する事業者が「いない」となりかねません。そうなると、(一般的な住宅とは異なるとはいえ)居宅のケアマネジメントを受けるための権利に「穴」が生じる恐れも出てきます。

それを防ぐうえで、結局「ホーム側が別法人を立ち上げたうえで新類型を提供するのでもOK」となる可能性があるわけです。ここで「独立性の担保」が崩れる恐れが生じます。

要するに、限りなく「包括型サービス」の「特定施設」に近づくわけですが、その際の(すでに入居している)利用者の納得をどのように得るのか。「登録制」による行政関与の強化で、「囲い込み」等を確実に防げるのか。

今回の新類型立ちあげに向けては、既存の施設や居住系のケアマネジメントのあり方まで視野に入れつつ、制度の大きな転換点である点を意識しながらの制度設計が不可欠です。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。