
2026年度の期中改定では、基本報酬アップがなされなかったことにより、業界内では早くも2027年度改定の動向に視点が移りつつあります。果たして、2024年度に引き下げられた訪問介護をはじめ、基本報酬のアップはどこまで期待できるのでしょうか。
総選挙では、国民負担軽減の大合唱が続くが
2月8日投開票の総選挙に向け、各党とも全般的に消費税減税などの負担軽減に向けた主張が目立ちます。もちろん、「軽減」の対象には、社会保険料も含まれます。現役世代および保険料折半が負担となっている中小企業などに向け、介護保険の2号保険料のあり方も、大きな争点になるかもしれません。
この流れは、今回の総選挙だけでなく、少なくとも次期改定翌年の2028年の参議院選挙まで続きそうです。そうなると、保険料を2分の1財源としたままでの介護報酬の引上げは、どうしてもブレーキがかかりがちです。
一方で、物価上昇による事業所経営の悪化や他産業との賃金格差を放置することは、今後の政権の枠組みにもかかわらず難しいのが実情です。となれば、本来であれば公費負担の引上げが視野に入るはずですが、恒常的な財政悪化の要因になりかねないゆえに、これも踏み込みには困難が予想されます。
そうなると、介護報酬とは切り離した各年度予算措置による、「隠れ公費増」の手段が用いられる可能性が高くなります。2025年度補正予算や2026年度予算案での介護現場向け補助金や地域医療介護総合確保基金のメニュー増を見ても、その兆候が見受けられます。
物価高騰等に対処した補助金による代替え⁉
こうした手法が常態化すると、保険料アップとの関係が特に可視化されやすい「基本報酬のアップ」は差し控えられ、各種補助金事業や総合確保基金のメニューの拡大で代替えする流れが強まる可能性があります。
たとえば、介護事業所等および介護施設等に対するサービス継続支援事業があります。これは新型コロナの感染拡大下の2020年に設けられた事業で、当時は衛生用品の購入費等が支援対象となっていました。現在は、気候変動による猛暑や線状降水帯の発生にともなう自然災害に対処するための備品類等の経費が主な対象です。施設系では、物価高騰下での食材料費も対象となっています。
また、予算的には別枠の重点支援地方交付金による食材料費支援に加え、光熱水費の上昇分を支援する事業も続いています。さらに、中小企業庁の管轄となる省力化補助金では、介護分野における清掃・配膳ロボットやとろみ給茶機、(食事の)再加熱キャビネットなどが補助対象に加えられました。
給付サービスの市町村事業化の案も出る中で
こうしたさまざまな経費に関して、コロナ禍や物価高騰より以前は、介護報酬上の基本報酬でまかなわれていた部分もあるでしょう。「今は(物価高騰などの)危機的状況のカバーが緊急の課題」という面があるとはいえ、危機的状況が「いつまで続くか分からない」という中では、実質的に基本報酬が補助金に置き換わりつつある様子も見て取れます。
こうした状況が続く中、2027年度の制度改正に向けては、中山間・人口減少地域等において、介護サービスを事業(地域支援事業を想定)として実施できる新類型案が示されました。介護保険財源を使う事業とはいえ、果たして利用者ニーズをまかなうだけの事業規模が確保できるのかが課題となります。
たとえば、地域医療介護総合確保基金による支援メニュー等を組み合わせつつ、保険給付以外での支援策でカバーするモデルも強調されそうです。自治体によっては、多様な補助金を円滑に受給するための相談・申請支援などの窓口拡大やアドバイザー派遣などのしくみを強化させるかもしれません。
基本報酬アップの行方はどうなるか?
2027年度改正における特例介護サービスにかかる新類型などは、創設時点では地域も限られるでしょう。しかし、(マンパワーを中心として)全国的に介護サービス資源が縮小していく流れが加速すれば、「特例」の範囲を超えた「一般化」も進んでいきそうです。
これは大きな制度転換です。つまり、介護保険給付の増大は抑えつつ、給付から事業への範囲を拡大し、介護保険財政を国としてコントロールしやすくする。そして、足りない部分の事業コストは補助金等でまかなえるような流れを強化する──いわば「脱・介護保険」への道筋が濃くなっていくわけです。
もっとも、補助金の主要財源となる消費税の一部を下げるとなれば、他に財源を探さなければなりません。また、地域医療総合確保基金をはじめ、補助金の多くは都道府県などによる一定の拠出も必要です。当然、地方財政のあり方も大きな議論となるでしょう。
いずれにしても、2027年度の保険給付における基本報酬の引上げは厳しいかもしれません。代わって「基本報酬のアップ分」を「(使途の制限を緩めた)包括的な補助金」で支給するしくみも浮上する可能性があります。
いずれにせよ問題は財源ですが、これをどこから持ってきて、どの程度介護施策に集中させるのか──これを、はっきりと国民的な課題として取り上げる必要があります。次の総選挙においても、このテーマが水面下に脈々と流れていることを意識したいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。