近年の介護報酬改定で論点化しやすい、 診療報酬との「整合性」というテーマ

2027年度改定に向けては、「診療報酬との整合性」が1つのポイントとなります。特に、地域包括ケアシステムでの介護・医療連携が重視される時代には、両者の整合性を図ることが現場のモチベーションを維持し高める観点からも不可欠となるのは間違いありません。

両報酬体系にもとづく訪問看護を例にとると

診療報酬との整合性に関し、直面する課題が多いといえば、やはり介護現場に従事する看護職員でしょう。たとえば、訪問看護は介護・診療の両報酬体系にもとづいてサービスが提供されています。両体系では、業務内容がほぼ同じにもかかわらず、加算等の単位に差があるケースがたびたび指摘されています。

たとえば、2024年度改定では、訪問看護(定期巡回型含む)や看多機で算定されるターミナルケア加算の単位が引き上げられました。これは、診療報酬におけるターミナルケアと内容がほぼ同様である点が考慮され、先に述べた整合性を図った改定です。

2027年度改定でも、こうした点が論点となる可能性が高まっています。それは、6月に日本看護協会が厚労省の老健局長あてに出した「令和9(2027)年度介護報酬改定に関する要望書」でもうかがうことができます。

診療報酬の機能強化型を介護報酬でも⁉

1つは、高齢の在宅療養者を支える訪問看護事業所の機能に対する評価です。地域で容態急変リスクの高い高齢者が増え、在宅でのターミナルケアのニーズもさらに高まる中では、地域全体での在宅療養者に対する緊急対応の体制を強化することが必要です。

そのためには、訪問看護による緊急訪問やターミナルケアの実績を積み重ねるための取組みが求められます。ただし、特定の事業所だけ頑張っても、対応に限界が生じがちです。

そこで、地域の医療機関や訪問看護ステーションの看護職員との交流(出向等含む)や研修の実施などを通じ、地域全体での対応体制の底上げを図る必要があります。そうした機能を担う訪問看護事業者をどう評価するか。診療報酬上では、機能強化型訪問看護ステーションに対し、機能強化型訪問看護管理療養費等で一定の評価がなされています。

介護報酬側でも、看護体制強化加算や看護・介護職員連携強化加算などはありますが、地域医療との連携を見すえた包括的な体制を評価するまでには至っていません。そこで今回の要望書では、診療報酬における機能強化型と同等の評価の上乗せが求められました。

訪問看護にとどまらない「整合性」への対応

また、地域の介護事業者や医療機関との情報連携に関して「ICTを活用」している訪問看護ステーションは9割近くにおよびます。ICTによる動画等での利用者状況をケアマネなどと連携することにより、状態悪化を防ぐことにつながった効果も報告されています。

こうした情報連携にかかる評価について、診療報酬上では在宅患者連携指導加算などがあります。今回の要望書では、介護報酬上においても、特にICT活用による情報連携の評価を設けることを求めました。これも、診療報酬との整合性の課題と言えるでしょう。

仮に、訪問看護側でこうしたICT連携への新たな評価が誕生すれば、連携対象となるケアマネや他の居宅系サービスの事業所にも同様の評価が広がることが期待されます。診療報酬側との整合性という課題に対し、訪問看護にかかる評価の見直しが、居宅介護サービス全体に波及する可能性が浮上します。

ただし、訪問看護の改定を入口として──というパターンだけではありません。

ご存じの通り、施設・居住系の協力医療機関連携加算では、ひと足早く診療報酬との整合性にもとづく見直しが行われました。2026年度の診療報酬改定により、医療機関側の対介護施設等との情報共有会議の開催頻度が緩和されたのを受け、介護側の加算要件も同様の緩和が図られた次第です。

訪問診療医等への同行を評価する流れも?

今後の改定を見すえた時、こうした診療報酬との整合性は、ケアマネ関連の報酬面でも数多く取り上げられる可能性があります。

特にケアマネの場合、利用者の退院前後における医療機関等の対応に関して「どのように協働するか」が、介護報酬・基準上において問われるケースが増えています。当然、従来の初回加算や退院・退所加算の評価だけでいいのかどうか、新たな報酬上の評価が必要ではないか──などが議論にのぼりそうです。

たとえば、2026年度の診療報酬改定では、在宅患者のポリファーマシー(多剤服用等による有害事象)対策や残薬対策を念頭に、訪問診療医と薬剤師の同時訪問に対する評価(訪問診療薬剤師同時指導料など)が誕生しました。ここでは、訪問の場で必要に応じて処方の調整等が行なわれることもあります。

仮に処方の調整が行われるとなれば、新たな処方による利用者の生活への影響などをいち早く共有し、場合によってはケアプランの見直しなどにつなげる必要もあるでしょう。

つまり、ケアマネのこうした訪問診療医や薬剤師の訪問への同行に対し、介護報酬上での何らかの評価(同行訪問時の情報連携加算など)が浮上することが考えられます。

今後の介護給付費分科会等の議論では、この「診療報酬との整合性」を1つの視点として改定の行方を見守りたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。