「登録制」住宅型への新たな相談支援。 実現に向けては、やはりさまざまな難題が

「登録制」となる一部住宅型有料ホームに、新たな相談支援類型の導入が図られようとしています。ただし、今もなお賛否が分かれるテーマです。今後、介護給付費分科会で具体化に向けた議論が行われる予定ですが、その際のポイントはどこにあるのでしょうか。

新たな相談支援の概要と登場した背景

まずは、この新たな相談支援類型の概要について改めて整理しておきましょう。

適用対象となるのは、「登録制」が導入される住宅型有料ホーム(以下、住宅型)の入居者です。「登録制」の住宅型は、中重度の要介護者や医療的ケアを要する人を入居対象とするもので、この事前規制によって入居者の安全確保等を担保することが狙いです。

こうした「登録制」では、要介護者の集住による多様な課題が想定されるため、ケアマネジメントと相談支援の双方の強化が求められるというのが介護保険部会の意見です。その対応策として、入居者のケアプラン作成と生活相談を一体的に提供するしくみが提案されました──これが新たな相談支援類型です。

重要なのは、この新たな相談支援類型について、利用者負担を生じさせる案(当初の厚労省案では1割の定率制)も上がっていることです。ただし、介護保険部会の取りまとめでは「ていねいに検討を行なう」としていて、実現されるかどうかは定かではありません。

新相談支援は「囲い込み」対策にも資する?

さて、この新たな相談支援類型の具体化に向けた介護給付費分科会等の議論で、どのような点に注目すべきでしょうか。1つは、この新たな類型により、ホームからの独立性がきちんと担保できるのかという点です。

介護保険部会の取りまとめでは、ケアプラン作成と生活相談の一体的な提供により、新類型を担う事業者が「入居者の生活にかかわるさまざまな情報を入手することが可能になる」としています。それにより、事業者が「ホームと対等な立場でやり取りがしやすくなり、いわゆる『囲い込み』対策にも資する面があると考えられる」としています。

この理屈には、首を傾げる人も多いかもしれません。ケアマネのケアマネジメントにかかる実務は、「ケアプラン作成」だけではありません。プラン作成では、利用者にかかるアセスメント情報を十分に収集し課題分析にかけることが必要です。つまり、「さまざまな情報入手」は、生活相談との一体的な実施にかかわらず、ケアマネによってしっかり行なわれることが前提となっているはずです。

提携関係の事業者利用強要は禁止方針だが…

確かに、生活相談員とのチーム体制などが図れれば、ホーム側の「言いなり」になりにくい空気はいくらか作りやすくなるかもしれません。しかし、ケアマネが本来手がけるべきケアマネジメントのあり方を考えれば、その公正中立性が揺らぎがちな状況を解決しない限り、生活相談との一体的な提供が「囲い込み防止」につながるという理屈は、やはり成り立ちにくいと言わざるを得ません(なお、介護保険部会では、逆に「『囲い込み』を助長する」と指摘する意見も上がっています)。

となれば、介護保険部会の取りまとめにもある「独立性を担保する体制確保のあり方」を確実に進める議論が大前提となるでしょう。

住宅型(登録制に限らず)については、提携関係にある居宅介護支援の利用を強要するなどの禁止措置の案も上がっています。しかし、後に述べるように、新たな相談支援の事業所が限定されれば、「ホームとの提携事業者」を選ばざるを得ないケースも想定されます。

それを防ぐには、「登録制」導入の住宅型に入居した場合でも、(先の「囲い込み」対策を徹底したうえで)従来の居宅介護支援によるケアマネジメントも選択できるしくみにする必要があります。ただし、その場合には「利用者負担をどうするのか」、「選択によって介護報酬差が生じれば、給付の公平性が損なわれないか」なども議論となるでしょう。

課題山積の中では「見送り」となりそうだが

第2は、先の事業者の限定問題にもつながりますが、「誰がその新類型を担うのか」という点です。従来の居宅介護支援事業所内で「別部門(あるいは同一法人内の別事業所)」として運営するのか、それともまったく別法人に運営させるしくみとするのでしょうか。

当然ながら、現時点でのビジョンによる「生活相談との一体的提供」を具体化した場合に、人員を手厚くせざるを得ません。ただでさえケアマネや相談員不足の折、別法人はもちろん、同一法人の別事業所であっても、かなりの報酬を設定しなければ、実施に新規参入する事業所は限られることになるでしょう。

いきおい、ホームと同一法人の運営でも可能とされれば、ケアマネジメントの独立性確保は弱まりかねません。結局、「登録制」適用の住宅型を「特定施設と同じ扱いにする」という流れだけが加速することになりそうです。

こうして見ると、この新類型を2027年度から実施するのはやはり難しく、「見送り」となる公算は高そうです。ただし、「ケアマネジメントへの利用者負担導入ありき」が先に立つと、厚労省としても取り下げにくいかもしれません。とはいえ、「どこかに無理がある」という点から精査しない限り、介護保険制度のゆがみを助長させる種となりかねません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。